第25話 ななせん、寝てる?



「おいおい、この配信者面白いぞ、規格外なことで有名になったかと思えば今度は堕天使みたいな奴と漫才してやがる」


 金髪緑眼の欧米人顔の男が笑いながらスマホをもう友人に見せる。


「お前はまたそんなの見てるのか、いい加減仕事に集中しろよ」


 男の友人は呆れ顔でスマホを手で払う。


「おいおい、こいつはマジでクレイジーな奴なんだぜ? ドラゴンをぶっ飛ばしたと思えばスタンピードも潰しやがった、少なくとも下層探索者の中でも上位くらいの実力はある」


 だが、男は興奮気味に友人に話しかける。


「だがな? 俺たちは下層探索者どもよりも上の深層探索者だぜ? 俺もその配信は見ていたがそいつからは下層探索者程度の実力しか感じなかったよ、レゾス」


 友人は男をレゾスと呼んだ。

 そう、この男こそが世界で5本の指に入るほどの実力者であるレゾスだった。

 そしてその友人――如月きさらぎ武尊たけるも日本最強と呼ばれる探索者である。


「お前はいつもそうだな……でもこんな命知らずな奴は中々いないぜ? 俺はこいつが死ぬまで見続けるつもりだ」


「それは……こいつがすぐ死ぬと思ってるからか?」


 武尊は厳しい目でレゾスを見ると――


「ああ、こんなダンジョンに潜る目的も碌にない癖に無謀なことをする奴に未来はないぜ? 俺はこういう引き際を知らない馬鹿が死んでいくのを何回も見たからな」


 レゾスはあっさりとそう言う。

 実は彼自身も無謀なことをする人間だった。

 だが、あることがきっかけで彼は変わったのだ。


「まあ、中層までは送還システムがあるから死なないからな、下層に潜った時が問題だな」


「ああ、楽しみだぜ」


 そう言って二人の最強探索者は七瀬がこれからも活躍し続けれる探索者となりうるか見極めるのであった。



 ――――――――


 スレッド:七瀬とかいうダンチューバーについて 4


 1 スレ主

 さてと、このスレも4個目か


 2 スレ主

 今日あったことの振り返り


 七瀬がダンジョン内で謎のトラップに引っかかり、白綾も一緒に変なギミック部屋に飛ばされ、そこで堕天使さんと出会う。

 ざっとこんな感じか?


 3

 後、七瀬が堕天使さんをボコボコにした


 4

 どゆこと? 配信見てないからよくわかんないんだけど、ボコボコにしたって流石に嘘だろ


 5

 >4 嘘じゃないぜ? 七瀬は言葉で堕天使さんのメンタルをボコボコにしてた


 6

 >4 それが本当なんだなぁ


 7

 そもそも堕天使とか天使とかがこの世界にいることがまず驚きなんだが


 8

 >7 まあ、ドラゴンがいるんだし今更だろ


 9

 じゃあ神っているのか?


 10

 >9

 いるんじゃね? 天使がいるんだろ?


 11

 >8 それでもかなりの大発見だと思うけどな……ww


 12

 配信のアーカイブ見てきたわ、マジじゃねえか!!


 13

 これ、普通にテレビで流れるんじゃない?


 14

 >13 流れるだろうなぁ……でもなんか嫌だわ


 15

 >14 ちょっとわかる


 16

 七瀬が段々遠くなっていく……


 17

 メン限とかにしてくれてもいいのに


 18

 >7 お前らなんだかんだ言ってるけど既に天使の存在はアメリカの探索者クランが発見してるぜ? まあ、一瞬で滅ぼされたみたいだが


 19

 シカゴダンジョンの深層ボスだったっけ?


 20

 >18 なんだ


 21

 でも堕天使の発見は初めてだからちょっと話題にはなるかもな


 22

 普通に白綾について誰も触れないの草


 23 スレ主

 白綾の話題すると信者湧くからなあ


 24

 楓ちゃん今回何にもやってなくね? 足手纏いなだけじゃん


 25

 >24 やめとけ


 26 スレ主

 >24 白綾でも七瀬でも誰の視聴者でも過激な奴は好かれないぞ


 27

 >24 楓ちゃんは癒し担当だからいいんだよ


 28

 >27 草


 29

 てかさ、七瀬もまだ覚醒化してないだろ? そんなに強くなくね?


 30

 >29 いつから強さの話になった?


 31

 >29 覚醒化はまだ中層探索者なんだしいいだろ、普通、下層探索者になってから覚醒化させるんだし


 32

 >31 でも最近じゃ中層探索者でも覚醒化してることもあるんだぜ?


 33

 覚醒化ってなに?


 34

 >33 マジか


 35

 >33 流石に知らんのは不味くね? 覚醒化っていうのは探索者がある程度、経験値を貯めると身体能力が爆上がりしたり、素質がスキルっていうのに進化したりするやつやで


 36

 まあ、めんどくさいからスキルって呼ぶやつは少ないけどな


 37

 >36 うるせ、ロマンだろ


 38

 まあ、覚醒化うんぬんは政府が謎に情報を隠してたりするからよくわからんな


 ――――――



「ななせん、寝てる?」


 俺が顔を上げるとそこにはリノが居た。


「ごめん、邪魔した?」


「いや、大丈夫ですよ、そろそろ講義だから心配してくれたんですよね」


「そう」


 するとリノは短く相槌を打つ。


 俺はあれから普通に大学に通い始めていた。

 初めは俺が七瀬だとわかるとファンの人などが押しかけてきていたが今ではかなり落ち着いた。


 まあ、あれはあれで人気者になった気分で少し嬉しかったけどこれくらいが一番丁度いい。


「ななせん、そういえばなんだけど今度、コラボ、しない?」


「コラボ? 俺と?」


「うん、コラボ。ななせんはまだ、中層までしか潜れないでしょ? 私、この前覚醒化した、だからななせんも連れて下層に行ける」


「ええっと……」


 確か覚醒化?を遂げると下層探索者は中層探索者を同行させることができる制度があるんだっけ。


「大体わかった、でもいいの? 俺なんかで」


「うん、ななせんは強いから大丈夫」


 そこまで話したところで教授が講義室に入ってきた。


「じゃあ、詳細は、また後で話す」


「了解!」


 下層か……。

 俺は期待を含まらせ、講義を受けるのであった。




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