残された違和感
残された謎
情報センターでは真森が神海のノートパソコンを調べていた。そこに荒木警部と藤木刑事が戻ってきた。
「どうだ? もう大丈夫なのか?」
「はい。水中ドローンのアプリは停止しました。ブリッジから各方面に連絡をしてもらいましたが、水中ドローンの活動は報告されていません」
飯塚刑事はノートパソコンの画面を見せた。水中ドローンのアプリの操作画面はまるでエアコンでも動かすかのように簡易なものだった。
「神海がここから操っていたのか。盲点を突かれたな。ここなら湖国のアンテナから電波を飛ばせるし、場所を特定されることもない。それに湖国の活動を封じられる」
「はい。でも気になることが・・・」
飯塚刑事は言葉を濁らせた。気になる点があるようだった。
「どうした?」
「水中ドローンは操っていたようですが、空を飛んでいたドローンを操っていた形跡がないのです。それに外部の何者かと通信していた形跡があります。時間が来るとその内容が消えてしまうアプリのために再現するのは難しいのですが・・・」
荒木警部も神海のノートパソコンを調べてみた。それは水中ドローンの捜査に特化したもののようだった。
「確かにそうだ。すると共犯がいる。いや、そっちの方が主犯かもしれない! 神海に指示を送っていたんだ!」
荒木警部は(すると誰が犯人なのか?)と頭を巡らせた。するとノートパソコンが急に動き出した。
「どうしたんだ?」
飯塚刑事がすぐにノートパソコンを操作してみた。だが反応しない。勝手に動いている。何者かにリモートで操作されているようだ。
「リモートで外部から操作されています。反応しません」
「なに! 水中ドローンは?」
「アプリが起動。また活動し始めていると思います」
水中ドローンが停止したとことはそれぞれの部署に連絡したところだった。それぞれが気を緩めているだろう。そこを水中ドローンに襲われてしまったら・・・。
「止める方法はないのか? このパソコンを破壊してもダメか?」
「はい。水中ドローンに命令はすでに送られています。パソコンを破壊してもそのまま実行するだけです。むしろ止める手立てがなくなります」
飯塚刑事は必死にアプリを止めようとしていた。外部からの電波でパソコンを操っていると思われるのだが、それも遮断できない。何か特殊な方法で送っているのかもしれない。荒木警部は船内電話を手に取ってブリッジを呼び出した。
「荒木だ。水中ドローンがまた動き出すようだ。各部署に連絡をしてくれ! 大至急だ!」
間に合えばいいが・・・荒木警部は時計を見た。もうすぐ20時になる。そうなれば青い表示のタブレットを持っていようがすべて赤にされて、水中ドローンの無差別攻撃が始まる。
(そうなれば第53ひえい丸が真っ先に狙われるだろう。ライフル銃で武装した警官を配置しているが、それだけでは多数の水中ドローンの攻撃を防ぎきれない。もしその船が沈めば核物質で琵琶湖が汚染され、その下流域1450万人に深刻な水不足が起きる)
荒木警部は苛立った気持ちを押さえられずに指で机を叩いていた。
◇
佐川刑事は捜査課に戻ってきた。その手には神海が持っていたタブレットがある。捜査課では梅原刑事が上野の持っていたタブレットを調べていた。
「何かわかったか?」
「ええ。大体は他のサバイバルゲームの参加者と同じです。しかし大事なところが変えられています」
「大事なところ?」
「ええ。この赤や青の表示を変えられるのです」
「それでは撃たれて赤になっても青にできるわけか?」
「そうです。いくら撃たれても青の表示に復帰できるのです」
上野は無敵のままサバイバルゲームに参加していた。彼はいくら撃たれても失格になることはなかったのだ。
「それではどうして上野のタブレットの表示は赤くなり、水中ドローンに襲われたんだ?」
「逆もできるのです。外部からの信号にも対応しています」
「それでは何者かにタブレットの信号を変えられたわけか・・・」
それは誰か・・・佐川刑事にはそれはわかっていた。
「このタブレットも見てくれ。これも同じか?」
佐川刑事は神海の持っていたタブレットを渡した。梅原刑事はそれを調べてから佐川刑事に言った。
「同じです。これも表示を変えられます」
(やはりそうか・・・)佐川は確信した。こんなことができるのはただ一人・・・。
「真森からもデータが送られてきているはずだ。それも調べてくれ!」
佐川刑事はそう言って捜査課の部屋を飛び出して行った。
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