第25話

『うわお〜〜!! お兄ちゃんのチャンネル用ドゥイッターアカウントもうフォロワー五万人超えてるよ! すごいね!!』


「もうそんなにフォロワー増えたんだ……。グッズとかはどうなの?」


『グッズ販売にもいい感じに反応あるよ! これ発売日はサーバー落ちるんじゃないかな……大丈夫かな……?』


「そんなに……?」


 動画撮影を終えて、帰宅した僕はヒナと通話していた。ヒナも今日は配信を早めに切り上げたみたいで、ちょうど時間が合ったのだ。


 どうやらヒナが言うには、ヒナが動かしてくれているドゥイッターのアカウント。グッズ販売の投稿がかなりバズったらしく、凄い数の購入希望者が現れたみたいだ。


 限定百セットだけど、その百倍以上の倍率になりそうな勢いらしい。発売日当日は文字通り購入をめぐる戦争になりそうだ。


『まあまあ私もだんちょーも何回かグッズ販売でサーバー落ちてるから安心して! むしろ誇っていいことだよ!!』


「凄い複雑な気持ちだ……」


 あくまでこの勢いでこれが伸び続けたらの話だ。流石にそんなことにはならないだろうと思っておこう。


『それと……お兄ちゃんにはまだ言ってなかったけど、今週の土曜日に公開ライブやるから観にきてね!』


「その公開ライブってあれだよね? ダンジョンの表層でやるっていうやつ」


『あ、もう知ってたんだ。そうだよ! ダンジョンの表層に特設ステージ作ってやるんだよ! リンヒナ公開ライブ! だんちょーと一緒にね!』


 特設ステージ作るんだ……ダンジョンの中で……。


 でもまあダンジョン内ならスキルもフルで使えるから、特設ステージ作るのもそこまで苦労しなさそう。


 安全面とか魔物の襲撃とは色々と織り込み済みでやる予定なのだろう。朝比奈リンさんの実力は分からないけど、ヒナを倒せるような人なんて数えた方が早いから、まあ問題はないと思いたい。


「うん、楽しみにして待ってるよ。あ、そろそろ魔道具出来そうだから切るね」


『りょーかい! じゃあ土曜日来てね! 友達とか連れてきてもいいから!! じゃーねー!!』


 と言って、ヒナは通話を切る。


 通話を切って少しすると目の前に置いてある家庭用コンテナに埋め込まれた宝石が光る。


 できあがった商品を保管して、運搬する用の簡易時空コンテナ。それが完成した。


 時空コンテナの中では物は腐敗せず、またほぼ無限に物を入れることができる。その分、製作のために使う素材も、必要とされるスキルも、かなり難しいものを要求されるけどね。


 とにかくこれで商品の保管についての問題は無くなった。ということで本格的に僕は作業を始める。少しでも早く、多くの人の手に商品が行き渡ることを期待しながら、僕は錬金術を続けるのであった。



***



「錬金術漬けでいつのまにか週末に……」


「おうお疲れや。コーラ飲むか?」


「もらう」


 平日はやることが多くてあっという間に過ぎていき、気がつけば公開ライブの日がやってきた。ライブを行なうダンジョンは僕らがいつも探索しているところ。以前僕、ヒナ、義姉さんの三人で深層まで探索したところだ。


 ライブ会場はダンジョンの中とは思えないほど活気に満ちていた。出店まであったのは少し驚いたけれど。


「しっかし、ダンジョン内でライブとはプラネットライブも思い切ったことするよな」


「ダンジョン探索者を増やす目的とかあるのかな? 日本は探索者多そうに見えて、あまり……みたいなところあるし」


 日本でダンジョン配信が流行ってる理由はいくつかあるけど、そのうちの一つに新規探索者を増やすというのがある。


 日本は探索者人口はそこまで多くない。海外だと国民の半数以上が探索者をやっているところも珍しくないくらいだ。


 探索者の人口が少ない=探索のノウハウなども発展しにくいということで、日本の探索者の平均レベルは海外に比べるとかなり劣っているらしい。


 らしいなのは単に僕の周りが化け物揃いすぎて実感がないから。でもまあ全体で見たらそうなるのかな? と言った印象だ。


「そこで配信に舵切るのは日本らしいけどな。でもまあそのおかげでワシらはいい思いさせてもろうとるからな」


「エンタメはいつの世も強いっていうことだよ。……ん? ステージにいる人、どこかで見覚えがあるような……」


「あれって、村正グループのご令嬢さんじゃなかったか?」


 僕らは特設ステージの上でスタッフと思わしき人と話す少女を見つける。見た目の年齢的には僕らと同じくらい。身長は……やめよう。ちょっと勝てるか自信ない。


 青色のお団子ヘアーが特徴的で、凛とした佇まい、同年代だというのにビジネススーツがすごく似合っている。


 村正グループのご令嬢ということは……彼女は確か……。


「村正カエデさん……だっけ? テレビとか雑誌によく出ているよね」


「あーそうやそうや! そんな名前やったわ! ワシらと同い年でほとんど社長みたいなことやっとるんやろ!!」


 社長……社長!? 社長兼高校生っていうこと!?


 未成年は社長になれるかどうか分からないけど……多分実質社長的な働きをしているということだろう。


 遠目で見ていてもテキパキとスタッフに指示を出して仕事をこなしている姿が見える。確かに仕事ができそうなオーラを纏っているような……。


「あれでいて、かなりの実力派探索者らしいであの子。下層か、深層くらいまではいけるらしいで」


「まじ!? どんだけスペックすごいの!?」


 社長兼高校生兼探索者!?


 それも下層、深層まで潜れる探索者……。色んなことをこなせる天才って本当にいるんだ。


 そんな会話をしていると僕のポケットの中でスマホが鳴る。ヒナからSNSでメッセージが来たみたいだ。


「ステージの裏側に来て……いいものを見せてあげる?」


「じゃあ一人でいってきぃ。ワシは出店ぶらぶらしてくるから。兄妹水入らずで話したいことあるやろ」


「ああ、うんありがとう。じゃあ行ってくるよ」


 僕は特設ステージの裏に向かう。ヒナが見せたい物は何だろう……そんなことを思いながら。


————

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