第54話 寂しさ

女王はまず人差し指を立てて言う。

「私には女王として、皆の生活を守る義務があります。ハーヴィッシーズの手の者だと分かった以上、事情を聴く権利がありますからね。ただ、やみくもに罰したり、傷つけたり、ということは私も避けたい」

「だから、バーム様は私とお茶を……、そして、丁寧に話し合いをさせてくれたの」

「リサ……、だからって……」

パッセは驚いたように言う。


「もちろん、私は罪を償う必要があるわ……。パッセ、ジル、あなたたちの事も……」

「それに、ハーヴィッシーズの行動は、わが国では把握しきれていないことが多いのが現状……、リサに質問したら、色々と話をしてくださったわ」

女王はリサに笑みを向ける。

「ですが、もちろんこちらから強要などは特にしておりませんわ。自主性で話してくれたのは、誤解無きように……」

リサはうつむきつつ、女王の言葉に頷いている。


「リサ……、アンタ、それは」

「裏切りだってわかっている……。でも、私はもうハーヴィッシーズにいたくない……」

「どうして……!」

パッセは思わず前に出る。

「……食用花をハーヴィッシーズの仕業に見せかけて除草剤を撒いた時、心底心が痛かったのよ……。花に罪はないのに……」

パッセもジルも何も言えなくなる。


「そして、もう一つの理由もあります。私も友達が欲しかった……。だから、お茶をして話している間に、少し親しくしてくれたのは、リサが初めてだったわ。元々城でお仕事をしていてくれて、その話をたくさん聞くことができて、私も嬉しく思いました……」

女王と言えど、まだ彼女は若い。

城には兵たちが数多いるのだが、兵たち自身が女王とは話すこともためらっているようである。

その為、女王は仕事以外の時は読書などをしている時は少なくない。


リサは尋問を受けつつも穏やかに、そして話したがらなければ無理に聞き出そうとせず、他の話をするなど、気を遣ってくれる女王に好感を持っていた。

だからこそ、女王はあだ名をつけて欲しい、そしてあだ名で呼んでほしいと言っていたのである。


「私の名はリモバーム、だから好きに呼んで欲しいです……」

「でしたら……あの、バーム様と呼んでも?」

「嬉しい!」

女王は心底嬉しそうに言うので、リサはつい笑顔を浮かべた。

リサは少し複雑な気持ちで、だが二人でお茶をする時間が楽しみになっていた。

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