祖父の言葉
大学院生になり祖父の見舞いに行った時、「哲学をやると聞いて期待していたのに、倫理学とはなあ」と言われた。真意はわからないが、孫の勉強に興味があったことはわかる。祖父は理系の研究者だったが、亡くなった後本棚を見たところ、哲学をはじめ文系の本が多かった。進路で迷った過去もあるのかもしれない。
祖父が猫を捨てに行った話を聞いてから、私はなんとなく苦手に感じていた。私もある程度は同じ血を受け継いでいるんだなあ、と考えた。顔も似ている。私の中に「猫を捨てる血」が流れているとしたら、周りの人を悲しませることもあるのではないか。
今、感じる事がある。「哲学だったかなあ」私が倫理を学ぶことになったのには、紆余曲折がある。元々あまり人間には興味がなかった。今もある方とは言えない。だからこそ見えるものがあるとは思っているが、哲学を選んでいたら、祖父は喜んでくれただろうか。もっと研究を楽しめただろうか。いまの職がなくて、研究をやめていたかもしれないけれど。
入院している今、ベッドの上で研究のことを思索することはない。差し入れてもらった関係のない本を読んでいる。祖父は入院中何を考えていたのだろうか。
実はねじいちゃん。物理や化学を勉強しなかったことを後悔してるんだよ。今からでも勉強しようかと思ってるんだ。じいちゃんも天国で、哲学の本を読んでいるのかな? 猫捨てたから地獄かな?
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