第28話 湖の島
メアちゃんを背中におんぶしたままカメに乗って、湖の中央部分にある小さな島に上陸した。
リズも後ろから着いてきた。
島は全体的に木々が生い茂っているが、上陸したところは芝生になっていて座ってひと休みできそうだ。
「ここに座ろうか」
周りに生えている木がちょうど陰になっているおかげで暑くもなく、葉の隙間から射し込む光は温かく体表の水分を取り除いてくれる。
時折風が吹き、葉とともに光が揺れ動く。
濡れた髪を静かに撫でて乾かしてくれる。
「お疲れさまーみんな」
「うん。よくやったね」
「エルフィー、リズっち、たおしてくれてありがとう」
「半分くらいはメアのおかげだよ。
一番最初に大きな穴を開けられたからこそ次の攻撃の威力が増した。
というか、メアは大丈夫?
直接攻撃受けてたよね」
「ちょっといたむけど、こうやって休んでればいたみもひくとおもうな」
「何もしなくて大丈夫なのー?」
「いま体中の魔素をいたいところにおくりこんでる。
しばらくすれば治るはずだ」
「魔素治療か。確かに有効かもしれないね」
「魔素はあると何かと便利だねー」
「ふふ、ヴァンパイアのとっけんだな」
「うん。活用していいと思う」
「それでさー、リズが攻撃に使ってたあの丸いやつの制御凄かったねー。
矢がギリギリ通れるくらいの大きさの通り道を作れるなんて!」
「上手くいってよかった。エルフィーの矢の軌道が読みやすくて助かった」
「そういえば一直線にしか飛ばないって言っておいたもんねー。まさかこんな些細な一言が大事になってくるなんて」
「何かと情報は大事になってくるからね。
そういった意味でゴーグルで通信できるようにしたのは発明だと思う」
「そうでしょー? やっぱり大事だと思ったんだよなー、情報共有が!」
「でもエルフィー、魔素語のいみわかってたの?」
「私たちは問題なく情報共有出来てたけど」
「えー、うん。もちろん。制作者ですから。
ゴーグル作ったの私ですから」
「
「リズっち。流石にメアもわかんない」
「私も文章が合ってるか分からない」
「じゃあなんで言ってみたんだよー。
また仲間はずれにされるのかと思ったじゃんー」
「また……?」
「ああもう! リズ鋭い!
魔素語分かんなかったよー!
絶対に試験までにヘヴリ語で出来るようにしてやるから!」
「いい心意気だ。私もヘヴリ語の方がいいよ」
「魔素語ではなしてると魔物みたいだもんね」
「二人とも魔物だと思ってたよー」
「使ってる単語はそんなに難しくなかったとは思うけどね」
「うん。神秘的だねとか、魔素語でもはなせてよかったねとかしか言ってないよ」
「エルフィーだって会話してたじゃん。
「あれは適当に送ってただけだってー。
言わせるなよー恥ずかしいー!」
「これは早急にヘヴリ語の対応が求められるね」
◇
「だいぶいたみもおさまってきたかな」
「おお、回復早いねー」
「もともと水の中でしょうげきもそんなにつよくなかったからな」
「それでエルフィー、この島からどうやって帰るの?」
「あははー、どうしようねー」
「もしかして、また二時間くらいカメに乗るの?」
「それしかないよねー」
「……まあそんな気はしてた」
「このまま帰るのもったいないし、メアちゃんが動けるようだったら島の探索でもしない?」
「いいぞ。メアもう動けるぞ」
「滅多に来れないからね、ここ。
それに魔物討伐練習で魔物が守ってるくらいだから何か置いてあってもおかしくない」
「それじゃあ、エルフィー討伐部隊改めリズっち探検隊、探検開始ー!」
「おー!」
「あ、今回は私なんだ」
芝生から林に続く道が伸びていた。
整備されているようには見えないが人が通れるくらいの通り道が出来上がっている。
しばらく道なりに進んでいると石畳が現れた。
「なにかこの先あるのかな」
「ね。急に石が置かれ始めた」
「わくわくしてきたぞ」
石畳を辿っていくと石で作られた構造物がそびえ立っていた。
八本の石柱が四角形に並べられて屋根となる大きな石を支えている。
柱や屋根の側面には模様が刻み込まれていて文明を感じさせる。
地下に続いているような階段があり中は真っ暗だ。
「これは遺跡ー?」
「石でつくられてるな」
「地下に繋がってるっぽい。
こんなものがあるんだ」
「どうしますかリズっち隊長!
進みますか?」
「どうするリズっち?」
「うん。進んでみようか。
学院内だし罠ということも少ないでしょ」
「でも暗いよー?
光魔法とかある?」
「エルフィー、これこれ」
リズが私のおでこの方を指さす。
「あー! ゴーグル!
すっかり忘れていたよ」
「頭に着けてるのに……」
「魔物がいてもこれならすぐ分かるねー」
ゴーグルを装着して、入口に足を踏み入れる。
一体どんなものが待ち受けているんだろう。
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