村岡の告白2
村岡はまたニヤリと笑った。計画がうまくいって満足したという感じかもしれない。
「後は神海がうまくやった。湖国のことは私がよく知っている。情報センターを船内に作るのに私の知識と経験が必要だとレイク電工が言ってきたので、代わりに神海を派遣してやった。そこで船のコントロールを奪って、そこから水中ドローンに指令を出せるようにした」
「それで神海はずっと船内に潜んでいたわけか」
「最初の計画では私が多景島からリモートで操るつもりだった。だが神海は自分が湖国に乗り込んで操作すること強く望んだ」
「それはなぜ?」
「神海は最初から水中ドローンからの大量殺人を目指してしていた。彼は一般の釣り客も巻き込んでいた。それで話題になれば水中ドローンの価値も上がるし、自分が評価されると思ったのだろう。いや、あいつは快楽殺人の癖を持っていたのかもしれない」
最初は単なる復讐劇のはずが、大量殺人につながったのはこうしたいきさつがあったのか・・・佐川刑事はやっと納得がいった。
「私は神海を止めることはできなかった。いや、それを隠れ蓑にして復讐の殺人を行おうとした。そのターゲットを絞るためにドローンを飛ばして空から湖を監視した。充電のために沖島の研究所跡、竹生島、多景島にドローンの充電ステーションを作った。もちろん湖国にも情報ステーションのためと称して同じものを設置した」
空から監視していたのは神海ではなく、村岡だったのだ。彼がターゲットを選別して多景島に誘導していたのだ。
「私のスマホにはあの青い表示のタブレットと同じ機能、それ以外にも様々なことが行える。タブレットのそれぞれ個別にメッセージを送れるのもそうだ。私はスマホを使って、ターゲットとなる者にゲームの有利なアイテムを与えるとか言って、密かに多景島の近くに呼び出した」
「それで目的を果たしたんだな!」
「まあ、あなた方に邪魔されて逃げられた者もいたがね。大体はうまくいった」
「そして水中ドローンに襲わせた」
「そのために上野を利用した。撃たれても赤にならないタブレットを与えて、サバイバルゲーム勝者には1億円の賞金と倒した相手ごとにボーナス金が出ると言ったら、それに出場すると言った。まあ、上野はサバイバルゲームの敗者が殺されるとは知らなかったがな」
上野は知らず知らずの間に殺人に加担していたのだ。
「上野には多景島近くに待機させて、この島に近づくゲームの参加者を攻撃させた。上野のタブレットは赤にならないから勝負は見えていた。だがそれに不審を覚えたものが2名いた」
「それは?」
「橋本と吉村だ。彼らはゲームの敗退者が殺されているのと上野が撃たれてもゴーグルが赤くならないのをみておかしいと思った。それで失格を覚悟でこの島に逃げてきた。だがそれを私が許すはずはない」
それを聞いていた飯塚刑事が横から口をはさんだ。
「ではあなたが私に話したことは?」
村岡はジープで橋本と吉村の最期のことを話していた。
「ふふふ。大方は私の作った話だ」
村岡は(何をいまさら・・・)という顔をしていた。
「2人の前に私が出た。彼らは私を覚えていなかった。だから正体を明かし、彼らに言ってやった。『これは復讐劇だ。お前たちは逃れることはできない』と。橋本は私に罵詈雑言を浴びせて逃げて行った。吉村はすまなそうにしていたが、私が彼を許すわけはない。『さあ、さっさと湖に出て報いを受けるのだ!』と言うと、彼はおとなしく湖に出て行った」
「それでどうしたんですか!」
飯塚刑事が声を上げて聞いた。
「2人とも近くで待機していた上野が電動ガンで撃って退場にした。それですぐに2人とも水中銃で撃たれて死んだ」
村岡はこともなげに言った。
「上野は殺人に加担していると気づいただろう?」
佐川刑事はそう尋ねた。
「橋本と吉村が2人そろって目の前で撃たれたからな。さすがにトロい上野でもわかったようだ。彼は島に上陸してきて、その様子をじっと見ていた私に文句を言った。『こんなこととは聞いていない。俺は抜けて、警察に何もかも言ってやる!』と。そしてボートで湖に出て行った。だがそんなことをすれば計画は中断する」
村岡の顔は悪魔のように恐ろしい表情になった。
「私は自分のスマホからタブレットの表示を青から赤に変えられる。そんなタブレットを上野にも渡していたのだ。だからすぐにスマホを操作して上野のタブレットの表示を赤にした。それで上野はその辺にいた水中ドローンに水中銃で殺された。」
「じゃあ、神海のタブレットもそうなんだな!」
「そうだ。神海はさんざん好き勝手に人を殺した。彼が死ねば事件は終わったと思うだろう。だからタブレットの表示を赤にしてやった」
(やはり村岡の仕業だったのか・・・)佐川刑事の疑問はすべて解けたように思えた。だがひとつ、この状況で村岡が逃げようとしていることが不可解だった。村岡は逃げきれると思っているのか。ここまでして・・・。
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