第五章 妖精と少女の秘密
第23話 食べすぎぃ~♪ 太りすぎぃ~♪ 考えすぎですぅ~♪
季節は秋を
私のお店での制服も半袖から長袖に変わり、クラシックなメイド服に変わった。
また、
お店のカウンター席では、コーヒーを飲みながら、
「妖精の子供ってのは、花の
ほら、桃とか竹とか、有名だろ?――と狭霧さん。
間違ってはいないけれど、例に挙げたのは物語の登場人物ではないだろうか?
確か叔父さんは『人の想いから生まれることもある』と言っていた。
「あれって、妖精の話だったのですぅ~?
と言ってルリは感心する。
まあ、本人が納得しているのなら、それでいいだろう。
ただ、医者がそんな適当なことを言っていいのだろうか?
「細かいことは気にするなよ」
狭霧さんはそう言うと、私の頭をペチペチと尻尾で叩く。
毎度のことだけれど、やめて欲しい。
私が声に出そうとすると丁度、車の音が聞こえた。
叔父さんが帰ってきたようだ。
夏に海へ出掛けた時と同様に、ワゴン車をレンタルしてきた。
これから温泉へと出発する。『人魚の
駆け落ちをした
お祖母さんは仲居として勤めていたらしく、これから、その二人が働いていた旅館へと向かう。渚さんも、そこでバイトをしているそうだ。
お
渚さんの両親は共働きで、祖父母に面倒を見てもらっていた。
そのため、
「仲直り出来て良かったね」
私がルリに言うと、
「そんなことより、
逆に質問される。どうやら、彼女にとっては、どうでもいいことらしい。
今回の旅行は
カランコロン♪――とドアベルが鳴った。
「荷物を運ぶけど、手伝うのはある?」
と
私はクルリとターンを決めると、スカートの端を
ちょっと遣り過ぎただろうか?
「似合っている、可愛いよ」
と優夜。
「
そう言って
「まさか、その格好で行く気か?」
とは狭霧さん。今回は雪風さんのこともあるので、叔父さんが付いて来てくれるように頼んだらしい。
「ダメかなぁ?」
私が首を
「目立つ、一緒にいると恥ずかしい」
TPOを
悪魔から、そんな言葉が出て来るのは不思議な気分だ。
「仲居VSメイドですぅ~♪」
とはルリ。優夜は苦笑している。
男の子はメイド服が好きだと聞いたのだけれど、違ったのだろうか?
「すぐに
そう言って、ルリは飛び回る。
いや、ルリには言われたくないのだけれど……。
「
と荷物を取りにきた叔父さんが言う。
雪風さんに荷物を運ばせる訳にはいかないので、叔父さんと優夜で荷物を運んだ。
私は部屋に戻ると服を着替える。
再び、お店のフロアへ向かうと準備はすっかり終わっていたようだ。
叔父さんが雪風さんをエスコートしていた。
優夜は待っていてくれたようで、
「荷物は?」
と私に確認する。持って行くのは着替えくらいだ。
「大丈夫だよ」
私は答えた後、手を差し出す。
優夜は苦笑すると、その手を
「後で時間をもらってもいいか?」
と改まって私に
「いつでもいいけど?」
私の返答に――ありがとう――と優夜は返す。変な優夜だ。
「おい、行くぞ」
と
「遅いと置いて行くのですよ?」
と告げる。私たちは急いで、お店を後にした。
叔父さんは黙って戸締りをする。向かうは温泉旅館だ。
途中、立ち寄ったサービスエリアでルリが『あれを食べたい、これを食べたい』と
また、山の紅葉もすっかり始まっていて、道中は秋の雰囲気となっていた。
後で写真を
「やれやれ、
と狭霧さん。途中で運転を叔父さんと代わっていた。
車から降りると――う~んっ!――と背伸びをする。
こうして見ていると、まったく悪魔っぽくない。
一方で叔父さんは
お店ではそんな素振りを見せないのに、今日は甘々だ。
いや、私のことを
やはり、自分の子供の方が可愛いのだろうか?
私は要らない子になってしまう。
つい、そんなことを考えてしまった。
「食べすぎぃ~♪ 太りすぎぃ~♪ 考えすぎですぅ~♪」
とルリ。考えすぎなのは分かっている。
叔父さんも雪風さんも、私のことを大切にしてくれていた。
だからこそ――『お父さん』『お母さん』と呼んだ方がいいのかな?――と思う時がある。
「いや、食べすぎなのはルリだから……」
私がそう返すと、
「デブが怒ったですぅ~♪」
とルリ。たまに本気で怒りたくなる時がある。
む~っ! と私は頬を
「どうした? そんなにむくれて……」
そう言って、私の頬を
「ひゃうっ!」
「そ、そんなに太ったかなぁ?」
と優夜を見上げる。自然と指をモジモジとさせてしまう。
最初、彼は首を
「初めて会った時は
今ぐらいで丁度いいんじゃないのか?――そう答える。
「だよね! だよね!」
と私。けれど、
「バーカ……男はその辺、甘いんだよ」
気付いた時には手遅れだぜ――と狭霧さん。続けて、
「ま、お前の場合は筋肉をつけることだな」
そんなことを言うと、私を
「キャハハハッ! や、やめてぇ……っ!」
と
「おっ! やっと元気になったか……」
と狭霧さん。どうやら彼女なりに、私に元気がないのを気にしていたようだ。
でも……これ、元気違う!
「ひっー、やめ、やめてぇ~!」
秋の温泉郷に私の声が
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