第六章 妖精と少女の嘘
第28話 そんなことねぇーです、瑠璃唐草と白菊は仲良しなのですぅ~♪
十二月を
早朝だと、
学校からの帰り道――
今の私の気分と同じで、天気は灰色の
あの旅行から、それなりに時間も
私も気持ちの整理が付くようにはなっていた。
叔父さんの話によると――私の存在を隠せなくなってきた――ということだった。
妖精たちが
『喫茶フェアリーガーデン』に居る人間の女の子が、妖精を助けてくれる。
そんな
「きっと、ピーターの
とルリ。確かに、あの『小さいおっさん』なら、得意げに言いふらしていそうだ。
けれど、それだけではないだろう。
お店の常連さんや、今まで出会ってきた妖精たちにも口止めはしていない。
感謝してくれるのは素直に嬉しい。
けれど、このままでは本当に『
どうやら、良かれと思ってしてきたことが、自分の首を
妖精たちに関して言うのであれば、今は安全だと言えた。『
それだけで、不用意に手出しはしてこないだろう。
問題は妖精たちの『裏返し』を計画していた組織と人間たちだ。
組織の方は
〈改革派〉は旧体制を『どうにかしたい』と考えているようだ。
私が下手に彼らへ手を貸すと、妖精間の争いになってしまう。
〈保守派〉に関しては、旗となる存在は物言わぬ人物が望みらしい。
私を消す、もしくは操り人形のようにしようと考えているようだ。
このまま、私が『この世界に留まる』ということは、彼らに『狙われ続ける』ということになってしまう。
今後も妖精たちと関わって行くのなら〈改革派〉と協力して〈保守派〉と戦うことになるだろう。
どちらが勝ったとしても、この世界のバランスは
他の勢力も静観してはくれそうにない。
しかし、もっと厄介なのが人間たちの組織だ。
こちらは更に、事情が複雑になる。
私を保護し――人間と妖精を取り持つ人材として活用しよう――と考える人たちは
そもそも、その理想を
多くの人間は、私を保護という名目で隔離し――『妖精の恩恵』を人間社会のために利用しよう――と考える人たちだった。
昔から、犠牲になってきた妖精たちも多くいて、それが現在、人間の敵に回っている。だから、力を
結局、人間は自らの手によって、敵を作り続けている。
世の中には妖精を排除して、人間だけの世界を作ろうとする人たちも存在すれば、妖精に人権を与えようとする団体もいる。
また、妖精を人間から解放することを掲げる暴力的な人たちも存在した。
単純に『妖精の恩恵』を私利私欲のため使おうと考えている人たちも多い。
そんな世界に
すまない――と叔父さんは謝ってくれたけれど、悪いのは叔父さんではない。
もし、私がこの世界に残るのであれば、そんな多くの人間たちと戦わなくてはならなくなる。
人間と妖精が仲良く暮らす世界――というのは夢物語なのかもしれない。
「そんなことねぇーです、
だから『焼き芋』買えです!――とルリ。どうやら、最近のブームは『焼き芋』らしい。今は学校の帰りだから後でね、と私は
そんな私たちの遣り取りを見て、隣を歩いてくれていた
『向こうの世界に戻る』ということは、そんな彼との別れを意味した。一度は失った霊力だけれど、私と一緒に居ることで、優夜は取り戻すことが出来たようだ。
叔父さんが優夜に、私の面倒を見るように指示したのも、それが狙いの一つだったらしい。ただ、私も優夜も、叔父さんの想像以上に成長してしまった。
妖精が見える――それだけの少女だったはずの私。
それが妖精の『裏返し』を阻止して、多くの妖精から信頼を得てしまった。
優夜も、そんな私の
その結果、再び霊力を取り戻してしまった。
一度は手放した優夜という存在。
けれど、この分では本家も放っては置かないはずだ。
想像していたよりも、私たちが一緒に居られる時間は、ずっと短かくなってしまった。
「もっと早く、学校に行けるようになっていれば良かった……」
そうすれば、優夜と一緒に居られる時間も増えたのに――そんな私の言葉に、
「別に時間の問題じゃないだろ?」
と優夜。彼の言いたいことは分かる。
一緒に過ごす時間も大切だけれど、どうやって過ごすのかが大切なのだ。
「それよりも、謝るのは俺の方だ――守ると約束したばかりなのに……」
こんな結果になってしまった――そう言って、優夜は落ち込む。私は、
「そんなことないよ!」
と告げる。
「優夜はずっと、私を守ってくれていたし――この思い出があるから……」
私は頑張れるんだよ!――そう言って、優夜の手を取った。
以前は恥ずかしそうにする彼だったけれど、私をしっかりと見詰め返してくれる。
「あのー、お二人さん……」
コホンッ、と
「アタシたちも居るんですけど……」
と大人しい口調で
しかし、その指の隙間から、しっかりと私たちの様子を
「顔を隠している意味がねぇーのですぅ~?」
ルリが
「まったく、悩んでいると思って心配してみれば……」
心配してくれていたのでは、なかったのだろうか?
結局、いつものように怒られてしまった。
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