第32話 手紙

楓香は手紙を書いている。

シーナは機械の数値を見てウンウンと唸っていた。

「これでよしっ!」

楓香は手紙を封筒に入れる。

「手紙、もう書けたんだ?」

「うん、第隊の内容は考えておいたから、書くだけだったのよ」

「へぇ、さすがだね」

「さてと、これを……」


「ちょっと待って!」

シーナは楓香が鍵を置こうとするのを止めた。

「え?」

楓香は手を止める。

「これを鍵につけて」

それは、キーホルダーのような形の物だった。

細いチェーンと振り子のような物が付いている。


「これで、もしかしたらたどり着けるかもしれないけれど……」

シーナは少し心配そうに言う。

「そ、それじゃあ、鍵を置きますね?」

「ええ、お願い」

楓香は恐る恐る鍵を手紙の上に置く。


もし、楓香たちのいる日本から、アローニへ送る場合だと手紙はそのまま転送されていく。

だが、手紙は特に変化がない。

「やっぱりダメだったかしら……」

シーナは落胆した。


その時だった。

「お、お姉ちゃん! 手紙の端っこが……!」

「あ、うっすら透明になってる……! もしかしたら、ロニーに転送できるのかもしれませんよ!」

シーナはその声に、ホッとしている。


「良かったわ。さてと、これが届いたら……!」

「もしかして、さっきのキーホルダー的なものは……?」

「ええ。座標を調査するために付けてみたんだけど……」

シーナは心配そうに言う。


「お姉ちゃん、まさかとは思うんだけどさ……」

「うん?」

「まさかロニーの家に転送されていたりしないよね?」

「ど、どうだろう……?」

さすがに楓香も不安になってくる。


「それは大丈夫そうよ」

シーナは画面を見ながら言う。

「アローニ内にマークはないのよ」

「マーク?」

「ええ、あの振り子には特殊な仕組みを施しておいたの。追跡ができるようにね。それで、このモニターにそのマークがないから、アローニに届いているということはないわ」

「なるほど」


ビーッ! ビーッ!

突然、モニターから大きな音がする。

「な、なに?」

「どうやら、ロニーの元に着いた様ね」

シーナは安心したように言った。


ところ変わってハーバティ

「いてっ!」

ロニーは頭に物がぶつかる感触で思わず頭をさする。

「どうしたの?」

「なんか当たった……」

ロニーはキョロキョロと地面を見渡す。


「あ! これ……手紙だ!」

「え?」

レイチェルは驚いて手紙を見る。

「一体どこから……?」

パッセも不思議そうに言う。


「クンクン……、あ、これは……!」

「どうしたの?」

レイチェルはロニーの行動に思わず質問する。

「間違いない! アローニからの手紙だ!」

「あ、アローニから!?」

レイチェルとパッセは驚いたように顔を見合わせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る