第21話
「全員傾聴! 講義を担当する美少年錬金術師のシキだ! なおれ!! 今日は魔法の植木鉢の製作講座を行なう!」
探索から次の日。僕は義姉さんと共に動画の撮影を行なっていた。
今日作るのは魔法の植木鉢。錬金術師はとにかく素材不足に悩まされる。魔法薬ならハーブなどの植物系素材は必須だ。
「この植木鉢は作るのは簡単で、これと種さえあれば植物系の素材はある程度自分で賄うことができます」
口調を挨拶時の強めのものから、解説時の冷静な物に切り替えつつ、僕は解説を始める。
植物系の素材は種や苗から育てることもできる。しかし、成長速度は現実世界のハーブや野菜などと同じでかなり時間がかかってしまう。
それを改善するのが魔法の植木鉢。最初は指定の植物専用に作らないといけないけど、それでも成長する速度をすごく早めてくれる。
「必要なものは魔力粘土。これは品質が高いものほど性能が高くなります。高いものではありませんので、作るのであればいいものを揃えることをおすすめします。
これに水を加えて、こねながら植木鉢状に成形していきます」
植木鉢を作るといっても魔法薬ほど複雑ではない。錬金術の魔道具製作スキルさえ取得していれば、魔力粘土をこねて形を作って、それを焼くだけで作れる。
「あとは錬金釜で焼いてください。錬金釜の性能にもよりますが、長ければ半日、短ければ一、二時間程度で焼けます。
それで焼き上がったものがこちらになります」
といって僕はできあがった魔法の植木鉢を取り出す。一度やってみたかったんだよね。何分クッキングとかでよくある焼き上がったのはこちらですみたいなの!
「では早速種を植えてみましょう。土や種は植物用であればなんでも。品質にこだわるなら魔力土など用意しましょう」
まあ僕は普通の土を使うけど。
普通の土を植木鉢に入れて、種を植える。そして水を少し垂らす。すると、みるみるまに種は急成長を始めて、数秒と経たずに立派なグリーンハーブになった。
「以上、魔法の植木鉢の解説動画でした。チャンネル登録高評価よろしくお願いします!」
こうして解説動画の撮影が終わる。カメラが止まったことを確認した僕はふぅと息を吐いた。
「お疲れ様だシキ。これで昨日撮影した、グッズ紹介用のエンドロールを編集で挿入すれば、今日の動画からグッズの宣伝告知が流れるようになるぞ」
「本当にありがとう義姉さん。これがどれくらい視聴者ウケが良さそうかな……?」
昨日探索から戻ってから、ポーションと味変パウダーのセット販売を告知する短い動画を撮影していた。
とりあえずは僕のお手製万能ポーションを一つと味変パウダー数種類をセットで販売する予定だ。価格は五千円。僕はもう少し安くてもいいんじゃと思ったけど、ジンに最低でもこの値段! って言われたのでこの値段にした。
「まあそれは今日からの楽しみだ。ヒナがSNSを動かしてくれるから、視聴者の反応は随時追っていく。シキは取り敢えず、百セット分作ることに集中してくれ」
「了解。頑張るよ義姉さん」
僕は動画とグッズの製作担当。義姉さんが動画の編集、SNSの担当。ヒナも義姉さんと同じくSNS担当。ジンは販売するのに適したサイトなどを探してくれている。
正直僕の負担が一番軽い。配信ってなると苦手意識からか上手く話せないけど、動画ならだいぶ話せるようになったし、グッズの製作も簡単だ。
だからこそ、販売するポーションには気を抜けない。一つ一つ最高品質で作ることに全力を注ぐ。長らくポーションの製作は自動化していたけれど、今回ばかりは全部手作りだ。
素材の厳選も済んでいる。これは自室に籠る時間がいつもより増えるだろう。久しぶりの大がかりな錬金術作業に心が躍っている。
「ああ、後週末だが、ギルドの方で予定が入った。私としてはシキとの予定を優先させたかったが……抜けられそうな雰囲気ではなさそうでな。土日は丸々開けることになる」
「了解。どこかに探索でもいくの?」
「…………予定ではそのつもりだ」
義姉さん、なんでわざわざ答えるのがいつもよりも数テンポ遅かったんだ?
まあでも義姉さんのギルド活動に関しては口を出さないようにしている。というか白宝家は死ななければ取り敢えずオッケーという方針だ。
「そういや昨日今日の話だけど、あの動画結局どうしたんだろ……ヒナ」
「ん? ああ。あれか。もう既に何人かのDチューバーやインフルエンサーに匿名で情報流してたぞ。足がつかないようにネカフェ経由でな」
「行動はっや!? これがSNS戦国時代を生き抜く現代っ子のフットワークなのか……」
「まあ私たちもその現代っ子なんだけどな」
正味SNSとかは義姉さんやヒナほど使いこなせていない。僕は個人の趣味としての範囲でSNSを使っている程度だ。
つぶやくことがないっていってあんまり投稿もしないから、大体見る専だし……。
「大丈夫かなあ……ヒナが報復とか炎上に巻き込まれたりしないかなあ……?」
「心配性だな。でもまあそんなシキが可愛らしくて私は好きだけどな! それにそんなに心配する必要はない。ヒナとてインフルエンサーの一人。どう立ち回るべきかは私たち以上に熟知しているはずだ」
確かに……。まあヒナも義姉さんもとんでもなく頭がいい。変なリスクを負うようなことはしないだろう。
「まあ、それじゃあ僕は帰って色々とグッズ製作の準備を整えるよ」
「そうだな。取り敢えず今日はこれで解散としよう。また何かあれば連絡する」
「うん、よろしく」
僕はそういってダンジョンゲートを経由して家に戻る。さて、百セット作るのはいいけど……作業スペースとか保管場所どうしようか……。まずそれ用の魔道具を作るところから始めた方がいいのかな……?
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