第24話 このウンチのヤツがいいですぅ~♪
「ようこそ、お越しくださいました」
と旅館の従業員の人たちが出迎えてくれる。
私は初めてなので、
取り
「旅行なので、楽しみやがれですぅ~♪」
とルリ。
「
着物姿の女性が叔父さんに
はて? こういう大きい旅館では部屋に直接、
いや、叔父さんは
その仕事柄、色々と頼られることが多い。
荷物は部屋に運んでくれるようだ。
旅館そのモノが初めてなので、私が周囲の様子を
「あっ、
と若い女性の声が響く。振り返ると
すっかり、声も戻っている。
どうやら、お出迎えしようとフロント付近を気にしていたらしい。
海で別れて以来、色々と気になっていたので連絡を取り合っていた。
優夜は本当の彼女の性格を知らないので、
私は優夜から離れると、笑顔でハイタッチをする。
『イェイッ!』
「久し振りだね、元気だった?」
「はい、渚さんこそ、記憶も戻って良かったですね」
私たちは抱き合う。
「二人とも、性格変わりすぎなのですぅ~」
とルリ。私だって日々成長しているのだ。
これくらい出来る! もう不登校な小学生ではない。
しかし――コホンッ――と
渚さんは『しまったぁ』という表情を浮かべると、
「ゴメンね、仕事中なんだ……」
そう言って謝る。私も、お店に
渚さんは――また後でね――と手を振って仕事に戻る。
従業員が失礼いたしました――と
他にもお客さんが居るので、仕方のないことだろう。
その後、部屋に案内してもらう。和室だ。
「よしっ、まずは風呂だな!」
と狭霧さん。
浴衣に着替えるぜっ!――と言って男性陣を追い出す。
「あらあら」
とは
「この
そう言って、ルリが皆の分まで食べようとしたので止める。
まったく、油断も隙もない。
途中のサービスエリアで、あれだけ食べたというのにまだ食べ足りないらしい。
「まったく、さっさと着替えろよな」
狭霧さんはそう言って、私と雪風さんを浴衣に着替えさせる。
ルリもいつの間にか浴衣に着替えていた。
彼女の生態については、考えるだけ無駄なのでやめておこう。
「うん、これで雰囲気が出たな」
と狭霧さん。
「じゃ、男共も入って着替えろ! あたしらは先に行ってるぞ」
そう言って、私と雪風さんを連れ出す。
悪魔って、温泉が好きなのだろうか?
一番楽しんでいるように見える。
擦れ違いざまに優夜と目が合った。
後で話があると言っていたのを思い出す。
風呂を上がって、夕食の前にでも時間を作ればいいのだろうか?
狭霧さんは一度、旅館のフロアガイドの前で立ち止まると、
「いいか、お前ら――迷子になったら……」
『お土産』コーナーか『ゲーム』コーナーに居ろよ――そんなことを告げる。
どうやら、迷子になると思われているようだ。
「あらあら……白菊ちゃん、気を付けてね」
と雪風さんが言うと、
「お前だよ! お前に言ってるんだよ!」
狭霧さんは声を荒げた。
「大丈夫よ、確か……こっちから来たのよね♡」
雪風さんはそう言って、見当違いの方向を指差す。
「全然、違う方向だ……」
狭霧さんは肩を落とした。
「もぉ~、冗談よ?」
ウフフッ♡――と雪風さん。
「お前のは分かり
と狭霧さんは返す。
どうやら、この分では狭霧さんは雪風さんに付きっきりになりそうだ。
脱衣所に着くと、
「瑠璃唐草も牛乳飲むですぅ~♪」
とルリ。私は――お風呂から上がったらね――と返しておく。
それよりも『人前で裸になること』に抵抗がある。
こんなこともあろうかと、水着を用意していた。えっへん!
「バカッ、ここは水着で入っていい場所じゃねぇーよ……」
プールも併設されてねぇーから脱げ!――と狭霧さんに脱がされてしまう。
「ううっ、
と私は抵抗したけれど、丸裸にされてしまった。
「たくっ、
そんな狭霧さんに、
「温泉でゆっくり疲れを
とルリと雪風さんが返す。
「いや、お前らのせいで疲れたんだよ」
狭霧さんは頭を押えるのだった。
私と雪風さんは身体と頭を洗い、軽く温泉に浸かると、
小学生と妊婦なので、長湯は禁物だ。
狭霧さんは――もう少し入っている――と言っていた。
やはり、温泉好きらしい。
「ちゃんと水分を
と言われたので、雪風さんにフルーツ牛乳を買ってもらった。
「プハーッ! この一杯のために今日も生きているのですぅ~♪」
とルリ。飲んでいるのは、ただの牛乳だよね?
一応、確認する。うん、大丈夫だ。
髪を乾かした私と雪風さんは『お土産』コーナーで狭霧さんが来るのを待つことにする。
「瑠璃唐草は、このお
とルリ。どうやら、気に入ったらしい。
仕方がないので、後で叔父さんに買ってもらおう。
寧々子と和奏の『お土産』はどうしようか?
和奏の家はパン屋なので、お菓子ではない気がする。
「じゃあ、お
とは優夜だ。どうやら、叔父さんと一緒にお風呂から出て来たところらしい。
私は優夜に『お土産』選びを手伝ってもうことにする。
「このウンチのヤツがいいですぅ~♪」
とルリ。そうそう、このグルグルしたウンチのヤツ――て適当なことを言わないで欲しい。さすがに、それは受け取りを拒否されてしまう。
「こっちの動物のにしておけ……」
とは優夜。どうやら、私がウンチを見ていたので誤解されてしまったらしい。
「二人とも、仲がいいんだね」
再び背後から声を掛けられる。今度は渚さんだ。
従業員の格好なので、まだバイト中のようだ。
「ラブラブなのですぅ~♪」
とルリ。さっきまで、ウンチ言ってた癖に……。
「そうなんだ、邪魔しちゃ悪いわね……」
ごゆっくり――と渚さん。ニマニマしている。その視線の先には、恋人同士が付けるであろうペアのハート型のキーホルダーがあった。
ウンチとハートが混在しているとは――『お土産』コーナーとは恐ろしい場所だ。
私が
恐らく、仕事の依頼だろう。叔父さんは狭霧さんを待ってから、部屋に戻るよう指示を出すと、どこかへ行ってしまった。
海水浴の時といい、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます