第19話 魔創部準備室

 放課後になったので、担任のレナータ先生に目安箱を置いても良いか話をしてみる。

 

「え? いいわよ〜」

 

 二つ返事で大丈夫だった。

 

「ああでも、生徒会の許可が必要かも。学院側は問題ないってことよ〜」


「分かりました! 生徒会の人に話してきます!」


「うん、がんばって〜」

 

 職員室のある一年生の教室棟から、二年生の教室棟につながる連絡通路へ向かう。生徒会室はここの一階だ。

 

「失礼します」


「どうぞ」


「私、一年Dクラスのエルフィーといいます。

 今日は魔導創作部で作ったものを学院内に置きたくて、その許可を取りに来ました」


「ああそうなの。じゃ会長呼ぶからちょっと待ってて」

 

 狐の耳を生やした女子の先輩が対応してくれた。

 銀色っぽい水色の髪色で、魚が好きなのかずっと魚のおもちゃで遊んでいる。

 生徒会の人って普段何してるんだろう?

 

「待たせたな。エルフィーか」

 

 まったく待っていない。ものの数秒でキバマキ会長が現れた。

 

「はい。私、昨日魔創部で目安箱を作ったんです。

 それを食堂の入口に置きたくて、その許可をもらいに来ました」


「そういえば昨日なんか作っていたみたいだな。あれは目安箱だったか。

 食堂前なら、魔創部のスペースも余ってるし置いて構わない。

 このシールを貼ってくれれば生徒会が認めたものになるから、見えるところにつけておいてくれ」

 

 そう言うと、小さな生徒会のマークが入ったシールを何枚か渡された。

 

「分かりました! ありがとうございます!」

 

 生徒会をあとにして、部室へ急ぐ。

 

「こんにちはー」


「こんにちは、エルフィーちゃん」

 

 ミラ先輩が挨拶を返してくれて、部室の片隅を見るとキバマキ会長が作業していた。

 私の知らない隠し通路でもあるのかな?

 それとも、何人かいるのかな?

 リズとメアちゃんがいつもの机にいたので私も向かう。

 

「ああ来た」


「エルフィーおひさしー!」


「お昼ぶりだね、メアちゃん!」


「その手に持ってるのは……」


「これは生徒会の許可シール。これをつけたら置いていいんだってー!」


「なるほど。実際に見てないのにそういうの貰えるんだ」


「それは多分、キバマキ会長が昨日のを見てたからかな?」


「確かに」


「じゃあ、これを貼って……。置きに行ってくるよ!」


「私は魔導書作ってくる」


「メアも置きについてく!」


「うん。じゃまた後でね、リズ」

 

 ◇

 

 食堂に目安箱を置き、部室へ戻ってきた。リズはいつもの仕切りのついた机で黙々と本と睨めっこをしている。

 

「悩み事たくさん集まるといいなー」


「そうだなー。なやみごとは少ないほうがいいけどな」


「あははー、それもそうだけどねー。この後どうしようか? 目安箱にお題が来るまで結局作るものないなー」


「じゃあエルフィー、メアの作りたいもののおてつだいをしてくれない?」


「! もちろんいいよー!

 なにか作りたいものがあるの?」


「うん。お昼に、メアがお弁当つくってるっていったよね」


「うんうん」


「それで、あたらしい料理魔法具をじぶんでつくれないかなーっておもって」


「おおー、料理の魔法具かー」


「メアはあんまり思いついてないんだけど、なんか思いつく?」


「んー……。料理用の魔法具……フライパン。空飛ぶフライパンとか?」


「あはは、おもしろいね」


「えっとえっとー、ダジャレとかじゃなくて、本当に空飛ぶフライパン!」


「ほうほう、どんなものなんだ?」


「フライパンって、ずっと火に当てとかないといけないじゃん?

 だから、フライパン自体が熱くなる魔法具にするの!

 そうしたら、コンロに置く必要もなくなるから正真正銘空飛ぶフライパンになるわけだよ!」


「なるほど! どこでも料理ができるようになるんだな?」


「そうそう、本当に浮かせてみてもいいし、外でも目玉焼きとか作れるようになるかも!」


「いいね! メア、それつくることにした!

 エルフィーありがとう」


「いいってことよー。時間もあるし、早速作ろうか!」


「うん。だとしたら、フライパンがひつようになるな」


「それはそうだねー。フライパン、作る……?」


「ええ、メア、鉄はまげれないよ?」


「そうだよねー。他の魔創部の人たちって色んなもの作ってるけど、こういうのってどこから持ってくるんだろう?」


「メアもわかんない」


「ミラ先輩に聞いてみようか」


「そうしよう」

 

 大きな額縁を眺めながら腕を組んでいるミラ先輩に声をかける。

 

「ミラ先輩。作業中すいません。聞きたいことがあってー」


「お、エルフィーちゃんにメアちゃん!!

 なになに、どうしたの??」


「私たち、フライパンで魔法具を作りたいんですけど、例えばその額縁とかあの先輩が作ってる時計って、やっぱり家から持ってきてるんですか?」


「ああこれはねーって、まだ説明してなかったっけ!!」

 

 ミラ先輩は手を合わせて頭を下げてくる。

 

「ごめんね!! 完全に忘れちゃってた。魔創部準備室の説明!!」


「準備室、ですか?」


「うん!! ついて来て!!」


 ミラ先輩が魔創部の部室の一番後ろにある扉を開ける。

 この扉は以前から気になっていたが、なかなか聞けずにいた。

 まさか準備室なるものに繋がっていたとは。

 

 準備室に入ると中は薄暗く、窓からの光だけが部屋を照らしていた。

 高い棚が四つほど立ち並び、棚には小さな石から大きな石、木材の切れ端や布切れなどが乗せられていて、さながら倉庫のようであった。

 壁際には机があり、その上には瓶や壺、額縁や宝石のようなものが置かれていた。

 

「ここが準備室。素材倉庫みたいな感じだね!!

 部員が家の要らないものとか道端で拾ったものなんかを全部持ってくるから、こんなにたくさんあるんだよね。

 でも制作の役に立つかなと思って、こうやって保管してあるんだ!!」

 

 机の下の箱には時計やぬいぐるみ、お目当てのフライパンや鍋なんかも入っていた。

 

「すごいですねー……。こんなにたくさん」


「この宝石とかこのままうれちゃうんじゃない?」


「うん。エルフィーちゃんもメアちゃんもここの物は自由に制作に使っていいからね。

 そして、要らないものとか使わなくなったものはここに持ってくれば、誰かが何かで活用してくれるかもね!!」


「分かりましたー! ありがたく使わせていただきます」


「フライパンあったぞエルフィー! これでつくれるな!」


「そうだね。それを一つ貰っていこうか」


「どうぞどうぞ!!」


 ミラ先輩はそのまま素材を見ていくというので、私たちは机に戻る。

 

「それじゃあフライパンも手に入れたことだし、改造していこうかー!」


「おー!」

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