第12話 部活対抗的当てⅠ
「――本日最終種目、部活対抗的当てを行います。
各部活ごとに第二グラウンドへ整列してください」
この学院では授業の次に部活動が重視されている。
レジェロの生徒はどこか一つ、部活動に所属しなくてはならない。
この種目の結果は白組赤組の得点には入らないが、ここで好成績を残すことで部費の臨時ボーナスが貰える。
必要な道具が多い魔創部にとって、是非とも優勝を目指したい。
「では改めてルールを説明いたします。
開始より三十分間、施設内を除く学院内の決められたところに
小さい赤い的は5点、大きい黒い的は3点で、的を割った部活に加点されていきます。
魔法の制限はございませんが、他人への攻撃は禁止行為となります。
それでは、一〇分後よりスタートとなります。
この間に各自移動することが可能です」
中央のパネルに時間の表示が映る。
各部活の得点もここに表示されているみたいだ。
「よーしそれじゃあみんな集まってー!!」
ミラ先輩の掛け声で部員が駆け寄る。
魔創部は一年生が私とリズとマルクくんと他のクラスの子が三人、二年生がミラ先輩、セアン先輩とあと二人、そして三年生がキバマキ会長を含む五人の合計十五人の部活だ。
二十人以上の部活から的の得点は減るみたいだけど、私たちの部活は大丈夫だ。
「魔創部ー……ファイトー!!」
「「おー!」」
気合十分。私はリズと校舎西側の草原エリアの方へ行くことにした。
「的ってどのくらいの大きさなんだろうー?」
「とりあえず小さいんだろうね。特に5点の赤い方は当てるのには相当近づくか、かなりの精度が必要になりそう」
「私の魔弓、そこまで精度ないんだけどなー」
「なるべく近づいて打つようにしようか」
「リズは何で壊すつもり?」
「私はゴーレムで壊すつもりだったけど、小さい的には向いてないから今日は別の魔導書も持ってきた」
「それ何の魔導書?」
「これは魔弾の魔導書。市販のやつを改造して、精度を高めてる」
「お、リズはもう改造できるようになったんだ!」
「いや全然。魔創部の魔導書が得意な先輩に教えてもらったんだ」
「そうなんだね。でもでも、オリジナルの魔導書ってかっこいいね!」
「ほんとは一から作りたいけどね」
「あ、そうだ。なにか連絡が来てるかも」
スタートの合図も聞こえ、第二グラウンドから第一グラウンドの方を抜けて草原エリアが見えてきたあたりで傘を確認する。
内側に映し出された地図上には赤いマークが光っていた。
「あ、なんかある」
そこを触ってみると、画像が表示された。
キバマキ会長が早速赤い的を見つけてその形を共有してくれたみたいだ。
「わー、こんなに小さいんだねー」
赤い的は握りこぶしほどの大きさだった。
続けて黒いマークも出現し、そちらはセアン先輩が見つけたもので、顔と同じくらいの大きさの黒い的だった。
「これが学院中に散らばってるってことか」
「うん、大変そうだよねー」
「とりあえず目的地に行こうか」
「時間もないからね」
草原エリアに向かう途中、上空をコンドルのようなものが鳴きながら飛んでいた。
「あんなのいたっけ?」
「多分あれは倒すと的を落とすだろうね」
「リズ、行ける?」
「うーん、追尾弾のにはしてるけどあれはちょっと速すぎる。
時間と魔素がもったいないから草原に向かおう」
「私もあの距離と速さは無理だー」
◇
学院の第一草原エリアには名前の通り草木と、畑、木造の小屋、風車などがある。
他の部活の生徒もちらほら見かける。
「いやーいい景色だねー」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ。早く的を探さなきゃ」
「それもそうだね」
木の根元や枝の方に的が無いかを手分けして探す。
「あった!」
葉っぱの中に黒い的が隠れて置かれていた。
「これをこうして……」
傘を開いて的の方へ向け、「エルフィーです。黒い的を発見しました」と喋りながら傘のボタンを押す。
部員全員がこうやって的の位置を共有することで
「お、見つけた?」
リズがやってきた。
「うん、ほらあそこ」
「じゃあ例のやつ試してみようか」
私はポケットからメガネを取り出し装着する。
「どう? 頭良さそう?」
「その発言は頭良さそうじゃないね」
このメガネは私がミラ先輩やキバマキ会長に手取り足取り教わりながら作った魔法具だ。
この魔法具はフィリオ――感知の強化ができ、視界の魔素を感じ取りやすくなるものだ。
残念ながら体内の魔素は複雑で見えないが、物に含まれてる魔素くらいならある程度は見えるようになる。
リズの持ってる魔導書なんかは眩しいくらいに見える。
「お、見えるよ!」
的に魔素が使われていない懸念があったが、さすがに大丈夫だった。
しかも、かなりの量の魔素が含まれているためはっきりと映る。
「おお、成功だね」
「じゃあこのままどんどん探しに行きましょー!」
「破壊も忘れないでね」
的を壊して周りの探索を続ける。
しばらく草原を歩き回っていると、視界にぼんやりとした魔素の塊を捉えた。
「あ、リズリズ。あっち」
遠くから見るとただの岩だが、魔素の反応があるため恐らくグランドロック系の魔物だろう。
近づいてみると魔物は動き出した。
「グランドロックだね」
「気をつけて」
「分かってる」
魔物は基本的に一対一で戦うと危ないので、魔創部ではこうして二人組で行動するようにしている。
「わ、危な!」
グランドロックが石を投げつけてくる。
そこまで速さはないため軽く避けれたが、体に当たったら怪我は負ってしまうだろう。
「行くよ、エルフィー」
「オッケーリズ」
私は弓を構え、リズはゴーレムの魔導書を取り出す。
「私が動きを止めるから、リズは攻撃して」
「了解」
フィリオ――感知すること。魔弓に流れる魔素を感じる。
マギナ――想像すること。矢がグランドロックの魔素が溜まっている水晶部分を砕くほど強く、ここからまっすぐに二秒ほどで射抜くことを思い描く。
アルパ――生成すること。引いた弓を弾き矢を発射させる。
矢は思い描いたとおりに二秒で水晶部分に当たり、グランドロックの動きを止める。
直後、リズのゴーレムの腕が上空から振り落とされる。
まさに岩をも砕く勢いでグランドロックを粉砕する。
中から小さな物体――赤い的が出てきた。
「やったー! 5点の的だ」
「赤はこういう感じか」
「リズ、報告しちゃって」
「分かった。……リズです。グランドロックから赤い的が出てきました。
これでよし」
「よーしじゃあ壊してもっと探そう!」
残り十五分。
魔導創作部、現在41点。
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