第52話 侵攻? 友好?
「お休みだったのに、呼びつけてごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ留守にしておりました。申し訳ございません」
「何を言うのです。ジル、パッセ、あなたたちにも休息は必要です」
女王は穏やかに言う。
「それで、用件は……」
ジルは不安げに言う。
「アローニの二人も、もうすぐアローニへと帰ることができそうです」
「そこへ兵を放つ、とでも?」
ジルは苦笑いしながら言う。
「そんな野蛮な真似をする必要等ございませんよ」
女王は冷たく言う。
「ジル、まるであなたはハーヴィッシーズにような考えをお持ちね」
「いえ。そんなことは……」
ジルの表情は暗い。
「私は、アローニとは友好的な関係を育てたいと思うのですよ。ルーテの事もありますから」
「ルーテの事……?」
「聞いたのでしょう? ルーテから報告が入っているのですよ、ジル、パッセ」
二人は少し驚いている。
「ど、どういった報告でしたか?」
「なぜ、あなた方が報告を気にすることがあるのです?」
女王は不思議そうに言う。
「まあ、ルーテの報告はいくつかございましたが……、出生の秘密をジル、パッセ及び、捕らえたハーヴィッシーズのリサ、そしてロニーとレイチェルには公表した、と」
「確かに、そう言っておりましたね……」
「ルーテの事を知っていながら、そう言うとは……、ジル、あなたは本当にジルなのですか?」
女王の目は冷たい。
「しかし、領土拡大としては……」
「友好的な関係を築く、それだけで十分でしょう!」
女王ははっきりと言う。
その姿は、先代の女王、王とはっきりと重なる部分がある。
ジルとパッセも、小さい頃先代の女王や王に仕えた時期があった。
だからこそ、脳裏でその姿と重なる部分がある。
「そして、あなたたちを呼んだのにはもう一つ理由があるのですよ、ジル、パッセ」
「女王陛下……?」
パッセは怯えたように言う。
「あなた方には、疑いがあるのです」
「う、疑い……?」
「まさか……」
「ええ、そうです」
女王ははっきりと断言する。
周りは衛兵が囲っている。
「信じたくはありませんが……、あなた方がハーヴィッシーズであると言う疑いがあります」
衛兵たちはじりじりと近寄ってくる。
パッセは震えながら、ジルの腕を掴んだ。
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