第2話 国の名前
楓香と由佳はその声に聞き覚えがあった。
「シーナさん!?」
楓香の驚く声に、シーナは安堵する。
「良かった、間に合った様ね」
「こ、これは一体何なの?」
由佳は困惑しつつ言う。
「最近、アローニで増えている現象なの……。これから、私もその調査をしないといけないわ」
「これ、もしかして……。このロニーとレイチェルの失踪に何か関係があるのですか?」
「ええ、私もそう思っているところよ。きっとこれが関係している」
「じゃあ、私たちも……」
「ええ、お手伝いさせて、シーナさん」
「ありがとう、助かるわ」
シーナは嬉しそうに言った。
「そういえば、二人は休むところがないわよね? 私のラボにいらっしゃい。ロニーの家より狭いから、不自由はあるかもしれないけど」
「大丈夫ですよ」
由佳は笑って言った。
「ロニーの家が広すぎるだけですよ」
楓香も笑って言い、由佳、シーナも一緒に笑った。
ところ変わってロニーとレイチェル。
二人は、いきなり兵たちに捕らわれていた。
「ちょ、ちょっと、話をですね……!」
「歩けるから、放してって……」
二人はいきなりどこかへと連行される羽目となっていた……。
「あ、あのー……」
「なんだ?」
「これから、僕たちはどうなるんですかね?」
「それは行けばわかる」
その言葉に、ロニーもレイチェルも戸惑うほかない。
「あ、あの、まさかいきなり危害を……」
「そこまで野蛮なことはない」
さすがに付き添いの兵も苦笑いを漏らす。
「着いたぞ」
そこは、どこからどう見ても……。
「お、お城?」
「入れ」
二人は兵たちに引っ張られるように城へと入る。
「女王陛下、連れてまいりました」
「ご苦労様。命令があるまで下がりなさい」
「はっ!」
いきなり、ロニーとレイチェルは女王と謁見という形になった。
「あ、あの?」
「異国の方なのね。なぜあの場へと?」
「その、それには深いわけがありまして……」
ロニーとレイチェルは、女王へと理由を話した。
友人が遊びに来るから、買い出しへと行こうと思っていた矢先に穴へと落ち、気が付いたらここにいたのだと。
そして、元居た場所は『アローニ』という調香師たちが活躍している場だと。
「アローニ……? 聞いたことがありませんね……」
「え?」
レイチェルは驚いて声を上げる。
「ここは、ハーバティという国です」
「ハーバティ?」
お互いに国の名前を知らない。
ということは……!
「いわゆる、異世界ってやつですか?」
「可能性はあると思います……。しかし、なぜ異世界からあなた方が?」
「私たちの方が聞きたいですよ」
レイチェルは思わず小さくため息を吐く。
「まあまあレイチェル……。落ち着いて」
ロニーは穏やかにレイチェルを宥める。
「しかし、困りましたね……」
「どうなさったのですか?」
「あなたがたを、そのアローニへと帰る為のお手伝いをしたいのですが……、わが国でそういったことが起きたことが稀で、資料などがほとんどないのです!」
二人は思わぬ言葉に、フリーズした。
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