第11話 魔物騎馬戦

 応援団による熱い応援合戦、魔法禁止全員リレーも無事終わり、体育祭も残すところあと三種目となった。

 私たちの白組は点数的にはまだ赤組に負けていない。

 だが、後半になるにつれ配点が大きくなっていくのが体育祭だ。

 最後まで気を抜けない。

 

「次の種目はー、魔物騎馬戦か」

 

 私は参加しないが、クラスメイトであり同じ魔創部のマルクくんが出場するのでしっかりと応援する。

 

「マルクくん、だいぶ魔物の扱い上手くなってたよね」


「ねー! 細かい動作とか結構大事になってくるっぽいから、練習が生きるといいよねー」


「騎馬戦だから、騎馬の魔物とも連携を取らないといけないから難しそう」


「大丈夫! 私練習してるところ見てたもん!」


「そうだね、頑張って欲しいね」

 

 魔物騎馬戦では、騎馬役の魔物一匹の上に攻撃役の魔物が乗っている。

 マルクくんは攻撃役になってるみたいで、騎馬役の操縦者はマルクくんの友達のようだ。

 マルクくんは魔法スライムで攻撃を、マルクくんの友達はホワイトウルフを操って戦うみたい。

 他の騎馬を見てみるとスケルトンとスパイダーの組み合わせや、ゴブリンとスライムの組み合わせなんかもある。

 

「うわ、あれ見てよ」


「リザードナイトだね」

 

 剣を構えたスケルトンがリザードの上に乗っている。あれは手強そうだ。

 

「――魔物騎馬戦、スタート」

 

 一斉に動き出した魔物達がグラウンドを揺らす。

 弓を構えている赤組の魔物は後方から射撃を行っている。

 マルクくんたちのホワイトウルフは巧みにかわしながら敵陣へ攻め込んでいく。

 

「わ、すごい!」

 

 魔法スライムからいくつか魔弾まだんが発射される。

 魔弾は赤組のレッドラビットに乗ったポイズンスライムへ命中した。

 

「やった!」

 

 そのまま敵のスライムは倒れ、戦況を有利にしていく。

 試合が半分をすぎたところで、お互い残っている騎馬は最初の三割くらいであった。

 両者とも魔素切れのような動きがちらほら見られる。

 

「魔物を動かすのって、フィリオ、マギナ、アルパ――感知、想像、生成の繰り返しだから、いくら魔導書を介しても魔素がどんどん減っていくんだよね」


「そうなんだー」


「いかに魔物自体の魔素を使えるかが鍵になってくるけど、やっぱり一年だとそこら辺が不利だね」


「なるほどなるほどー」


「だから魔素が十分にある短期決戦に持ち込みたかったけど、上手くは行かないね」

 

 と、ここで赤組のリザードナイトが動き出す。

 前半戦は逃げに徹して、後半の魔素切れを狙う作戦だったみたいだ。

 

「わ、まずいかも」

 

 マルクくんたちの騎馬も何とか攻撃を避けているが、他の白組の騎馬はリザードナイトの剣で倒されてしまう。

 そして、とうとうマルクくんたちの騎馬もやられてしまった。

 

「――勝者、赤組!」

 

 リザードナイトの独壇場で魔物騎馬戦は幕を閉じた。

 

「リザードって、ドラゴン族のやつだよね」


「うん。あれを動かすのにはそうとう魔素が必要だよ」


「じゃあ相手にすごい魔導使いがいたってことだねー」


「かもね。上のスケルトンとの連携も上手かった」


「あ、おつかれー! マルクくん」


「ああエルフィーさん。負けちゃったよ」


「うん。でも倒してるところも見てたし、かっこよかったよー!」


「ありがとう。もうちょっと魔素があればね」


「相手の作戦も良かったからね」


「そうだねリズさん。戦闘に夢中で周りを見れてなかったのも良くなかったかも」 


「まあ、とりあえずお疲れさま」


「うん! ゆっくり休んでー!」

 

 次の種目は魔法禁止短距離走。

 そして、その次の最後の種目はこの体育祭の締めくくり、部活対抗まと当てだ。

 

 ◇

 

 お昼休憩中、魔創部のみんなとご飯を食べながら部活対抗的当ての最後の作戦会議を行っていた。

 

「前も話したように、まとがどこにあるかは分からない。

 原則施設の中にはないだけで、グラウンド外の通路や草原エリアあたりまでは出現するかもしれない。

 だから、状況を部内で共有するために、こんなものを作ってきました!!」

 

 ミラ先輩は部員に傘を一本ずつ配っていく。

 

「これは……売店の傘ですか?」


「そう!! これはキバマキ生徒会長の販売してる傘をさらにアップグレードしたものだよ!!」

 

 魔創部の人達は、自分の作った便利な魔法具を学院内の売店で販売している。

 キバマキ生徒会長の傘は開くと学院内の地図が内側に表示されるというものだ。

 毎度の事ながら、仕組みは分からない。

 

「今回の体育祭用に、それぞれの傘の場所も地図に表示されるように改造しました!!

 開かなくても、その傘の場所が表示されるから、なるべく他の部員がいないところを探索して欲しいな」

 

 キバマキ生徒会長もやってきて、さらに傘の説明をしてくれる。

 

「あと、これはこの傘を開いている者同士で会話が出来る。

 外側の様子を他の傘へ映し出すこともできるから、状況を伝えやすくなっている」

 

 実際に開いてみると、傘の内側から声が聞こえる。

 傘を開いた状態で傘を開くボタンを押している間、音や景色を送信できるみたいだ。

 部員たちがすごいすごい、と話している声が傘から聞こえてくる。

 送信した時の場所が地図上に残るため、マッピング機能にもなっている。

 

「そしてこれは最後の機能だが、表面の水分から魔素を吸収してくれる。

 雨が降ってる時は魔素切れは滅多に起こらないだろうが、あいにく今日は体育祭日和だな」


「なるほど。でも水をかければ魔素は復活するんですよね?」


 マルクくんが生徒会長に質問する。


「そうだ。ある程度は蓄えられるが、位置の算出や映像、音声の送信にはどうしても多くの魔素が必要になってくるから、足りなくなったら水から補給してくれ」


「分かりました!」


「ということでみんな、傘の使い方は分かったかな??

 私は定期的に傘を確認するようにするから、困ったことがあったらすぐ言ってね!!」


「この部活対抗まと当てでは、的が魔物を討伐しないと出てこないものや、非常に見つけにくい場所に置かれている。

 戦闘が得意でないなら、魔物を見つけ次第この傘で共有するといいだろう」


「あとたまに、空中を飛んでる的もあったりするから、下ばかり見ずに上の方も確認した方がいいかもね!!」


「了解です!」


「じゃあとりあえず作戦会議はこんな感じかな。

 そろそろ魔法綱引きが始まるだろうから、楽しみにしておくといいよ!!」

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