第13話 休息

「さてと、私たちは……」

「リサを手伝いに行こうか?」

「うん! そう言おうとしたの」

レイチェルとロニーは畑へと再び足を運ぶ。


「ロニー! レイチェル! どうしたの?」

リサは驚いたように二人を見る。

「じっとしてるのが落ち着かなくて……」

レイチェルは恥ずかしそうに言う。

「それでさ、良かったら手伝うことないかなぁ? って思ったけど……」

「申し出は嬉しいんだけどね」

リサは苦笑いする。

「実は、人員補充が済んだ後で、今は特にないのよ」

「あちゃー、間が悪かったな」

ロニーとレイチェルは苦笑いした。


「そうだ! みんな疲れると思うし、お茶出しくらいしない?」

「あ、それ良いかも!」

「まあ、それはみんな喜ぶと思うわ」

「ついでに何かお茶菓子があると良いわね」

レイチェルは少し考える。

「そうね、それならルーテに相談しましょう」

リサは笑顔で言う。


「ふぅ……」

ジルはリサの姿を探す。

「あれ?」

「ジル、誰か探してるのか?」

庭師の仕事を担当する一人の男が話しかける。

「ああ、リサに作業終わったって……」

「なるほどな。さっき、畑を出てどこかに行ったぞ」

ジルはその言葉に困惑する。

「……待つしかないな」

「伝えようか?」

思わぬ一言に、ジルは安堵する。

「……なら、頼む」

「ああ、任せてくれ」

ジルはそう言って、立ち上がった。

そして、土を払って城の中へと入っていく。


「ふむ……」

男は土に手を伸ばす。

「……いい土だな。さすが城の物は違う」

そして、ポケットから一つの袋を出す。


「みなさーん、お茶が入りましたよ!」

「ルーテのお菓子もありますし、一息どうですか?」

レイチェルとロニーの声に、庭師たちが顔を上げる。


「休憩しましょう」

リタが笑顔で言う。

「ありがたい!」

庭師たちは、お茶とお菓子を片手に休憩を取り始める。


「あら? ジルはいないの?」

「ジルなら、自分の担当場所は終わったと伝えてくれって言って先に戻って行ったぞ」

「まあ、そうなの……」

「僕からジルにはお菓子を渡しておくよ」

「ありがとう、ロニー」

「ロニー……」

レイチェルはロニーを軽くにらむ。

「なんだい、レイチェル?」

「ちょっと良いかしら?」

レイチェルは笑顔のままロニーの腕を強くつかんで引っ張っていく。

取り残されたリタは苦笑いで見送る。


「ロニー、リタはね……」

「うん?」

「多分だけど……、ジルの事が好きだろうから、渡しに行くのをリタに任せてあげなさいよ」

「そうだったの? 知らなかったなぁ」

「本当、鈍感なんだから!」

「僕は今まで、仕事の方に情熱を注いでいたからね」

「それはよく分かってますっての!」

レイチェルは不機嫌そうにそう言った。


「大丈夫かしら?」

リタは少し心配そうに二人の様子を見守った。

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