第23話

「び……美少年錬金術……キヒャヒャヒャ!!! 世界一似合わないセリフいっとんなあお前さん!!」


「白宝くんこれいいと思うよ! 私はこういう路線好きだなあ……」


「笑いすぎジン……。後なんであ、あああ朝比奈さんがここに……!?」


 昼休み。僕は屋上でジンと、なぜか当たり前のように混ざっている朝比奈リンと昼食をとっていた。


 な、なんで学園……どころか探索者界隈でもアイドル的立ち位置の人がこんな陰キャコミュ障の僕のところに!?


「鷹野くんが誘ってくれたの! 白宝くんと仲良くするためにはどうすればいいかなって相談したら……迷惑だったかな?」


 じ……ジン!?!?!?


 お前はなんということを!! というか僕の驚愕とかそういうのを全部察して笑顔でサムズアップしてるんじゃないよ!? 


 ……でもまあ、迷惑かな? って首を傾げながら言われるのはちょっとドキッとした。僕の方が身長高ければ上目遣いとかしてくれたのかな……みたいな気持ちが湧いてくるくらいには。


「だだだだだ大丈夫です! む、むしろ、僕と一緒にいてめめめ、迷惑じゃありませんか?」


「大丈夫だよ。一応スキル使って、みんなに気付かれないように来たつもりだから。それに、同じダンジョン配信者として交流を深めたいな〜〜って思ってたから」


「そんなところや。わしらなんだかんだ、全員ダンジョン配信者という共通点あるからのぅ」


 確かに言われてみれば僕らの共通点はみんなダンジョン配信者ということだ。


 ジンは動画編集が手間だからという理由でよく配信をやっている。かなり講義的な内容の配信で、駆け出し探索者向けとして切り抜かれることも多い。


 ダンジョンで注意すべき魔物や罠、もしもの時の対策方法など、かなり実践的な内容だ。


「そうそう! 個人勢の人ってみんなどんな風にしてるのかなって興味があって……。個人勢で登録者十三万人、二十万人はかなり上澄みだから」


「ん……? ジンそんなに伸びたの? チャンネル登録者数」


 確かジンと前話した時はチャンネル登録者数十二万人とか言ってなかったっけ? 数日で八万人も伸びたんだ……ってすごい感心した。


「本当に鷹野くんのいう通り、白宝くんって無自覚なんだね……。色々とびっくりしたよ」


「やろ? お前さん、多分思っとるの逆やで」


 二人がなんだか、ああ、僕ってこんな風なんだねみたいなオーラ出してるの納得いかないけど……。ん? 逆? 


 逆っていうのはつまり……。


「僕が二十万で、ジンが十三万っていうこと?」


 僕の言葉に二人揃って頭をぶんぶんと縦に振る。


 いやいやそんなまさか。前確認した時は十万そこらでそんな一日二日で二倍になるなんて……ってマジだこれ!?


 スマホで自分のチャンネル確認したら本当に登録者数二十万人超えてる!? 何があったの!?


「新挨拶とグッズ販売の告知がバズってるみたいだよ。新挨拶切り抜かれてるもん。シキさんのイキり語録集みたいな感じで。ほら」


 朝比奈リンさんが僕にスマホの画面を見せてくれる……。って、ウッ、ウワアアアアアッッッ!!! ここここここれってキマイラ戦の僕じゃん!? どうして!? 配信してなかったよね!? 僕!!


「穴に埋まりたい……。そうだ今度深層で埋まる用の穴を掘ってこよう……」


「私の切り抜きが素材元になってたりするから少し……その……なんかごめんなさい」


「リンちゃんが謝ることないやろ! それにわしは好きやでイキりシキさん語録」


 やめてくれえ〜〜!!


 恥ずかしさで穴に埋まりたくなるよぉ〜〜!!


「でも私は好きだよ。こっちの白宝くんと、今の白宝くん両方とも! 私たち企業勢って炎上とか気をつけないといけないから、性格の切り替えとか、そういうので悩んだりするけど、白宝くんはその素のまま楽しんでいるんだなって思えるから」


「ほ、本当に?」


「ホントホント! 素のまま配信とかやれる人って稀だから。それに今度一緒に探索してみたいなって」


 そう言ってくれると、まあ立ち直れる。それにそうか……企業勢って表面だけ見るとキラキラしてていいなとか思うけど、それはそれでたくさん悩みがあるんだ。


「今度一緒に探索……ええんとちゃうか? コラボ配信でもするか?」


「え……!? いやそれはちょっと……! やっぱりほら、チャンネル登録者数全然違うしさ。個人勢と企業勢って繋がりなさそうで、朝比奈さんの迷惑になりかねないし……」


「いつかやりたいけどねコラボ配信。でも一度助けてもらったからという理由でコラボするのは少し弱いかな。マネさんが許してくれるか分からないし。

 どこかで繋がりがあるといいんだけど……」


 僕と朝比奈リンさんを繋ぐような人。真っ先にヒナが思い浮かぶ。でもヒナはヒナでめちゃめちゃ忙しいし、最近調べたら、所属事務所でも稼ぎ頭みたいなところあるから……気軽に声をかけられない。


「でも白宝くんの商品レビューとかやってみたいから、限定セットは全力で狙いに行くつもりだよ。そこからコラボとかなら自然かな〜〜って思うし」


「えっ……!? あ、いや、ほ、ほんと……!? いやでもあれくらいなら頼んでくれたらいつでも作れるけど……」


「気持ちはありがたいけど、こういうのは正規のルートで手に入れてこそ意味があるものなんだよ!」


「ちなみに何やが、業務提携パートナーのポーション使い始めるともう元には戻れへんで。わしが自信持っておすすめするから、是非頑張って買うてな〜〜」


 おおちゃんと営業入れるあたりさすがジンだ。


 しかしチャンネル登録者数二十万人……。これは限定セットの再販とか考えた方がいいのか?


 いやでもするなら大量生産用に設備整えてからにしたい気持ちも……。


「期待して待ってるね白宝くん! あ、そうそう。今度ライブやるから良かったら見に来てね! 無償ライブだから!」


 って言いながら朝比奈リンさんはとあるサイトを見せてくれる。リンヒナコラボライブ……ってヒナ!?


 それもダンジョンの表層でやるの!?


「こ、コラボライブなんだね……。それもダンジョンでやるんだ」


「うん。事務所の試みでね。星宮ヒナちゃんっていう子とコラボライブするんだ。めちゃめちゃ可愛いから良かったら観にきてね」


 あ、ヒナ、事務所だと旧姓で通しているんだ。


 しかしダンジョンの中で配信か……。表層なら魔物も少ないし、広いしで安全面は確かにあるだろう。昔からしたら考えられないだろうけど。


「うん、観に行くよ。……とそろそろ昼休み終わるね。教室に戻らないと」


「あ! そうだね。じゃあ私は先に戻るね! 今日はありがとう! 楽しかったよ!」


 朝比奈リンさんはそう言って、教室へと戻っていく。同時にいるところを見られて変な勘違いをされたくないから、僕らはもう少し遅れてから向かうとしよう。


「そういや知っとるか? 業務提携パートナーの古巣。暴露系に暴露されとるの」


 おもむろにジンが話を切り出す。どうやらヒナの動きが広まりつつあるみたいだ。



————

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