第10話 ポプリ
レイチェルは窓際に、ブーケにしたハーブを吊るした。
「これで後は乾燥させる、と」
「ドライブーケですか?」
「ええ、そうね。これをほぐして瓶にバラのペダルなんかも入れるとポプリみたいになるわ」
「バラの花びらの事ですか?」
「ええ、そうね」
「ハーブが乾燥したら、取ってきましょう」
「一緒にドライフラワーにしてしまっても良いと思うけど……」
レイチェルは庭を眺めて言う。
ハーブ園とはまた別の区画に、バラが咲き誇っている。
「でしたら、もらってきましょう!」
パッセは笑顔で言った。
「庭師のリサなら、良いバラをくださるかもしれません」
「そうなの? 傷んでいるバラでも良いのだけれども……」
レイチェルは少しもったいないような気がして言う。
「では、リサにお任せしましょう」
「ええ、そうね」
レイチェルはそう言って笑顔で飛び出して行くパッセの後を追いかけた。
「あれ? レイチェルどこに行くの?」
ロニーはレイチェルに声をかける。
「バラ園よ」
「じゃあ、僕も!」
ロニーも一緒にバラ園へと向かう。
「あ、おい……! さっき図書室って……!」
ジルは慌ててロニーを追いかける。
どうやら、本来ロニーは図書室へ行きたがっていたようである。
「それは後で!」
「後って……、ったく!」
ジルもため息を吐いて、ロニーたちを追った。
「リサー!」
「あら、パッセじゃない」
リサは背の高い女性である。
「あなたが来たということは、また花を見繕って欲しいってことかしら?」
「ええ! ぜひともリサにお任せしたいのです」
「良いけれど」
「ありがとう」
リサは花を見つめる。
「どういう人にプレゼントするの? それとも、何か作るのに作るのかしら?」
「ポプリの彩りにほしいのです」
「分かったわ。なら、そこで少し待っていなさいな」
リサはそう言ってパッセたちをガーデンチェアに座らせる。
「乾燥したハーブとなら、薄紫にオレンジ色、赤も良いわね……」
様々な色のバラを摘んで、バスケットに入れる。
だが、花はキレイだが外側が傷んでいるものを多めに選んでいた。
「お待たせ。花びらを一枚剥がしたら、キレイなものをメインにしたわ」
「ありがとう、リサ」
「もし、完成したら私にも見せてね」
「うん、約束よ!」
パッセは明るい笑顔で言う。
「レイチェル、もしかして?」
「ええ、ルーテにハーブをいただいたから、芳香剤を作ろうと思って。バラの花を彩りにするなら一緒に乾燥させてポプリにしても良いかな、って思ったのよ」
「いいじゃないか! あ、でも……、そこにラベンダーなんかあれば最高かも」
「ラベンダーは結構どんな香りとも調和する物ね……」
二人は少し寂しそうに言う。
「ラベンダーも植えてあるわ。少し持ってくるから、ここで待っていて」
「ええ、でも……」
「良いから」
リサは明るくウインクしてバラ園の奥に姿を消した。
「ここにはいろんなお花が咲いているの。リサを筆頭に管理しているのよ」
「そうなのね……」
「ハーバティの名物、食用花も育ててるの。そのうち、ルーテが出してくれると思うわ」
「そうなの……、どんな花かしら?」
「そうね……、例えば……」
パッセがそう言って話そうとした瞬間。
「きゃー! 何コレー!」
リサの叫び声が響き渡った……!
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