第11話 ダンジョン協会





「あっ、七瀬さんですね、急な連絡でしたのに今日中にお時間取ってくださり、大変ありがとうございます」


 俺は結局、今日は全く予定がなかったため、家から一時間くらいで行ける渋谷のダンジョン協会本社に足を運んでいた。

 クソでかい高層ビルに入り、受付の人に名前を言うと挨拶をしてくれた。


「いえいえ、こちらこそ突然、今日中にそちらに伺うなんて申してすみません、そちらも色々とお仕事あったでしょうし」


「大丈夫です、今からでもと言ったのは私たちですので……では、立ち話もなんなのでどうぞ、中にお入りください」


 そう言って、受付の人は他の人に仕事を任せ、俺を20階の個室に案内した。


「一ノ瀬様、七瀬様を案内しました」


 中に入るとそこは応接間であり、部屋のところどころから気品が醸しでている。

 そして、対面の椅子には一人の女性が座っていた。


「おっ、来たかい? 急なお願いだったとはいえ今日はよく来てくれた、感謝するよ」


「いえいえ、こちらこそ急に伺ってすみません」


 その人はバリバリのキャリアウーマンと言った感じの人であり、きちっと着こなされたスーツからは誠実さが溢れ出ている。


「自己紹介がまだだったね、私は一ノ瀬菜緒、ダンジョン協会の事故・違反調査部の部長だ、よろしく」


 そう言って、彼女は電話番号などが書かれた名刺を差し出してきた。

 え? ダンジョン協会の部長ってかなりすごいのでは?

 それに事故・違反調査部といえば凄腕と噂の人たちではないか。


「だ、ダンジョン配信者の七瀬です、すみません、そのような名刺は持っていなくて……」


「いやいや、大丈夫だよ、私はそんな堅苦しいものはあまり気にしないから」


 そう言って、一ノ瀬さんは優しい笑顔を見せた。

 なるほど、フランクな感じで関わりやすい人だな。


「まず、スタンピードを抑制してくれてありがとう」


「え? あ、いえ、自分は当然のことをしたまでで……」


「いやいや、あそこでモンスター達に立ち向かう判断をした勇敢さには感動したよ、おかげで市民の避難させる時間を確保でき、今回のスタンピードは死者がゼロ人だったのだから」


「は、はい、それならよかったです」


 なるほどな、今日の呼び出しはスタンピードを抑制してくれたことの感謝ってやつか? 

 だが、それだけであのダンジョン協会が急に人を呼び出すだろうか?


「ああ、おかげで前回のような悲劇が起きずに済んだよ、日本の死者数ゼロは君によって守られた」


「は、はい」


 俺ははい、としか返答が思いつかず、はいはいbotと化す。


「まあ、それはそうとして……七瀬君、君はダンジョン協会が出す探索許可証無しに中層に入ったね?」


「はい……え? あっ、」


 やべえええ!!

 忘れてたわ、ダンジョン探索にはそんなのがいるんだっけ。

 コメント欄でもあんまり流れてこなかったから忘れてた……。


「本来なら法律違反だから5万円の罰金と1週間から1ヶ月の間、探索者証の凍結をするんだけど、流石にスタンピードを止めてくれた英雄様にそんなことをするわけにはいかない、だから条件付きで今回のことはなかったことにしてあげるよ」


「ま、マジですか!」


 流石にダンチューバーに探索者証の凍結は辛すぎる。

 せっかく、この前のことがあって同接や登録者数が増えたのに法律違反とか洒落にならない。


 だが、という言葉がやけに気になった。


「その条件の一つ目が君が入手した呪剣の解析だ、その呪剣は嫌な予感がしているため研究部で解析させて欲しいんだ」


「えっと……残念ながらこの剣は俺の手元から離れないんですよ」


 俺はカバンの中に入れていた剣を取り出した。

 一ノ瀬さんは一瞬、驚いたような顔をする。


「君は現在、 銃刀法違反をも犯したね」


「しょうがないんです、体から離れないんですから……」


 俺は試しに鞘に入ったまま剣を机の上に置いてみた。

 だが、案の定、剣は俺の手元まで戻ってくる。


「これは……大変だね、お風呂とかはどうしているの?」


「そんなの左手で持ちながら入ったに決まってるじゃないですか、嫌でも離れてくれないんですから」


「……う〜ん、これはかなり難しい現状のようだね、わかった、その剣に関しては七瀬君が管理しておいてくれ、七瀬君ごと解析の魔道具に入れるわけにはいかないからね」


「了解です」


 一ノ瀬さんは諦めたような表情をし、何かをパソコンに打ち込んだ。

 俺が剣をカバンの中に仕舞い終わると一ノ瀬さんは口を開く。


「それで二つ目の条件なんだけど――」


 それは驚きの一言だった。

 まさか、そんな言葉がダンジョン協会、事故・違反調査部の部長から発せられるとは思ってもいなかったのだ。


「探索者リノと七瀬君の関係について教えてほしい」


「え? リノさんですか?」


 そんなことでいいのかと俺は軽くリノさんとの関係を一ノ瀬さんに説明した。


「リノさんは昔からの視聴者さんで時々、SNSのDMで連絡を取ることはありましたけど、リノさんが下層探索者だと知ったのは最近ですね」


「そのDMでは何を?」


「えっと……探索に関する知識とかモンスターの弱点とかですかね、それがどうかしましたか?」


「いやいや、なんでもないよ、質問にも答えてくれたことだし、今回の違反は見逃すことにするよ」


「あ、ありがとうございます!!」


 条件が簡単でよかった。

 こうして俺は晴れて無罪の人間?になり、配信できるようになったことを喜ぶ

のであった。







『探索者リノにテロを計画した容疑がかかっている』


 そんな速報が俺の耳に届くまでは。





――――――


【追伸】

ただの無双系にしようとしたのですが、AIでも書けるような王道を書くくらいならと思い、ちょっとだけオリジナリティを出したところ、こんな感じになってしまいました。なるべく早めに軌道修正しますのでどうか、見守っていただければ嬉しいです。


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