第8話

 同時に魔物へと駆け出した僕たち。僕は全能力向上のポーションを飲み、魔物の中へと突っ込む。


「【魔道具能力強制解放オーバーブースト】」


 錬金術のスキルを使い、魔物たちの中を駆け回り、爆弾型魔道具をばら撒いていく。魔道具はいつもの二倍以上の威力で大爆発を引き起こす!


『グルアアアアア!!!!』


 だが、相手は中層から下層の魔物。爆発に耐性があるような魔物は、僕の攻撃に耐えて、前に突っ込んでくる。


 突っ込んできたのはサラマンダーとロックリザードみたいな防御力が高い魔物。サラマンダーは背中の炎を吹き出し、ロックリザードは鋭い爪と牙で、それぞれ僕に向かって攻撃をしかけてくる。


「頼んだよ相棒」


「みえとるで!」


 風を切り裂く音。


 僕の顔横をすり抜けていった二本の矢がサラマンダーとロックリザードを穿つ。


 防御力の高い魔物はジンの弓矢に任せて、僕はとにかく爆弾で魔物の数自体を減らしていく。


『カラ……タタタタタタタカラララララ!!!』

『キシャアアアアア!!!』


「カラララうるせえ骨野郎!!」


 スパルトイの剣戟を躱しつつ、回避動作とともに足元に地雷型魔道具を仕掛ける。追撃しようとしたスパルトイはそれを踏み抜いて、次の瞬間、地面から湧き上がった炎で消し炭となった。


 スパルトイの背中から迫ってきていたバジリスクは弓矢で貫かれて絶命する。


「いい感じにのってきたとちゃうか!?」


「キャハハハ!!! いいよ久しぶりに楽しくなってきた!!」


 短剣型の魔道具を引き抜き、炎の斬撃で魔物たちを斬りつけて消し炭にする。


『ガギャオオオオオ!!!』


業務提携パートナー!! 炎のブレスくるで!!」


「わかっ……た!!」


 ポーチから魔道具を取り出す。真っ黒な布型の魔道具。それを僕の前に投げると、巨大化して壁になる。


 炎のブレスは防ぐけど、これは使い捨て。一度使ったら、効力を失ってただの布に戻ってしまう。


「キマイラが動き出したな。どないする?」


「変わらずいくよ。僕が前衛で戦うから、後ろで援護よろしく」


「おう、任せろ」


 靴型魔道具を起動。加速しながらキマイラに接敵する。


「【炎刀解放】!!」


 短剣型の魔道具。これは高威力の炎を放出する魔道具だ。だが、これにはまだまだ機能がある。


 炎刀解放は炎を放出せず、刃の形にして維持する。炎を高密度に収束させることで、放出するよりも高い威力を発揮する!


 下層を消し炭にする炎。それを収束させても、キマイラの爪や牙と打ち合うのがやっとだ。


「ハハ……義姉さんはこれを倒すのか!」


 深層で活動する義姉さんはこれと戦う。僕がようやく拮抗するラインの魔物相手に、義姉さんは当たり前のように倒すだろう。


 錬金術師としてもっともっと凄い魔道具を作って、いつかはこいつらを当たり前のように倒せるようになりたい……!


『キルシャアアアアア!!!』


 キマイラの尻尾の蛇。それが威嚇しながら僕に噛みつこうとする。それを数本の矢が阻む。


「邪魔させるか!!」


「いい子だジン……! ただ僕だけをみていろ!!」


「YES、業務提携パートナー!」


 ジンの援護に合わせつつ、キマイラの爪と牙を弾いて隙を窺う。ただ相手は深層の大型。中々隙が見えてこない……!


 僕の中で浮かび上がる無数の選択肢。

 一度退がって魔道具を使う?

 それとも魔法?

 ……もしくは切り札を使うか? 


「退っっっっけえええええええ!!!!」


 直感、背中から来る闘志!


 この熱を取り逃がすな白宝シキ!! 僕は切り上げるようにキマイラの爪を弾いて、キマイラの巨体を浮かび上がらせる。


 それと同時、僕は横に跳びながら、彼女を見る。燃えるような紅蓮の髪をなびかせて、朝比奈リンは大剣を構えて疾走する!


「【グランド……バスタアアアアア】!!!」


 剣先を地面で走らせて、朝比奈リンは大剣による切り上げを繰り出す。


『グギャ!?』


 キマイラが呻き声をあげる。見えた数秒の隙。僕は走りながらジンへとアイコンタクトを送る。


 感じろ……!! この刹那に!


 僕を感じていろ、相棒!!



「感じているで【影縛りの矢】!」


 キマイラの影に突き刺さる弓矢。少しの間、キマイラは拘束される。


 僕は短剣型の魔道具、その名を解き放つ。この魔道具は他のと違って、名前を呼ぶことで真の力を解き放つ。


 その名を——


「【気高きその名は熾天の焔ウリエル】!!」


 短剣は形なき炎へと姿を変えて、キマイラの全身を包む。


『ゴアアアアア!!!?』


 これはただの炎じゃない。何もかもを焼き尽くす神の炎だ!! 例え深層の魔物であろうとも、抗うことすら許さない!


 キマイラは呻き声を上げて、ふらふらと一歩二歩と歩いた後、炎の中で息絶える。キマイラの全身を灰にした後、炎は一本の短剣に戻る。


「……たお、せた?」


「ああ。よくやったな業務提携パートナー、っと大丈夫か?」


 僕がふらついたところをジンがささえてくれる。


 あの状態は僕の体力を大量に使う。義姉さんからは三日に一回しか使ってはいけないと釘を刺されている正真正銘の大技だ。


「しかし、まさかあの冗談が現実になるとはなあ。業務提携パートナー、これから大変やで」


「……ふぇ? なにが?」


 疲れているせいなのか頭がうまくまわらない。


 ジンのことばの意味がわからないまま、ぼくはキョトンとする。ジンはそんなぼくを見て、いつもの笑い顔を見せていた。

 

————


最後まで読んでいただきありがとうございます!

次回は朝比奈リンちゃんサイドのお話になります!!

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