第28話 義弟の活躍

「本当に……、リサが……!?」

パッセは信じられない、と言わんばかりの顔で言う。


「……どうして」

「最初は信じたくはなかったさ」

ルーテは冷たく言う。

「確証が持てたのは、みんなで作った焼き菓子を配った日だ」

「まさか……」

リサは驚いたように言う。


「……見たんだよ、隠しきれていなかった、薬剤のボトルをな」

「薬剤……?」

「ああ。Herbicideがよく使うと噂になっている、『ラ・コール』というラベルの張ってある物だ。まあ、今頃探しに行っても見つからんだろう」

「まさか……」

リサは動揺した声で言う。


「ルーテ兄さん、持ってきた」

「ああ、助かったよルーク」

「ルーク、なぜあなたまで……」

「ごめんね、リサ。僕は君の証拠を探るのに一助していたんだ」

ルーテに雰囲気の似た、だが20そこそこくらいの男・ルークが明るく笑って言う。

ルークのその手には、ハンカチで包まれてはいたがルーテが言った通りの薬剤のボトルがある。


「ルーク、ご苦労だったな」

「役に立ったかな? 兄さん」

「ああ、助かった」

ルーテはルークを笑顔で褒める。


「え? 兄弟なの……?」

ロニーは戸惑ったように言う。

「今気にすること……?」

レイチェルはロニーに突っ込む。


「ルークは俺の弟だ。血は繋がっていないけどな」

「兄さん、リサが……!」

「……バレてしまったのなら仕方ない!」

リサは咄嗟に逃亡を図る。


「待て!」

ルーテとルーク、パッセとジル、ロニーとレイチェルはリサを追いかける。

「ルーク、ロニーは俺に付いて来い! パッセとジル、レイチェルはあっちから回ってくれ!」

「分かった!」

二手に分かれてリサを追い詰める作戦に出る。


「まるで迷路ね」

レイチェルは二人から離れないよう、必死に走りながら言う。

「庭の主な管理者はリサだったな……!」

「まさか、こんなに複雑な迷路にしていたなんて……!」

パッセは困ったように言う。

「知っていたのか?」

「遊びに来る子供たちを楽しませるため、という名目で小さな迷路を作るとは言っていたのですが……」

「先に言えよ!」

ジルはパッセに厳しく注意した。


平坦な道を走って、リサを先に追い詰めていたのはルーテとルーク、さらに少し遅れてロニーが辿り着く。


「もう……、しつこい!」

「俺たちには、あんたを捕らえる義務があるんでね。悪く思うなよ?」

「ふん!」

リサはルーテの腰ポーチから一本の細い瓶を奪った。


「あっ……! 待て、それは……!」

さすがにルーテはまずい、という顔をする。

「秘密を漏らすくらいなら、このまま……!」

リサは瓶の中身を口にした。


「兄さん、あれって……!」

ルークは困惑した顔でルーテを見た。

「……まあ、良いんじゃないか。一応、命に問題はないし」

ルーテは目をそらして言った。


リサは盛大に口から液体を拭き出した。

「な、何コレ!?」

「やっぱりこうなるか」

ルーテは苦笑いした。

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