情報センター
情報センターは湖国の船体中央部に設置される。現在は改修作業が進められ、数週間後には完成する予定だった。平日はレイク電工のスタッフが湖国に乗りこんで作業しているが、土日はスタッフが休みのため閉鎖されていた。
だが暗闇に包まれるはずの情報センターにほのかに明かりが灯っていた。しかもそこに人影もあった。パソコンを開き、まだ完成していないが、一部稼働しているシステムから情報を移していた。
「うまくいっている」
そう話す人影は確かに神海だった。彼はモニタを見ながら、神経質そうに眼鏡を何度も動かしていた。だが急にその作業が止まった。
「もうすぐクライマックスだな!」
彼はそう呟いた。
◇
佐川刑事と飯塚刑事と宮本副長は情報センターのドアの前に来た。この奥に犯人がいるはずである。佐川刑事は左わきのホルスターから拳銃を抜いた。そして目で飯塚刑事に合図してから、ドアノブを回した。
だがロックがかかっていて開かない。それを見て宮本副長はIDカードをドアの横のセンサーにかざした。だがそれでもロックは解除できなかった。
「だめだ。このドアのロックも犯人に制御されている。開ける方法はない」
宮本副長は首を横に振った。
「少し離れてください」
佐川刑事はそう言うと拳銃をドアに向けた。そして「バーン!」と発砲するとドアが破壊されて開いた。佐川刑事と飯塚刑事はすぐに中に飛び込んで拳銃を構えた。
「動くな!」
だが中には誰もいなかった。がらんとした薄暗い情報センターにはモニタと制御パネルの光がほのかに灯っているだけだった。ただ1脚の回転イスの位置が、今まで人が座っていたかのように乱れていた。そしてその前には開いたままのノートパソコンが置かれていた。佐川刑事や飯塚刑事が周囲を見渡しても誰も隠れておらず、人の気配もない。
宮本副長が制御パネルやモニタのそばに寄って確認した。
「やはりここで船をコントロールしていたようです。コントロールをブリッジに戻します」
宮本副長は端末を操作して作業を始めた。次々に船の機能が回復していく。機関も動き出した。
「湖国はもう大丈夫でしょう。通常の業務に戻れます」
宮本副長はほっとしてそう言った。その横で真森は船内の監視装置のパネルを操作していた。彼女の前の小さなモニタが点灯して船の各所が映し出された。彼女はそれを次々に見ていった。そこに荒木警部と岡本刑事、藤木刑事が情報センターに飛び込んできた。
「佐川! 犯人は!」
「一足違いに逃げられました。ここに踏み込んでくることに気付いたようです」
佐川がそう答えると、船内の監視モニタを見ていた飯塚刑事が声を上げた。
「艇庫です。ジープで逃げようとしています。後部ドアは開いたままです」
「すぐに閉めるんだ!」
「だめです。ロックされています! すぐには無理です!」
「艇庫に連絡をとれ!」
「だめです。そこに誰もいません!」
真森はまだ何度も制御パネルの操作を繰り返した。だが変わらなかった。モニタには神海がモーターボートに乗り込もうとする姿が映し出されていた。
「行くぞ! 艇庫に!」
荒木警部がそう声をかけて走った。その後を佐川たちが続いた。
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