第48話 汽車の中
朝。
今日は城へと帰る日だった。
「ルーク、忘れ物はしてないな?」
「うん、大丈夫……、だと思う」
「ルーク、忘れ物よ!」
母はルークに小包を渡す。
「あ、ありがとう母さん! みんなに渡すお土産忘れてた」
「おいおい……」
ルークはルーテに照れ笑いして恥ずかしい気持ちを誤魔化す。
「んじゃ、行ってくるよ」
「行ってきまーす」
「気を付けて行ってらっしゃい」
父と母は二人を見送った。
「兄さん、どうかした?」
ルークはルーテが難しい顔をしていることに気付いた。
「ん? いや、別に何でもないぞ」
「そう? なら良いけどさ」
「ほら、急ぐぞ。汽車まで時間がない! 明日の朝までには城に着かなきゃいけないんだから!」
「わ、わかってるよ!」
ルークは必死にルーテへと着いて行く。
二人は駅まで走って、汽車を待つ。
「でも、嬉しかったな……」
「何がだ?」
「兄さんと帰ってこられたことさ」
ルーテはその言葉に、ポッと頬が赤くなる。
「あ! 兄さん照れてる!」
「う、うるさい……! おい、汽車が来た。置いてくぞ!」
ルーテは先に汽車へと乗り込んでいる。
「えっ! ちょっと待ってって!」
ルークは大慌てで後に続いた。
座椅子にルーテが座り、隣にルークも座る。
隣の席をちらりと見ると、何故だか見慣れた人影がある。
「あれ? ルーテではないですか? ルークも……」
「パッセ、ジル! それにロニーとレイチェルも……! どうしてここに……?」
「ハーブ祭りに行った帰りなんですよ」
「ああ……。もうそんな時期だったか」
「ええ。良いハーブも買ってきてしまいました」
パッセは嬉しそうに、ハーブの束をちらっと見せる。
「そうだな。色づやの良いハーブだ」
「パッセはその目利きだけが特技みたいなもんだ」
ジルは笑って言う。
パッセは空いた方の手で軽くジルを叩いた。
その様子に、ルーテもルークも、ロニーもレイチェルも笑っていた。
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