第二章 試練

第21話 中間試験!

「これより中間試験第一科目魔術初級まじゅつしょきゅうの試験を開始する。試験、始め――」

 

 メアズキッチンを楽しんだり、目安箱に届いたお悩みを解決するべく簡単な魔法具を作ったりしているうちにもう六月も終わろうとしていた。

 六月末、中間試験が始まる。

 何の変哲もない、普通の筆記試験だ。

 入学からこの前までの授業の内容を全教科問われる。

 

 問一 次の空欄に当てはまる言葉を語群から選び埋めよ。

 詠唱魔法は(1)を高めるために行う。(2)語で唱える必要があり、「小さな炎よ、目の前を焼け」は「(3)(4)(5)(6)(7)」である。――

 

 ……しょっぱなから魔素語まそごの問題だ。

 一年生はとにかく魔素語を覚えさせられる。

 魔術の授業でも、魔導でも、魔物学でも別の分野の魔素語を教えられる。

 この中間試験でもそれぞれ別の分野で魔素語がたくさん出てきそう。

 でも大丈夫だ。

 リズやメアちゃんに感化されて今回はなんと五日前からテスト勉強を始めたのだ。

 部屋の掃除を始めるくらいには余裕のあるペースで勉強をしていた。


 (1)はマギナ――想像で(2)は魔素語かな?

 『小さな』は形容詞のlitmsoリトモーソと、『炎』はfureフューアで、主語の場合はFureにして……

 

 問六 水魔法に関して、以下のことについて記述せよ。

 1.水魔法を発動する際に考慮すべきこと。

 2.水魔法の弱点。

 3.水魔法の用途。

 

 記述式の問題もあるみたいだ。

 試験時間はあと十五分。

 最終問題だが、減点が無いように書かなければ。

 

「――試験終了」

 

 いつものテストのように紙が試験監督の方へ勝手に飛んでいく。

 さすがにもう慣れたものだ。

 

「二十分後、戦闘基礎の試験を始める。

 五分前までには自席に着いておくこと」

 

 休憩時間になったのでリズのところへ話に行く。

 

「おつかれーリズ」


「お疲れ様。まだ終わってないけどね」


「どうだった? できた?」


「うん」


「ええー。できたって聞かれたら普通は全然だよって答えるんだよ」


「じゃあ全然できた」


「ぐぬぬー、これだから頭のいい人は困っちゃうよ」


「エルフィーは?」


「全然だよ」


「ふふっ。これくらいのテスト、自信を持って答えて欲しいんだけど」


「なに笑ってんの! まー私だって全然できたけどねー!

 最初の詠唱魔法のところって『litmsoリトモーソ Fureゥフューア zeFtゼフト HHへレイト bunビューナ.』だよね?」


「多分そう。いきなり詠唱魔法が出てきて驚いた」


「ほんとだよねー!

 最近習ったやつだったし、ちゃんと覚えておいて良かったよー。

 後半とか、計算問題多くて焦っちゃった」


「魔法ダメージのか。属性の理解も必要になるからね」


「あれ、火って水に何倍だったっけ?」


「三分の一倍」


「えー。私半減にしちゃったかもー! どうしよー」


「まあまあ、誰だってミスはあるよ。

 終わった試験のことを考えるより、次の試験について考えた方が獲得点数は上がるよ」


「そう、そうだよね!

 リズの言う通りだ。えっと次は戦闘基礎だからー」

 

 教科書を開いて復習を始める。

 

「リズ。問題です!

 近接戦闘で大事になるのは――」


「間合い」


「ですが、中距離戦闘で大事に」


「動き」


「ですが! 長」


「予測」


「です! さて、私の今朝の朝ごはんは何でしょう?」


「パン」


「正解! これでリズは戦闘基礎はバッチリだよ!

 もう勉強しなくていいよ。私だけが勉強するー」


「どうぞ」


「むぅー。余裕があるのが羨ましいー」

 

 とりあえず習ったところを詰め込んで戦闘基礎の試験に臨む。

 

 ◇

 

「また明日ー」


「うん。またね」

 

 戦闘基礎の試験も無事終わり、試験中は午前で終わるので早々に帰宅して翌日の対策をする。

 二日目はフィリオ中級、歴史、魔導初級のテストだ。

 フィリオと魔導はなんとかなるけど歴史はちょっと苦手より。

 

「――歴史なんて、ある目的を遂行するための過程にすぎない。

 当時の人たちの思惑を推察して、想像力を働かせれば簡単」

 

 ……なんてリズは言ってたけど、そんなの分かるわけない。

 とりあえず教科書に書いてある出題範囲を見直していく。

 

「えーっと、ヴァルメリアさんが魔法陣を生み出してー、どういう気持ちだったんだろう?

 やっぱり魔法陣が欲しかったのかな……」

 

 一応リズに言われた通り考えてみるが直前にやるには効率が悪い気がする。

 とりあえず丸暗記して、次の試験の時はこうやって覚えることにしよう。次はね。

 

 ◇


 問三 以下の空欄に当てはまる文章を書け。

 ――この戦争は当時ヴァンパイアの王妃であった(1)が(2)を発明することによって終結した。

 

 お、ここは昨日やったところだ。

 ヴァルメリアさん、「ミゾレア・ヴァルメリア」が「魔法陣」を発明したんだよねー。

 

 ――これは(3)を目的としたもので、今日でもヴァンパイアの伝統として根付いている。

 

 え、目的? そんなの書いてあったっけ?

 ……でも、メアちゃんを見ていれば分かる。

 「溢れる魔素を消費すること」っと。

 その後も記憶を頭の奥から引っ張り出しながら解いていく。

 やっぱりこうしてみると暗記は苦手だ。

 

 分からないものは分からない。

 覚えてないものは思い出せない。

 と、問題を飛ばしていたらもう終わってしまった。

 せめて書いたところだけでも間違えないように見直しをして終了を待つ。

 

「――次は……魔導だね」


「うん! ついに来たね、私たちの時代がー!」


「良かったね。私は歴史の方が得意だからもう時代は終わったけど」


「えーでもリズは何でも得意じゃんー!

 あっ、そうだ! リズ、次の魔導のテスト勝負しようよー!

 私、結構自信あるんだよね」


「ほう」


「テストで点が低かった方は相手に魔法具を作ってあげるっていうのはどう?」


「受けて立とう」


「言ったね? あー楽しみだなーリズの魔法具」


「歴史が始まる前とは大違いだね」


「うん。私は魔導のエキスパートだからねー。どんとこいだよー!」

 

 問一 次の文章はある魔導書に書かれている魔素語の一部である。下線部の意味をそれぞれ答えよ。

 問二 右図はある目的のために作られた魔法具である。この魔法具の用途を推測し、機能を説明せよ。

 問三 魔導武器に関して、以下の問いに答えよ。

 問四 あなたが第二森林エリアに探索へ行くことになった場合、どのような魔法具を作って持っていくか、形状、用途、機能が分かるように書け。

 問五 同時に配布した青い紙で「長く飛ぶ紙飛行機」を作れ。ただし、試験中に飛ばしてはいけない。試験終了と共に回収する。

 

 ……多い! 九十分だよ!? しかも紙飛行機作んなきゃだしー。

 とにかく、落ち着いて問一から解いていこう……。

 

「――試験終了」

 

 ふう。すべて解けたし、結構いい点数取れるんじゃないかな? リズに勝てた気がする!

 

 翌日はヘヴリ語、魔物学基礎の試験を受けた。

 どちらも歴史ほど悪い感触は無かったので、赤点になることは無いだろう。多分。

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