第5話 リズ、魔創部へ行く

 初日の授業が終わり、リズに声をかける。


「リズ! 部活行こ!」


「分かった」


「マルクくんも誘おうか」


 リズが座っている列の一番後ろの席にいるマルクくんのところへ二人で行く。


「マルクくん、魔創部行こー!」


「あ、エルフィーさんにリズさん。早速部活に行くんだね。

 僕はちょっと用事があるから、先に行っててくれないかな?」


「了解ー!」


 教室を出て部室へ向かう。

 魔創部は教室のある校舎と別の部活棟にあるため、少し距離がある。


「しかし、この学院は広いねー」


「うん、中等部とは比べ物にならないね」


「私、昨日迷子になりそうだったもん!

 入学試験のときも思ってたけど、なんで学院の敷地内に森とか砂漠とかあるんだろうねー」


「魔法の研究施設でもあるから、そのためだろうけど、いくらなんでも広すぎるよね」


「ね、なんかなんでも出来るーって感じ」


「私が昨日行ったサモンサークルの先輩は、敷地内の森林エリアに小屋を立ててそこから登校してるらしいよ」


「えー! 住んでもいいんだー!」


「でも、第二森林エリアだから登校するのにすごい時間かかるって言ってた」


「んー、私は自分の家からでいいかなー」


「私も」


 話してるうちに、部活棟が見えてきた。


「魔創部はどの棟?」


「いちばん大きい棟だねー。二年生になると校舎が繋がってるから直接行けるみたい」


「一年の校舎は切り離されてるからね」


「ね、もっと丁重に扱って欲しいよ!」


 食堂の横を通って部活棟へ向かう。


「ここの二階だよ」


「ここらへんは初めて来た。昨日はグラウンドだったから」


「そうかー、召喚するから外でやるのか」


「うん。ちょっと怖かったね」


「もうーリズはビビりさんなんだからー」


「いや、怖いよ。捕まえた魔物といっても元は魔物だからね。

 作り出した魔物とは違うもん。

 流石に大丈夫だとは思っていても、こっちが抵抗する手段なんてそんなに無いわけだし」


「うんうん。怖い怖い」


 部室の扉を開ける。ミラ先輩はもう部活に来ていた。


「こんにちはー」


「お邪魔します」


「あ、エルフィーちゃん!! こんにちはーって、その子はお友達??」


「はい、そうですー! 魔創部に勧誘しました!」


「はじめまして。リズといいます。今日は見学に来ました」


「おおー! いらっしゃいー!!

 私は部長のミラ。よろしくね!!」


「はい、よろしくお願いします」


「リズは、魔導書が好きなんです。

 ここで魔導書作れるよーっていう話をしたら、授業が始まる前に行きたいなんて言い出して、流石に私が止めたんですけど」


「えー! それは凄いやる気だね、リズちゃん!!」


「いえ、言ってないですけど」


「あははー」


「まあまあ、でもなんかリズちゃんも楽しそうに見えるし、ちょっと紹介させてもらうね!!」


 そして、ミラ先輩はいつも通りコップを持ってきた。

 なんだかタネを知ってると、リズがどんな反応をするかニヤけが止まらない。


「ここ、魔導創作部ではね、身の回りのものをちょーっとアレンジして便利なものを作ろう!っていう活動をしているんだ。

 もちろん、魔導書とかも作れるけどね!!」


「それは、ミラ先輩の作った便利なものってやつですか?」


「その通り!! はいこれ持ってみてー!!」


「これはコップですよね」


「うん!! じゃあ、これに水を入れてみて!! あそこに蛇口があるから」


 さあリズ!

 そのただ光るだけのコップにどんな反応をするのか、見せてみよ!


「分かりました」


 リズが蛇口をひねって水を入れると、コップはに光った。


「光った……」


 リズー! 私とマルクくんとまったく同じ反応してるよー!

 いいね! その微妙そうな顔!


「どうどう?? 便利でしょ??」


「はい、光るのはすごいですが……」


 あはは、なんて奇妙な顔!

 キラキラのミラ先輩が渡してくるのはただピカピカ光るコップ!

 さすがのリズくんも困惑しております!


「……なんか妙にニヤけてるそこの人を見る限り、この光にはなんか意味があったりするんですか?」


 え。バレた。


「お、リズちゃん凄いねー!!

 そうだよ。これは持った人の魔力量によって光る色が変わる優れものなんだ!!」


「なるほど。このピンク色はどうなんですか?」


「うーん。それは秘密だねー。作った人にしか分からないこと、あってもいいでしょ??」


「それはそうですね。

 ……ちなみに、エルフィーは何色だったんですか?」


「エルフィーちゃんは黄色だったよ。

 あとマルクくんは橙色、生徒会長は紫色だったね」


「うーん。光、色……虹色でいうなら会長が紫なのはなんとなく説明はつく……って、私はピンクなんですか?」


 ミラ先輩がニコッと微笑んだ。


「え、リズなんか分かったの? ピンクだとダメなの?」


「まあリズちゃん。これは私が作ったものだし、そんなに精度のいいものじゃないから、気にしなくていいんだよ」


「それに、エルフィーが黄色だなんて」


「それは確かにねー!!」


 二人はこっちを横目で見つめてくる。


「えーちょっとミラ先輩!

 結局どうやって色は決まってるんですかー?」


「それはね、ひ、み、つ!!」


「えー! じゃあじゃあリズ、教えてー!」


「それはその黄色の頭脳で考えてみな」


「えー! リズまでもー! ひどい!」


「さっきのお返しだよ」


 うーん。うーん……。

 リズは虹って言ってて、紫が会長だから、虹色の順番ってことなのかな?

 だとしたら、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の順だから……え、私リズより上ってことじゃん!


「気づいたか」


「ふっふーん!」


「気づかないままでよかったのに」


「なめちゃあいけないよリズくん。この黄色の魔力量を持った私を侮るなかれよ!」


「うるさ……」


「仲良しでいいねー!! 二人とも!!」


「えへへー」

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