第40話 アフターティータイム 上

食後。

ルークは自分から食器を下げていた。

「助かる、ありがとう」

「兄さん、僕だって食器洗いくらいはできるんだけどな?」

「良いって。俺がやるから」

ルーテは笑って言う。

「あら、良いじゃない」

母は微笑ましい、と言わんばかりに言う。


「たまには、お手伝いをさせてよ」

「……わかったよ。じゃあ、食器拭いていってくれ」

「はーい」

ルークは喜んで手伝いをする。


ルーテは隣にルークがいて、さらに手伝いをしてくれているのを新鮮に思った。

「さてと、これが終わったらお茶でも入れるか」

「わぁ!」

ルーテは嬉しそうに歓声を上げる。

「やかんに水を入れて、火をかけておいてくれ」

「はーい」

ルークは喜んでやかんに水を入れる。


ルーテは食器を洗い終え、ルークの途中だった皿拭きをやっていく。

「ねえ、兄さん」

「なんだ?」

「あ、えっと、その……」

ルークは少し恥ずかしそうにしている。

「何をいまさら恥ずかしがっているんだ?」

ルーテは苦笑いしてツッコむ。


「じ、実はさ……」

「うん?」

「お茶の美味し淹れ方を、その……」

ルークは恥ずかしそうにだが、しっかりと言う。

「わかったよ。教えてやる」

「わあ! ありがとう、兄さん!」

「下準備から教えてやるからな」

「はーい!」

ルークは嬉しそうに言う。

その弟の表情に、ルーテは微笑ましく感じた。


「……よっと、持ってきたよ」

ルークはティーカップとティーサーバーを持ってきた。

「よし。なら、まずはカップとサーバーを温める」

「お湯に漬け込むの?」

ルーテはボウルを取ろうとする

「どうしてそうなる……?」

ルーテは苦笑いして言う。

よく考えたら、基本的にルークは食べる専門で、キッチンに立つということを今までしてこなかった。

だから、そんな発想になったのだろう、と冷静に分析した。

「え? 違うの……?」

ルーテはボウルを持って、キョトンとしている。

「カップの中とサーバーの中にお湯を入れたらいいだろう」

「それだけで温まるのかな……?」

「ああ。問題ない」

「そうなんだ……」

ルークはルーテがお湯を入れていく姿を見ていた。

そして、カップに触れて、中のお湯を捨てる。


「ティーパックには、お茶を飲む人数分とサーバー用にティースプーン一杯分の茶葉を入れる。紅茶の場合はな」

「なるほど。やってみて良い?」

ルークは目を輝かせて言う。

「ああ、やってみろ」

ルーテは隣で口を出すだけで、作業をルークに任せることにした。


「これは三分くらいサーバーで抽出する」

「三分か……」

「ルークは普段、食堂が休みの時はどうやって食事を摂っている?」

「カップ麺とか、仲間と食べに行くかな」

「なるほどな……」

「だから、三分なら何となくわかるかも」

「砂時計を使え」

「えー?」

ルークは唇を尖らせながらも、砂時計を使って時間を計る。

ルーテはただ穏やかにその様子を見守っていた。

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