追放された超級錬金術師、義姉に誘われてダンジョン配信を始める〜ポーション作っただけでバズった……え? これエリクサー? そんなまさか〜
路紬
第1話
『探索者:白宝シキ。4月2日をもって、探索者ギルド【相互探索者互助会】を除名されました』
「…………は?」
僕の名前は
そんな僕は学校帰り、通学路でそのメッセージを見て立ち尽くす。
「ちょいちょいちょいちょい!! どういうこと!? え!?」
僕は慌ててギルドマスターに電話をかける。数コール後、ギルドマスターが電話に出た。
「あの……僕、ギルドを除名されていたのですがこれって」
『ああ、わいがやった。お前は今日で追放や追放! おつかれさん!』
追放……ギルドの除名が嘘ではないことを知って、僕はその理由を聞き出そうとする。
「な……どうしてですか!? 僕、何か悪いことでも……」
『ああ!? お前、んなこともわかっとらんのか。ほんまにダメなやつやなあ!! 追放して正解やったわ!』
怒鳴られた。
いやマジに心当たりがないから怒鳴り声に震えるしかない。けど、せめてなんで追放されたのか聞き出さないと……。
「本当に心当たりがないんです! せめて理由だけでも教えてください!!」
『……チッ。しゃーないな! お前はもう用済みなんや!
「…………え? それって、ぜんぶ」
それは全部僕が作り上げたものだ。相互探索者互助会。それを大きくするために、僕が作った魔道具だ。
『そうや! お前さんの錬金術で作った施設や! こんなん個人じゃ管理しきれんやろ? だからわいらが特別に引き取ってやろうと思ってな! ついでに共用倉庫にあるもん含めてな!! ギャハハハ!!!』
「な……!? いやそもそもあれは定期メンテナンスが必要です! それにあれは僕にしかメンテできないもので」
『はあ? そんな苦し紛れの嘘なんか聞きとうないわ!! お前さんは用済み、もう必要ないんや!! じゃあな!!』
通話を一方的に切られた。次の瞬間には交換していたSNSのアカウントもブロックされて、連絡手段は完全に断たれてしまう。
「はあ……マジか、僕、これからどうしよう……」
ダンジョン探索者には様々なジョブがある。
僕のメインジョブは【錬金術師】、サブジョブは【魔法使い】だ。
探索もある程度ソロで行えるけど、本職は錬金術を使った魔道具や魔法薬の作製。
僕はそのために設備が整った探索者ギルド【相互探索者互助会】に所属していた。
ギルドには貢献してきたつもりだ。誰にでも良質な魔法薬が作れる魔道具の作成から入り、素材を入れるだけで自動で作れるようにもした。
それ以外にも冒険中、自動で素材を回収してくれる無人機、魔道具作成のためのマニュアルなど、より多くの人がより良い魔道具を作るために色んな物を作ったのに……。
「全部利用されていただけ……。バカだな僕」
そんなことを呟くとだ。
スマホが震え出していた。SNSに着信があったみたい。僕はスマホの画面を見て驚く。
「
僕はその電話に出る。すると一言目が。
『先ずことわっておくが、私は四六時中お前のプロフを見ているわけではない。
ただ、偶々超偶然、久しぶりにプロフを見たらギルド無所属になっていたから、何があったか聞き出すために電話をかけた。勘違いするなよ』
「……え?」
超絶早口で繰り出される言葉の数々。
義姉が口にしたプロフというのは、ダンジョン探索者のプロフィールのことを指す。
ゲームとかのアカウントと同じで、どんなダンジョンに潜ったのか、今所属しているギルドはどこなのか、最後にダンジョンに潜ったのはいつなのか、などをフレンド同士なら確認し合える。
そうか、今僕のプロフを見たら、所属ギルドが無所属に変わっているから、それで電話をかけてきてくれたのか……。
『それで何があった? 話だけは聞いてやる』
綺麗な声なのに、割と強めでクールに話すからより声が綺麗に聞こえる。
「うん……実は——」
僕は気がついた時にはさっき起きたことを話していた。ギルドを追放されてソロになったこと。ギルドを追放された理由も含めて。
『よし、先ずは、そいつを100%ぶち殺す。場所を教えろ愚弟。私が二度とダンジョンの土を踏めないようにしてきてやる』
「やめてね!? 探索者同士の私闘は御法度ってわかるってるよね!?」
『…………知らんな。私は今忘れたそんなルール』
電話越しでも分かるくらい、義姉さんがブチ切れているのが分かった。
義姉さんが言うとマジにやりそうだから怖い。ついでに言うとこの人は今言ったことを実行するだけの実力がある。
「とにかくダメだよ! 僕は平気だから……。しばらくはソロで活動して、除名のペナルティ期間が終わったらギルドを探すつもり……だから」
ギルドを除名されたり、自分から脱退するとペナルティが課されて、一定期間はギルドに入ることができない。
それが終わるまではソロで活動していこうと思う。錬金術も設備としては劣るけど、共用の施設を使えば何とかなる。
『……そうだ。なあ、動画配信をやってみるつもりはないか?』
「……動画配信? 今話題のDチューブ?」
今、ダンジョン内での探索を配信サイトで配信するのが流行っている。一定のチャンネル登録者数を超えたら収益ももらえるらしく、今かなり熱いコンテンツだと聞く。
まあでも、僕はそれをあまり知らない。錬金術と学校にかかりきりで、あまり動画配信サイトを見ないのだ。
『そうだ。最近、Dチューブでダンジョン探索者が増えてな。講座系の動画や配信がかなり盛り上がっているんだ。ただ、殆ど戦闘と探索系の動画しかなくてな、生産系の動画が少ないんだ』
「義姉さんが言いたいことは大体察したよ。
そこで僕の錬金術を講座形式にして動画にしてみないか? ということ?」
『物分かりが良くて助かる。どうだ? やってみないか?』
僕は考え込む。
悪くない提案だとは思う。ただ、錬金術は見た目が地味だ。それに作業しながら話すのはかなり苦手だ。そこら辺は大丈夫だろうか……?
「僕がやるとほぼ無言配信になるというか……錬金術しながら話すのなんて難しいというか……」
『やってみるだけやってみないか? 動画がバズればシキの魔法薬や魔道具を欲しがる固定客も生まれる可能性もあるし、何よりも収益で素材費などをカバーできる。シキにとって悪くない話だと思うんだが』
「確かに……。いいよ、やってみる。
ただ、どこで撮影するの?」
問題は撮影場所だ。
ダンジョン配信者はカメラさえあればダンジョン内で手軽に配信できる。
ただ錬金術の配信となると、それなりに整った設備が必要だ。簡易的な物ならキット一つで十分だけど……。
『私達のギルドハウスを使おう。そうだな……ダンジョンゲートで転移できるようにしておこう。今日から早速撮影できるか?』
「まあ暇だから大丈夫だよ。ただ今手持ちの素材とかなくて……」
『それも何とかする。私が誘ったわけだしな。では準備の時間もあるだろうから、一時間後、ダンジョンゲートに来てくれ』
「分かった。すぐに準備して向かうよ」
僕は一旦電話をきり、急いで家に帰るのであった。
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