キリンが怖かった

 子供のころ、擬人化した動物キャラが怖かった。

 まだ元の動物の特徴が残っているならばともかく、顔だけ挿げ替えたようなキャラは違和感だらけで、見てはいけないものを見ているような気がした。

 特に、キリンのキャラが怖かった。本当ならば、何メートルも首があるのだ。それをぐっと縮められて、手足も縮められて。


 ライオンもクマもサメも、本物は怖いことをみんな知っている。私は、キリンも本物はもっと怖いのではないかと思った。実際脚力はすごいし、首をぶつけて争うこともあるらしい。それなのにみんな、かわいいキリンさん、と言っている。本当はあいつもすごい怖いかもしれないぞ、と思っているうちに、一番怖い動物になってしまった。

 初めて見た本物のキリンは、思い込みもあったせいか、やっぱり怖かった。ライオンやクマは頑丈な檻に入っているが、キリンはそうでもないように見えた。逃げ出したら、みんな勘違いしている分キリンの方が大変なことになるんじゃないか。キリンの方が大きいし、首も長いから、麻酔銃がなかなか効かないかもしれない。その間に蹴られでもしたらひとたまりもない。


 大人になったら、特別キリンが怖いということはなくなった。しかし動物園で間近に見ると、でかくて余裕があって、やっぱり怖い。

 幸いにも、キリンはこちらから会いに行かなければ遭遇することはない。それほどキリンのキャラもいない。しかし「キリンが怖い子供がいるかもしれない」と、覚えておいてもらえると嬉しい。



 

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