第13話 部活対抗的当てⅡ

 傘を開いて地図を確認してみると、赤い点が四個、黒い点が七個表示されている。

 

「他の部活は何点くらい取ってるんだろう」


「確か誰かがグラウンド近くにいたはず」


「あ、これじゃない?」

 

 第二グラウンドの位置にある青い点を触ってみると、音声が流れ画像が表示される。

 

「……ソニアです。残り時間十八分時点での得点状況は、一位が遠距離戦闘部の52点。二位が魔術部の48点。

 そして我々魔創部は三位で36点です」

 

 二年生のソニア先輩は魔導書を作ってる先輩で、同性の私から見ても綺麗な人だ。

 リズが言うには鳥系の魔導生物をよく出しているらしい。

 今回はグラウンドに残って定期的に情報を送りながら辺りを探してくれている。

 

「あ、ソニア先輩だ」

 

 私がミラ先輩を慕っているように、リズは魔導書を作れるソニア先輩を尊敬しているみたいだ。

 今日持ってきた魔弾の魔導書もソニア先輩と一緒に買いに行ったそうだ。

 

「結構差があるねー。遠距離戦闘部はやっぱり強いねー」


「私たちが倒せそうになかったコンドルとかも倒せる人はいるだろうからね」


「魔術部が二位なのはやっぱりフィリオ――感知が得意だからかな?」


「そうだろうね。魔物を倒す練習もしてるだろうし、あまり隙がないね」


「でもでも、私たちだって魔道具があるからね!」


「そうだね。この情報共有が出来るのは他の部にない強みだからそこで差をつけたいね」


「あー……あ!! 聞こえるー!?」

 

 傘を開きながら話していたら、ミラ先輩の声が傘から聞こえる。

 そういえば、傘を開いている人同士で会話ができるんだった。

 

「はい、聞こえます! エルフィーとリズです」


「お、見たよ、グランドロック倒したんだね、凄いね!!」


「はい、赤い的も出てきてラッキーでした」


「うん。それでね、会長とも話してたんだけど、出来るなら魔物を多く倒した方がいいって。

 今のところ魔物からは赤い的しか出てないから、とりあえず見つけたら倒して欲しいなって思う!!」


「了解です。なるべく魔物を探すようにします」


「もちろん黒い的も見つけて欲しいけどね。

 あ、あと的の場所だけど、動いてるのは無視して、置かれた的の半径二十メートルくらいは別の的がないっぽいかな。

 だから、ひとつ見つけたらすぐ別の方に行った方がいいかも!」

 

「なるほど、分かりました!」


「何か言っておきたいことはある?」


「いえ、大丈夫です」


「じゃあ後半も頑張ろうね!!」


「はい!」

 

 傘を閉じて早速別のところへ移動する。

 

「やっぱり情報は大事だねー」


「うん。近くを探す手間も省けたし」


「なんか、チームって感じー!」

 

 人通りの少ない風車小屋の近くに来ると、メガネ越しになにやら回転している魔素が見える。

 

「あ、リズあれ見て」


「羽の先にくっついてるね」


「リズ行ける?」


「うん多分。準備するから報告はしておいて」


「オッケー。……エルフィーです。黒い的がありました」

 

 リズが魔導書のページを開いて魔弾を生成させる。

 魔導書は本自体に多くの魔素が含まれていること、そして完成図が描かれていることの二点が魔法発動を楽にしてくれている。

 魔弾は勢いよく発射され、風車の羽の先端に固定されている的をめがけて飛んでいく。

 的は動くが魔弾も追尾し的を破壊する。

 

「これで3点か」


「うんうん。これで、この近くにはもうないはずだからもっと遠くへ行こうー!」


「うん」

 

 風車小屋から少し離れた池の近くに大きな魔素反応がある。

 

「ジャイアントラビットだ」


「わ、おっきい……」


 私の身長くらいの大きさがある。

 さっきのグランドロックはリズと同じくらいの大きさだったため怖くなかったが、これはさすがに怖い。

 

「でも、魔物は倒した方がいいんだよね?」


「もちろん倒すけどー……」

 

 二人とも臨戦態勢に入る。

 私は弓を構え、リズはゴーレムの方の魔導書を取り出す。

 

「さっきと同じ作戦で!」


「オッケー」

 

 フィリオ、マギナ、アルパをこなし矢を放つ。

 矢はジャイアントラビットの胴体に刺さるが動きは止まらない。

 

「と、止まらない……」


「避けて!」

 

 突進してくるジャイアントラビットに恐怖で足が動かない。

 リズのゴーレムがジャイアントラビットを押し出し軌道がずれる。

 

「危ないって!」


「う、うん」

 

 何とか回避出来たというか、リズが押し出してくれて助かった。

 

「もう一回やるよ」

 

 気持ちを入れ直して再び弓を構える。

 

「分かった」

 

 フィリオ――感知すること。魔弓に溜まった魔素をさっきよりも多く、体内の魔素と合わせて感じ取る。

 マギナ――想像すること。今度は矢を三本同時に放つ。一つは右目を、一つは首を、一つは胸を矢の半分が埋まり込むほど強く、速く。

 アルパ――生成すること。体内の魔素を矢に詰め込みめいっぱい引いた弦を離す。

 矢はそれぞれ胸、首、目に順番に刺さっていく。ジャイアントラビットは動きが止まり、リズのゴーレムの腕が上空に置かれる。

 次の瞬間ジャイアントラビットは地面に押しつぶされ弾け、小さな赤い的のみがそこに残った。

 

「危なかったー……」


「ほんとだよ。ぶっ飛ばされそうだったって」


「リズ本当にありがとう」


「うん。何とかなって良かった。報告しとくね。

 ……リズです。ジャイアントラビットから赤い的が出ました」

 

 正直かなり怖かった。一人で戦っていたらと考えると体が震える。

 

「魔物はやめとく?」


「ううん。私、ちょっと油断してた。

 もっと気を引き締めて戦うようにするよ」


「分かった。じゃあ他の魔物も探しに行こう」

 

 残り八分。

 魔導創作部、現在65点。

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