第12話 友の為
「女王様、頼みたいことがあります!」
ロニーの突拍子もない行動で、兵たちは警戒する。
「何でしょう?」
女王は動じず、ロニーの目を見る。
「畑を荒らした犯人を、捕まえたいのです!」
「申し出はありがたいけれど、あなたたちには……」
「無関係じゃないですからね?」
ロニーは女王の言葉をさえぎってでも先手を打った。
「リサさんが丹精込めて作ってくれたものを、あんなふうに台無しにされる……。僕だって黙っちゃいられません!」
「私も同感です。どうか、警備を手伝わせてください」
レイチェルはロニーを押しのけてまで言う。
「……分かりました」
女王はそう言って。一人の男性を呼ぶ。
それは、ルーテであった。
「二人もどうしても、と申すのです。ローテーションに入れてあげて」
「かしこまりました」
ルーテはクリップボードを片手に何かを書いた。
「レイチェルはロニーもしくは俺から離れないようにしてくれ」
「え、ええ……、それはもちろん構わないけど……」
レイチェルはルーテの言葉に戸惑いながらも了承する。
「さすがに城の敷地だ、大事が起きないと願いたいが……、こればかりはな」
「ええ。お客人に何かあっては申し訳もたちませんから」
女王はそう言って瞳を伏せる。
その姿に、ロニーたちもどことなく不安を感じた。
絶対安全なわけがないと、二人も分かってはいたのだが。
「とりあえず、巡回の日に関しては俺の方で再編するから、また追って知らせる」
「お願いします」
二人は頭を下げる。
「しかし、どうしてこんなことに志願をしたんだ……?」
ルーテは怪訝そうに聞く。
「だって、リサのあんな顔を見たら……、早く犯人を捕まえたいわ……」
「悲しんでいる顔はあまり見たくないよ。特に、頑張っている人のね」
「そうか……」
ルーテはそう穏やかに言うだけだった。
「ルーテ、早期解決を期待します。でも、無理はしないように」
「はい、女王陛下!」
ルーテはそう言って、恭しく頭を下げて奥に下がった。
「先に言わせてほしいわ。ありがとう」
「どうして、お礼など?」
ロニーは思わず聞き返す。
「リサの心情を察してくれたのでしょう? それに、申し出もとても嬉しく思いました。本来、このようなことで喜んではいけませんが……、友を思う気持ちに感動しました」
「そうですか……、では、頑張って早期解決を狙いましょう」
「期待させてください」
女王は明るい声で言う。
リサは大体の片づけを終えた。
「また一からやり直しだわ……」
「手伝う」
ジルはそう言って、クワを取りに走る。
「……ありがとう、ジル」
リサはそう呟いて、急いでジルの後を追って耕具を取りに行く。
「力仕事はアンタじゃなく、俺の方が適任だ」
ジルはそう言って、リサを突っぱねた。
「ここは私の仕事の管轄よ!」
「それでもだ!」
ジルもリサも互いに譲ろうとしない。
「プッ……、ハハ、ジルってそんなに優しかったんだね」
思わず笑い出すリサに、ジルはムッとする。
「そ、そんな笑うことじゃないだろう!」
「ごめんね……、でも、意外過ぎて……ふふふ」
笑うリサにツンツンとした態度を取りつつもジルは畑を耕し始める。
「土を入れ替える必要がありそうだ」
「やっぱりそうね……」
「やってやるから退いていろ。あと、何人か男手を回せ」
「わかったわ、手伝いをお願いします」
リサはそう言って、中庭整備の管理室へと走る。
「世話がかかる……」
ジルはそうつぶやきつつも、上機嫌で畑の土をいじった。
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