第32話 試験開始

「レジェロ魔法学院高等部一年一学期期末試験。

 ウォロアーク島到達試験、開始――」

 

 魔弾がはじける音とともに、グラウンド中央に時間の表示が現れた。

 一秒、二秒とカウントアップしている。

 安全アンクレットが二つに開き、刻まれていた魔素語が赤色に点滅する。

 

「……るさっ!!」

 

 同時に低音の角笛のような音がアンクレットから響き、グラウンドは騒音に満ちていた。

 

「……やく……けないと……さいね」

 

 リズが何か言っているが全然聞こえない。

 自分のアンクレットを急いで右足首に取り付ける。

 開いたリングの中に足首に入れ、輪を作るように閉じると勝手に巻き付き、赤色に点滅していた魔素語の模様はぼんやりとした白色の光に変わった。

 自分のアンクレットからはあの体を揺さぶる低音は鳴らなくなったが、まだ周りの人のアンクレットからは音を出し続けている。

 手で耳を押えながら待っていると、みんな装着を終えたのか次第に音は小さくなっていった。

 

「いやー、うるさかったねー」

 

「ホントにね、びっくりするからこういうのは先に言っておいて欲しいよ」

 

 まだ耳に違和感があるがすぐに慣れるだろう。

 

「エルフィー! リズっち!」

 

 Aクラスの方からメアちゃんがやってきた。

 

「おはようーメアちゃん!」

 

「来たか、メア」

 

 紺のキャップに動きやすそうなピンクのアクセントが入った黒のスニーカーを身につけ、準備は万端そうだ。

 服装は学院の制服と、学院支給の魔法ローブが推奨されているので三人とも同じ格好だ。

 魔法ローブはなんと言っても汚れがつきにくく、これから森の中や山の中を歩く私たちにとって必要不可欠だ。

 

「エルフィー、リズっち、サイコロふってみた?」

 

「うん。少しだけだけど」

 

「メアの魔法陣なんかよりもすっごい魔法陣がでてきておどろいちゃった!」

 

「魔法陣でも違いがあるんだ」

 

「そうだよ!

 メアのは転移まほうだけど、これは召喚まほうだね!」

 

「あーそうなんだ。

 召喚……。じゃあこれらは実質無制限に出せるってことか」

「うん! むせいげんー」

 

 リズ達は理解がはやいなー。

 でもこうして教えてくれるのは助かるな。

 

「しかもこのサイコロ、魔素がじゅうてんしき!

 魔素切れはほとんどおこらない!」

 

「メアちゃん詳しいねー。

 私、まだ見たことない出目があるんだけど、効果分かる?」

 

「メアはもらってからずっと振りつづけてたから、ぜんぶの効果がわかるぞ!」

 

「えー教えてー!」

 

「いいよ!

 ……でも、みんなもう行っちゃってるね」

 

「私達も行こうか、エルフィー」

 

「そうだね!

 お話はこれからたくさん出来るもんねー!」

 

「まずはここから東門に出て……」

 

 リズがリュックサックを開き、予め用意しておいた地図を広げる。

 リズが学院を指さし、そこから右側に指を動かす。

 私とメアちゃんはその指を目で追う。

 

「フローラリア森林だね」

 

 ここレジェロ魔法学院があるヘヴリッジ市の真東に位置する、フローラリア森林。

 ガリアナ山脈を囲うように木々が生え、ここから最短でウォロアーク島へ向かうなら避けては通れない場所だ。

 グラウンドに居た多くの生徒も東門へ行っているみたいで、ルートはほとんど同じかもしれない。

 

「よーしそれでは、リズっち探検隊、遠征開始ー!」

 

「おー!」

 

「また私が隊長か」

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