第22話 期末試験?

「終わったー!」


 中間試験の全科目終了。

 腕を上にあげて背筋を伸ばす。

 この一週間ずっと勉強していたのでこの解放感が気持ちいい。

 

「今日は担任が来てホームルームを行うので帰宅しないように。

 ただ、これより十五分ほど休憩だ」

 

 休憩の合図があったのでリズのところへ駆け寄る。

 

「おつかれさまー!」


「お疲れ。だいぶくたびれてるね」


「うん。魔物学の方の魔素語あんまり読めなかったからー」


「長文読解だったもんね。ところどころ魔導と被ってる部分もあったけど」


「あー結果が怖いよ。頼む! 赤点回避!」


「そんなにギリギリなの?」


「赤点って平均点の半分でしょ?

 なんかみんな頭良さそうだから平均点高そうなんだよねー」


「大丈夫だって。そうそう赤点なんて取らないよ」


「リズはそうかもだけどー……。

 まあいいや! 考えてもどうしようもないしー!」


「そうだね」


「この後何があるんだろう?」


「さあ」

 

 リズと今後の話をしていると担任のレナータ先生がやってきた。

 

「みなさ〜ん。席に着いてください〜」

 

 レナータ先生は大きな紙を丸めて手に持っている。

 その後ろから冊子の山が教室に運ばれてくる。

 どこか、体育祭の説明があったときに雰囲気が似ている。

 

「今日は〜中間試験を頑張った皆さんに、夏休みのお知らせをします〜!」

 

 もう夏休みの話かー。の直後に夏休みの話。

 実技試験だと噂される期末試験はやらないのだろうか?

 

「みなさんは夏休み、この学院が所有する無人島で過ごすことができるんです〜。

 地図はこの通り〜」

 

 レナータ先生が手に持っていた大きな紙を黒板に貼り付ける。

 左端にはいまいるレジェロ魔法学院があり、その東側にいくつかある島の一つに大きく丸が描かれている。

 

「ここが今回みなさんの行く『ウォロアーク島』よ〜」

 

 レジェロからは少し距離があり、もしここから行くなら森を抜けて山を越えて海を渡る必要がある。

 

「ここはいいところなのよ〜。

 星が綺麗に見えて、大自然に包まれて、夜はみんなと火を囲みながら楽しくおしゃべり。

 ああ、懐かしいわ〜」

 

 そういえばレナータ先生もここの卒業生だったんだ。

 ということは、先生も高等部の時にウォロアーク島に行ったのかな?

 

「それでね〜、それでなんだけどね〜」

 

 どこか申し訳なさそうに話を続ける。

 

「これが、期末試験の内容です〜!」

 

 ええー! と、何となく察してはいたがクラス内が騒然とする。

 

「一年生の一学期の期末試験は毎年固定で、どこかしらの島へ到達する『魔法島到達試験』なのよね〜。

 今回は私のときと同じウォロアーク島になるね〜」

 

 試験……?

 島についてから何かするわけではないのか。

 

「試験が始まる日にみんなでグラウンドに集まって、そこでスタートするの〜。

 どんな手段を使ってもいいから、ウォロアーク島に着いた人から試験終了!

 試験の後は島でのんびり過ごしてもいいし、別に帰ってもいいのよ〜。

 もったいないと思うけど……」

 

 なるほどー。とてもシンプルな試験だ。

 行けばクリア、ということか。

 

「でも〜、残念ながら試験の成績は到達した順に付けられるから、のんびりしてると良くないかもね〜」

 

 一年生内でのレースでもあるわけか……。

 

「しかも〜、ウォロアーク島の周りの海は魔物が住んでるから気をつけてね〜!

 試験開始は今日からちょうど一ヶ月後です!

 それぞれ、対策を考えといてね〜」

 

 期末試験の詳細が書かれた冊子が配られ、ホームルームは終了となった。

 

 冊子を開いてみると「魔法島到達試験」について細かい注意事項が十ページほどに渡って記されている。

 他者との協力は自由、括弧かっこで推奨と書かれている。

 成績は到達時間が三分の一、到達手段が三分の一、その他独創性等が三分の一で付けられるみたいだ。

 安全性や健康面については、図付きで長々と書かれている。

 

「安全アンクレットに魔法トイレ、夜間テントかー」

 

 危険を感じたらすぐに離脱できる装備品に、その場で排泄物を処理できる魔法具、魔物に襲われずに夜を過ごせるテントと、サバイバルをするのに必要な道具は配布されるみたいだ。

 となると、私たちが考えなければならないのは、試験の根幹である”どうやって早く島へ到達するか”だ。

 中間試験が終わったかと思えばすぐに期末試験の話。

 中間試験があまり奮わなかったぶん、期末試験は頑張らなければ。

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