第8話 何か、身体から出しているのか? お前は……
やれやれ、悪魔の世界も大変なようだ。実際は仕えている神様が違うだけで、天使や悪魔といった区別は自称でしかないのだろう。
私には天使と悪魔の区別がつかない。
ふとした切っ掛けで善にも悪にもなる人間の方が怖い。
「所で、
と
ここで大人しく
「雪風のヤツには、あたしから連絡しとくからさ」
狭霧さんはそう言うと、スマホを取り出し、
それって、後で雪風さんに怒られるのでは?
私は本に
一方で狭霧さんは――これでよしっ!――と言って、
「じゃ、ついて来いよ」
両手をポケットに突っ込み、ニカッと笑うと歩き出した。
私は「行く」とは言っていなのだけれど……。
仕方がないので、ついて行くことにした。小児科病棟だろうか?
小さい子供たちの姿が目に付く。小型の妖精たちも、この病棟のようだ。
小さな妖精たちは
下手に関わると面倒だ。私は狭霧さんから
それにルリも、この病棟に連れて来られたのかも知れない。
もし会ったのなら、回収して行こう。そう思っていた矢先、
「うなーん」
と足元から鳴き声が聞こえる。さっき見た白猫だ。
私についてきた? いや、そんなはずはない。
狭霧さんは気にした様子もないので、
ちょっと安心。
「お前、あたしが猫を食べるとでも思っているのか?」
狭霧さんは嫌そうな目つきでそう言うと、黒くて細長い悪魔の尻尾で私の頭をペチペチする。尻尾の先端が
「さすがに、そこまでは思っていない……です」
と言い訳をする。本当は、ちょっと思ってました。狭霧さんは、
「まあ、いいや」
と言って白猫の方を見た。どうやら、大人しく待っていてくれたようだ。
ちょこんと座っている。
「うなーん」
と白猫。
「丁度いい、『マシロ』――お前のご主人の所まで案内しろ」
狭霧さんは猫に命令をした。白猫の名前はマシロというらしい。
「うなっ」
とマシロ。言葉を理解しているようだ。
尻尾を揺らして、先頭を歩く。私と狭霧さんはその後に続いた。
そういえば、尻尾で思い出したけれど、狭霧さんの尻尾はどうなっているのだろうか? 衣服に穴は開いていないようだ。
「
と狭霧さん。
「いえ、穴があるのかなと……」
そんな私の返答に、
「ケツなんだから、穴があるに決まってるだろうが?」
と首を
そういう意味で言った訳ではない。
尻尾の出し入れが、どうなっているのか気になっただけである。
まあ、いいか。
それよりも目的の部屋についたようだ。
マシロは一度、立ち止まって振り向くと
「うなーん」
と鳴いた。そして、病室へと入って行く。
「おや、マシロ……お帰り」
少女の声が聞こえた。やはり、そこが飼い主の病室らしい。
「ようっ、入るぞ!」
そう言って狭霧さんも入って行く。私は恐る恐る部屋を
そこには数匹の猫に囲まれて、ベッドが一つ置いてあった。
私と同じ位の年齢の少女だろうか?
ベッドの上で上半身を起こし、窓の外を
狭霧さんが、
「おーい、入ってこい」
と言うので、私は仕方なく病室に入る。
人様の病室に勝手に入っていいモノだろうか?
「こいつは『
狭霧さんから紹介されたので、取り
「
と作り笑いをした。うん……
お店の接客で大人と話すのは平気になった。
けれど、まだ同年代の子と話すのは苦手だ。
「
狭霧さんが困った表情をする。想定外だったのだろう。
参ったなと後頭部を
こっちは泣きたい気分だ。
ルリか
うう、帰りたい。一方で橘という少女は
確か『
よく見ると、ピンと尖った三角の耳に、お尻からフサフサの尻尾が生えている。
それがゆらゆらと揺れていた。
ハッキリ原因が分かっているのだったら、簡単にお
私の場合、叔父さんが基準になっている。
しかし、改めて考えると悪魔である狭霧さんを使役できる。
実は
普段は喫茶店の
「うなーん」
私たちの様子を見兼ねたのか、マシロが足元にやってきた。
正直、飲食店なので、こういう機会は滅多にない。
「さ、触ってもいい?」
私が橘さんに確認すると、彼女はコクリと
それが了承の合図だと認識した私は、
ふかふかで温かい。猫って感じだ。
ぎこちない私の抱き方にも、大人しくしてくれている。
他の猫たちも、私に興味があるのか集まってきた。
「
と
「うなーん」
マシロが鳴くと、
「にぃー」「にゃーん」「めぇ~」
と他の猫たちも一斉に鳴き出した。
ますます
実際、私自身もどういう状況なのか分からない。
橘という子に助けを
しかし、いつの間にか橘さんもベッドの上を四つん
「うにゃー」「うなーん」「にぃー」「にゃーん」「めぇ~」
と鳴き声の共鳴が始まる。
興味を持ってくれたのは良かったけれど、
また、変な
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