第27話 不穏な夜

夜。

ロニーは満月に鍵をかざす。

「帰れるかな、アローニに……」

「やってみなきゃ、分からないわね」

レイチェルは不安そうに言う。

「もし、ダメだって他の方法を考えれば良いさ」

ルーテは励ますように言う。


「じゃあ、やってみるよ……」

ロニーは緊張した面持ちで言う。

さすがにいつも能天気でひょうひょうとしているロニーも、思わぬ大役に緊張してしまっている。


ロニーは恐る恐るだが、鍵を空にかざして、開錠するかのように鍵を回した。

「……どうだ?」


だが、何一つ変わった様子はない。

「ダメか……」

ロニーは少しがっかりとしたように言う。

「でも、もしかしたら、何かが変わったこととかあるかも……!」

レイチェルはロニーを励ますように言う。

「そうかなぁ?」

ロニーは怪訝そうに言った。


「いたぞ! 畑だ!」

男の声と複数の足音がする。


「な、なんだ?」

「あんたらが、まさか……!」

「ロニー、レイチェル、なんで……?」

ジルとパッセの声に、ロニーとレイチェルは状況がつかめない。

「なんでって、どういう……?」

「herbicideの一員だったんだろう?」


「いや。俺が見ていた。二人は違う理由でここにいるんだ」

「ルーテ……、でも、二人は怪しい可能性があるって……!」

「二人は純粋にアローニに帰る為、方法を試していただけだ。城陛下のお許しの元でな。俺が保証できる」

「……だが!」

「……ある意味異端な生い立ちだからな、俺も。信用できない、と言いたいんだろう?」

ルーテは寂しげに言う。


「そ、そう言うわけじゃないわ……」

パッセはうつむいて言う。

「そもそも、俺たちだってお前の生い立ちなど知らない。孤児院で育った、と言うこと以外はな」

「……俺の血は、半分ハーバティ、半分アローニだ、と言えばわかるか?」


二人はルーテをハッとした表情で見つめる。

それに、髪もいつもの暗い茶髪ではなく、金髪である。


「俺だって疑われたってかまわないさ。けど、ロニーとレイチェルは無関係だ! これだけは何度だって証言してやる」

「そ、それは……」

パッセは未だに動揺している。

恐らく、真偽と友情で揺れ動いているのだろう。


「それに俺は、確たる証拠もあって、herbicideの一人の尻尾は掴んでいる。そっちを捕らえて調べるほうが確実だろう?」

ルーテは険しい顔で言う。

「それは、一体……!?」

ジルは驚いたように言う。


ルーテは小さくため息を吐く。

「いつまで隠れている、もう出て来いよ……リサ」

「え?」

「リサが……?」


「ち、違っ……、私じゃ……」

リサは当然のように驚いて声が上ずる。

「悪いが、食用花の件から不思議に思って調べさせてもらったぜ」

ルーテはそう言って不敵に笑う。


「食用花のことは、自作自演だろう。元子役のアンタなら、あれくらいの演技はどうってことはない」

「で、でも、そんなことは……」

「他にも証拠はある。いくらでも話してやるさ」

ルーテは鋭い声で言う。

リサは潤んだ瞳でへたり込んだ。

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