耳に五百円

 子供のころ、隣の駅が競輪場の近くで、たまに帰りの人たちと電車で一緒になった。で、耳に五百円玉を入れている人がいるので不思議だなあ、何かのおまじない? と思っていたら、「帰りの電車賃まで使わないように、あそこに入れて残しておくんだよ」と教えてもらった。

 当時は「すごい世界だなあ」と思っていたのだが、20年以上たって気づいたことがある。「帰りの電車に五百円玉入れたまま乗ってたってことは……あの人たち勝ってる!」(と思ったけれど、電車賃残るぐらいの負けかもしれない) 乗る前に取ればいいんだけど、思い出さないぐらいの存在じゃないと使っちゃうかもね。

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