第29話 確保!
ルークはその様子を呆れたように見ている。
「やっぱりそうなる、って何を仕込んだのさ……」
「ああ、あれは調合を失敗したビネガーだ。少しだけ食用活性炭のエキスを混ぜて色を黒くしておいてだな……」
ロニーは興味深そうにフムフム、と頷いて聞いている。
「なんて悪質な……」
リサは咳き込みながら悪態を吐く。
「人のポーチからかすめ取るような輩の言う言葉ではないだろうな」
ルーテは呆れたように言った。
「ルーテ、あなたって人は……」
リサはルーテを強くにらんだ。
「確かに、俺は料理長ではあるんだが、同時に衛生兵でもある。飲み薬の改良も仕事で請け負っているのも確かだが……」
「そ、そうだったんだね……」
ロニーは驚いていた。
「まだその仕事もしていたんだね……。毎回人体実験のお手伝いさせられたのが懐かしいよ……」
ルークは苦笑いしている。
「人体実験だなんて人聞きが悪いぞ。味見係、と言え」
ルーテは憤慨して言った。
「うう、まだ口の中が……」
リサはやはりあまり気分が良くないようである。
「さ、牢屋へ行くぞ」
ルークはリサの腕を掴んだ。
ジルとパッセ、レイチェルがそこへ追い付いてきた。
「大丈夫か、ルーテ」
「ああ、これから牢屋へと連行するところだ」
「そうか……」
「ジル、手伝ってくれ」
「あ、ああ……」
ロニーはそっと離れて、レイチェルやパッセとその場に残る。
「ロニー、あなたは……」
「ここはジルを立ててやろうと思ってね」
ロニーはにこりと笑って、シッ、と手で合図する。
その様子に、レイチェルは苦笑いしてパッセは両手で口を押えて驚いたような顔をしていた。
リサは救いを求めるかのようにジルへとそっと視線を送る。
だが、ジルはどうすべきか、と言わんばかりに返答しない。
「あれ?」
「どうしたの、兄さん」
「ロニーがいない!」
「ああ、ロニーならパッセたちと残っていたぞ」
ジルは様子に気付いていたので、ぼそりと言った。
「ああ、なるほどね」
ルークは何となく気付いた。
「どういうことだ?」
ルーテは不思議がって三人に聞く。
「多分だけどさ、パッセたちだけだと女の人だけで危ないから、ってことじゃない?」
ルークは閃いたことを言った。
「ああ、なるほど」
ルーテはそれで納得をしてしまった。
「多分違うと思うけどね……」
ぼそりと消え入るような声でリサは言う。
だが、その声は男三人に聞こえていなかった。
「ところで、頼みたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「牢屋に着いてからで構わないけど……、ハーブティーをいただけないかしら?」
「まあ、それくらいなら……」
ルーテは仕方ない、とすぐに承諾した。
「だが、なぜハーブティーなんだ?」
「口の中が……、まだトゲトゲした感じが残ってて……」
「ルーテ、何をした?」
ジルは心配そうに言った。
「あー……、話すと長くなるんだが……」
ルーテはそう言って言葉を濁す。
「まさか、リサに毒を……!?」
「ああ、違う違う!」
「ちゃんと話しなよ、兄さん」
ルークは笑って言うのであった。
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