飛ぶ船

「船が引き返すことがある」


 皆様、旅の途中でそんなことを聞いたことがありますか?

 着岸が厳しいところでは、目の前まで行って泣く泣く諦めることもあるようですね。船旅は楽しいですが、そういうリスクもあります。


 沖縄に行った時のこと。宿で、「伊江島はいいよ」と聞きました。那覇にいたのですが、調べると直通の船がある。早起きした私は那覇の港、「とまりん」へと向かいました。


 で、その時から異変はありました。港にテレビ局が来ていたのですが、「毎朝ここから中継してるのかなー」なんてのんきにしてました。波が道までかかってますが、「そんなこともあるかなー」なんて思ってました。

 年に数日の珍しい出来事だったようです。満潮に合わせて波も高く、大変な日だったようです。


 那覇-伊江島間の船は小さく、乗客は十人ほどでした。


「天候によっては引き返すこともあります」


 出航前にアナウンス。ふむふむ、まあそれは仕方ない、と思っていましたが……


 跳ねる跳ねる! さらに飛ぶ! 揺れるというのは想定していましたが、高い波をジャンプ台のようにして宙を舞うことがあります。しかも、そんな状態を十数分続けてもまだ「沖も荒れていたら引き返す」とか言ってます。これで帰ってきたら、時間の長いアトラクションです。


 観光客らしき人たちはみなぐったりしています。地元のおじいたちは平気そうでした。


 結局何とか乗り切り、船は伊江島に向かいました。十数分遅れで到着。一泊して那覇に戻ることになるのですが、帰りは陸路を選んだのでした。


 ちなみに再び伊江島を訪れた時は、台風が近づいており「明日のフェリーは午後欠航です」との島内放送が。観光もそこそこに沖縄本島に戻り、その台風に北部と那覇で遭遇し、なんと九州に戻ってきてからも再会します。同じ台風に三回出会う経験。


 旅は天候との勝負でもあります。いっそ一度は戻ってくる船にも乗ってみたいと思ったり思わなかったり。

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