第4話 日常の始まり
入学式の翌日。
各教室は生徒たちの話し声で賑わっている。
「おはよーリズ」
リズはちょこんと教室で座っていた。
「おはようエルフィー。朝から楽しそうだね」
「うん! 今日から授業が始まるからね!」
「授業をそんなに楽しみにしてる人がいるなんて、先生達も喜ぶね」
「私はいち早く魔導について知りたいのー!」
「そういえば、昨日の魔導創作部だっけ? どうだったの?」
「ふふん。私はもう魔創部の一人なのだよ」
「え、もう入部したんだ」
「そうなのさ! 善は急げなのだよリズくん」
「行った初日から入部って、相当気に入ったんだね」
「そして、実は私だけじゃないんだよねー。このクラスのマルクくんも昨日来て、一緒に魔創部に入ったんだー!」
「マルクくん……? 魔導書が好きみたいなこと言ってた人?」
「おー、リズは記憶力いいねー。
そうそう、魔創部では魔導書を作る人もいるらしくて、マルクくんは魔導書を作りたくて入ったんだってー!」
「へー。魔導創作部は魔導書も作れるんだ……」
「リズはサモンサークルに行ったんだっけ?」
「うん。昨日見学してきたよ」
「どうだったの?」
「悪くはなかったけど、野生の魔物を捕まえて、それを強化して戦う感じだったね」
「そうなんだー。ポケットからモンスターを出すっていう感じだったんだねー」
「そう。私みたいに魔導書とか使って一から魔物を召喚するタイプでは無かった」
「じゃあリズも、魔創部に入っちゃえばいいんじゃないの?」
「魔導創作部が魔導書も作ってるなんて知らなかった。
紹介のときはただ便利な魔法具を作ってるだけかと思って」
「それねー。私も驚いた!
あのさ、生徒会長っているじゃん。紫の翼の」
「ああ、エルフィーが一目惚れしてた」
「いや、してないけどー。
それで、その会長さん、なんと魔創部だったんだよー!」
「そうなんだ。ってことは選択は魔導系だったってことだね」
「そうそう。あの方、とにかく作るのが大好きみたいで、魔法具、魔導書、魔導武器、魔法陣ってもうなんでも作ってるみたいなの!
だから、リズも入ったら魔導書について色々教えて貰えるかもよー?」
「へー。あの会長さんなんでも作れるんだね」
「うん! とっても優しい先輩だったし、頼りになるよー!」
「じゃあ今日の放課後その魔創部、に行こうかな」
「うんうん! 善は急げだよー! もうこの際、授業始まる前に行っちゃう??」
「流石に授業受けてからにするよ」
マルクくんが、鍛えられた体をした茶髪の友達とともに教室へやってきた。
「――そうなのか、あのエルフィーが魔創部にいたのか」
「うん。僕が部室に行った時にはもう居てね。
しかも既に入部してたみたいで」
「なんだよ。百パー遠距離戦闘部に入ると思ってたのによー」
「ロベルトも魔創部入ったらいいんじゃないの?」
「いーや、俺は魔弓を極めることにするさ」
私に気がついたマルクくんは、爽やかに話しかけてきた。
「おはようエルフィーさん。そちらはお友達?」
「あっ! マルクくん。昨日ぶりだね。
そう、こっちはリズ。中等部からの友達で、なんと今日から魔創部の一人なのです!」
「はじめまして。よろしく。まだ見学にすら行ってないけどね」
「そうなんだ。リズさんも魔創部に入るんだ!
よろしくね。きっと楽しい部活になると思うよ。
こっちは僕の友達のロベルト。彼も中等部からの友達なんだ」
「おう、俺はロベルト。
まさか、マルクがエルフィーと同じ部になったなんてな……」
「え? 私のこと知ってるのー?」
「そうなんだよ。ロベルト、中等部の頃からエルフィーの魔弓は本物だってうるさいんだよ」
「エルフィーって人気者だったんだね」
「ええー! そんな、適当にやってただけだって」
「いや、あんたの精度はかなり高い。
だから俺は遠距離戦闘部に入ると思ってたんだが、違うのか?」
「魔弓は確かに大好きだけど、今はやりたいことが見つかったからねー」
「そうか。まあ俺がどうこうする話でもないしな。
気が向いたら俺と魔弓の手合わせしてくれよな」
「うん、私でよければいいよ! もしかしたら、魔創部特製の魔弓でやることになるかも!」
「そうか、魔創部は魔導武器も作れるのか」
「そう、作ることなら何でもするんだよ!」
「なるほど、いいな。魔導も面白そうだ」
「ロベルトくんは魔導に興味は無いの?」
「うーん、俺は魔術を極めるためにここに来たからな。
興味がないわけではないが、どっちかというと魔術だな」
「そっかー。それだけ魔術が好きなんだね!」
「そうだ。俺の親父は一級の魔術士でな。
王国の周りなんかに出てくる凶暴な魔物を一瞬でやっつけちまうんだ。
俺もああやってこの国を守りてえ、なんてな」
「ロベルトはほんと中等部の頃から変わらないね」
「そうやって平和を守る魔法もかっこいいねー!」
「ありがとよ。せいぜい、この先お互い頑張ろうな」
「うんー!」
レナータ先生が教室に入ってくると、ホームルームが始まる。
そして、私の新たな学院生活も始まっていく。
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