第23話 作戦会議

「どうするー? リズー」

 

 ホームルームも終わり、教室で今回の期末試験である『魔法島到達試験』の攻略法について話す。

 

「エルフィー! 来たぞー」

 

 Aクラスのホームルームも終わったのかDクラスの教室までメアちゃんもやってきた。

 

「メアちゃん! 試験お疲れさまー」


「お疲れメア」


「うん。エルフィーもリズっちもおつかれさま!」


「メアちゃんは試験どうだったー?」


「まずまずだな。せいせきは問題ないとおもうけどな」


「メアちゃん頭いいもんねー」


「メアは学費免除で来てるからせいせきはだいじなんだ」


「でもそれでしっかりと点数取れるのが凄いよー」


「だから、期末試験もがんばらないとなんだよね」


「そうそう、期末試験の話をしてたんだったー!」


「おお、しようしよう! これがウォロアーク島周辺のちずだな」


「ここからウォロアーク島に直接行くなら、フローラリア森林、ガリアナ山地、ラオソラス海を通るしかないよね」


「そうだねーリズ。距離的には近いけど、歩きとなると結構時間かかるよねー」


「うん。三日くらい歩き続けることになるね」


「それなら、ミルヴェント港町から船にのるってのはどうだ?」


「あー、へヴリッジの南東の港だっけ。でもウォロアーク島に船なんて出てるのかな?

 レジェロ所有じゃなかったっけ」


「メアのミルヴェントから船を出すっていうのはお金があればいけると思う。いろんなルートの中で一番安全ではあるかもね」


「でも私お金持ってないよー?」


「私も船を出してもらうほどないな」


「メアもないぞ」


「うーん……。やっぱり歩きしかないのかなー?」


「ほとんどの人がそうなるだろうね。キャンピンググッズは配布されるし」


「あーあ、瞬間移動の魔法が使えればいいのになー」


「それができたら間違い無く一位になれるだろうけど」


「でもできないよー」


「流石にね」


「メア、瞬間移動の魔法なら使えるぞ」


「えー!?」


「え、メアほんと?」


「人にはつかったことないけどな。ほら」


 メアちゃんが机の上に魔法陣を描きだし、その中から小さなコウモリ――ルマが出てきた。


「えー、これって瞬間移動の魔法だったのー?」


「うん。げんみつにはな。ふだんは幽月峡ゆうげつきょうっていう、メアたちのすむどうくつにいるんだ。それをこんな感じでもってきてる」


「なるほどー。ルマちゃんたちは故郷で暮らしてるんだねー」


「うん。ルマたちにとってそれがかいてきだからな」


「勝手に召喚魔法だと思ってた」


「あはは、見た目はにたようなもんだからな」


「これは……何かに使えるかもしれない」


「でもさっきもいったけど、人にはつかえないからな。大きいものはむりなんだ」


「人には使えないって、小さな物とかは瞬間移動できたりする?」


「うん。たとえばそうだなー。これとか」


 再びメアちゃんは机の上に魔法陣を描き、しばらくするとこの前作ったフライパンが出てきた。


「あ、これ前作ったやつ!」


「うん。寮の部屋からここにもってきたんだ」


「なるほど。これなら食料とか水をたくさん持ち歩く必要がなくなるかもしれない」


「たしかに! 手ぶらで行けるってことだー!」


「たべものとみずくらいなら簡単だ」


「おおー、じゃあメアちゃんには食料班になってもらおうー!」


「よろしくメア」


「まかせて!」


「……となるとー、あとはどうやって早く行くかだよねー」


「冊子にはフローラリア森林は魔物はほとんど出ないって書いてあるけど、ガリアナ山地とかラオソラス海は普通に出るってことだよね」


「先生も海は特に出るって言ってたねー。それだけ危ないんだろうなー」


「海は移動手段も限られるからね。

 戦闘練習は今度するみたいだけど」


「魔物討伐練習っていうやつか」


「うん。練習が必要なほど強い魔物なのか、練習すればどうにかなる魔物なのか正直分からないけど」


「流石にそんなに強くないでしょー。安全装置だって配布されるみたいだし」


「しけんで死にたくないな」


「それは私もー」


「やっぱり移動手段はしっかり考えた方がいいね」


「森と山は最悪歩けるけど、水の上は歩けないしなー」


「考えれるのはボート、魔導生物に乗る、あとは泳ぐくらいか」


「えー、泳ぎは疲れちゃうよー」


「メア泳げない……」


「じゃあ泳ぎはやめよう。魔物もいて危ないし」


「うんうん」


「よかった……」


「ボートは……持ち運べないよね」


「メアちゃんの瞬間移動で運べる?」


「おおきさによるな。メアの魔法はそんなにおおきいものには使えないからな」


「ボートって人の大きさよりも大きくなるよねー。

 人がダメならボートも無理っぽくなりそうだよねー」


「そうだな。あまりおおきいものはむずかしいな」


「……メアちゃんの瞬間移動の魔法って一日に何回まで使える?」


「んー、毎日二回くらいつかってて、あと二回くらいはつかえるな」


「合わせて四回かー。重さの制限とか、場所の制限とかある?」


「重さはきにしたことないな。

 場所も魔法陣がだせればどこでもつかえるんじゃないかな」


「なるほどー……」


 メアちゃんの瞬間移動の魔法は物の重量制限を突破できる画期的な手段だ。

 これを活用しない手はない。

 しかし、どうやって海を渡るか……。


「うーん、魔導生物……」


 リズが言っていたように、魔導生物に乗るのもアリだ。

 でも魔物に攻撃なんかされて、姿勢を崩して降りてしまったら下は海。

 泳ぎが得意ではなさそうなメアちゃんには恐怖そのものだろう。

 となると、ある程度自由が利き、泳げなくても海を渡る方法……。


「……水中」


 これまでとは逆の発想。

 海上を渡るのではなく、海中を進む方針で考えてみる。

 泳ぐのではなく、呼吸と視界を確保して進行自体は魔導生物に任せれば進むことができるだろう。

 それに、呼吸に関しては試してみたいことがある。


「ちょっと思いついたかも」


「お、エルフィー!」


「どんなの?」


「その名も、海中散歩作戦!

 海の中に潜って、歩いて島まで進むの!」


「およぐのではなくて?」


「そうー。この一ヶ月で呼吸用の魔法具、水の中でもよく見えるゴーグル、あとは水の中で歩けるブーツを作るの。

 他にも、魔導生物に助けて貰えばもっと早く移動できると思うんだよねー!」


「おおー、エルフィーすごい!」


「魔導生物をそうやって使うのか。

 呼吸用の魔法具って……どんなの?」


「知ってるかいリズ。この世界のあらゆるものは魔素で出来てるんだよ。

 ということは、呼吸に必要な空気だって魔素だということだよ。

 つまり、魔素を空気に変える魔法具があれば呼吸ができるってわけさ!」


「魔術の授業の導入みたいなこと言ってるね。確かにそうだけど」


「これを作るにはメアちゃんの協力が必要になると思うんだー!」


「何を作るのかわからないけど、おてつだいはできるぞ」


「うん! ちょっと部室行こうかー!」


「わかった!」


「まだエルフィーが何を企んでいるのか分からない」


「まあまあ、ついてきたまえよリズっちくん」


「はあ」

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