第43話 夢の中 上

ルーテはいつの間にか知らない場所にいた。

「なんだ……?」

一面原っぱの場に、ルーテは戸惑う。


「あそこに人がいるな……」

話を聞こう、そう思い走り出す。

だが、平坦と思っていた原っぱは、坂道だった。


「なんなんだ、ここは!」

イラ立ちを覚えながらも、ルーテは歩く。


「あら?」

振り向いた女性に、思わずドキリとする。

「あなたは……?」

「……ルーテだ」

「あなた、ルーテなの!?」

女性は興奮気味に言う。

ルーテは戸惑うしかない。

女性の髪は、本来のルーテの髪と瓜二つ。

金髪の髪で、ウェーブしたくせ毛だ。

長さだけは、やはり違うのだが。


「大きくなったわね……! お父さんに似てきたわ」

「まさか……、俺を生んでくれた、モカ母さんなのか?」

「そうよ……! ルーテ、立派に育ったわね!」

モカは嬉しそうにルーテを強く抱き締める。

「母さん、ここは……?」

「もう、ルーテったら。ここはアローニよ」

「ここが……?」

ルーテは驚いて周りを見渡す。


原っぱに、ところどころに花が咲いている。

そして、いい匂いが漂う。

「この匂い……、コーヒー?」

「ええ。ルーテはミルクやシロップは?」

「ああ、いらない。ブラックで良いよ」

「そう」

モカは笑ってルーテへとコーヒーを差し出す。


「もうすぐあの子も来るわ」

「あの子?」

「まあ! 忘れちゃったの?」

モカは困ったように肩をすくめる。

「……うん」

「会ったらわかるわよ、きっと」

モカは笑顔で言う。


「お待たせー!」

「もう、遅いわよ!」

モカは笑いながら言う。

その女性が連れていたのは……!

「えっ……!?」

ルーテは目を疑った。

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