第46話 目覚め

「ルーテったら、優しい顔して寝ているのね」

母はルーテの顔を見てホッと知る。

「普段はそうじゃないくせに……」

ムス、としながらルークは言う。

「まあ、そうなの?」

「いつも寝てる時、眉間にしわ寄せて寝てることも多いよ? 僕、部屋が同じだから」

「まあ! そうだったのね」

「あまり騒いでやるな。ルーテも疲れているんだろうから、ゆっくり休ませてやろう」

「そうね。実家に帰ってきた時くらいは……」

母はそう言って、カップを下げる。


「……ん……」

ルーテはゆっくりと目を開く。

「ルーテ、疲れているんだろう? 部屋で寝ると良い」

「うん……」

まだ眠たそうな顔をしているルーテだが、素直に頷く。


本当は、父にモカのことを聞きたかったが……、ルーテはどっと襲ってきた、日頃の疲労でそれどころではなかった。

「ほら、兄さん!」

ルーテはルークの手を取る。

ルークは明るい表情でルーテを部屋に連れて行く。


「良かったの? 話さなくて」

「ああ。今はルーテを休ませてやりたいんだ。普段、気が抜けない性分だろうから、家ではせめて、ルーテをゆっくり休ませてやろうって思うんだ。モカと同じ、頑張り屋だからな」

「そうね……」

「また、時期が来たら話してやろうと思うんだ。ルーテの従兄弟について……」

「ええ、きっとルーテはそれを望むと思うわ」


「……ふぁ」

部屋が付くと、ルーテは思わず気が抜けてあくびをする。

「兄さんもあくびするんだね……」

「俺をなんだと思っているんだ……」

思わずルーテはルークに突っ込む。

「父さんがゆっくり休めってさ」

「そっか……、ありがと……」

ルーテはベッドに身を投げる。

「……落ち着く……な……」

そのまま、ルーテは寝そうになっている。

「わぁ!? 兄さん、布団かけて!」

ルークはすでに目を閉じていた。

「もう! 仕方ないなぁ、兄さんは」

ルークは布団をルーテにかけた。


「いつもお疲れ様。ゆっくり休みなよ、兄さん」

「……ルーク」

ルークは思わぬ言葉に立ち止まる。

「え?」

「……ありがとうな」

「そ、そんな、なんか照れるよ!」

ルークは思わず逃げるように部屋を出る。


「びっくりして逃げちゃったけど……、僕が兄さんを支えなきゃ! だって、兄さんの弟なんだから!」

ルークは決意を新たにする。

今回、実家に帰って正解だった、とルークは心から思うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る