第16話 それより、今はこっちじゃないの?
お姉さんの見た目は女子高生――といった所だろうか?
砂浜に残っていた
けれど、お姉さんの髪や衣服に
水着の上にTシャツとジーンズの短パンを身に付けている。
泳ぐ気満々というよりは、海の家でバイトをしていそうな
日に焼けていたら完璧だったろうけど、肌の色は白い。
妖精だからかな?
ただ、
今は私にも、普通の人間に見えている。
どうやら、水に
「恐らく、人間と妖精のハーフ――いや、もう少し薄いか……」
と叔父さん。どうやら、お姉さんは妖精の血を引いているらしい。
私がタオルで、お姉さんの足を
仕組みはだいたい把握できたけれど、問題はそこではない。
お姉さんは記憶喪失のうえ、話せないようだ。
それが原因なのは明らかだ。けれど、
「この土地の呪いのせいだろう」
とは叔父さん。特定の霊力を持っている人物や血筋の者に対してのみ、悪い影響が
この場合は――特定の記憶を失い、他人に助けを求められなくなる――と考えるべきだろう。直接、呪いの原因を断つ必要がありそうだ。
「
叔父さんの言葉に私は
どうやら、こちらの世界に来たことが原因だったらしい。
精神的なモノかと思っていた。
「いや、それもある……」
いい機会だ――と叔父さん。
「もう一人ではないようだしな……」
そう言って、寧々子と和奏を見た後、説明をしてくれた。
今、私が居る世界を〈妖精界〉とするのなら、元居た世界は〈人間界〉だ。
私の場合〈妖精界〉との相性がいいらしい。
そのため、この世界が私を取り込もうとしているそうだ。
〈人間界〉での記憶は消され、また〈人間界〉に
叔父さんも私と同じだったそうだ。
長く居るため、既に〈妖精界〉の人間となっている。
今更〈人間界〉に戻ったところで、誰も叔父さんのことは覚えていないようだ。
最初から居なかったモノとして、世界が上書きされるらしい。
私も〈妖精界〉に長く居ると、そうなってしまうそうだ。
寧々子が心配そうに私の手を取る。
どうやら――〈人間界〉に戻らないで欲しい――と思っているようだ。
ウルウルとした瞳で私を見詰める。
「やめなさい」
とは和奏。
「決めるのは白菊だし、
そう言って、寧々子を引っ張る。
「それより、今はこっちじゃないの?」
とお姉さんを指差した。
『桜の精』や寧々子の時といい『黒い茨』をこのままにして置くのは危険だ。
「アタシには難しいことは分からないけど、白菊が居なくなって……」
親は心配しているんじゃないの?――と和奏。
彼女なりに私のことを考えてくれているようだ。
後で二人には、きちんと相談した方がいいだろう。
「友達って、めんどくせぇーですぅ~♪」
とルリ。一番面倒な存在がよく言うモノだ。
「筆談も無理か……」
とは叔父さん。お姉さんにペンと紙を渡していた。けれど、肝心な質問の答えに対しては『黒い茨』が伸び、お姉さんの腕の動きを
痛みに苦しむお姉さん。
結局、分かったのは『
「下手に病院に連れていった所で、良くはならないだろうな……」
かといって、呪いの外に連れて出すのも危険だ――と告げた後、少し考え込む。
叔父さんの予想では『私がこの土地に入ったことがそもそもの原因だ』と考えているようだ。
今回の呪いは結界のようなモノで――特定の人や情報の出入りを制限する――と叔父さんは言う。
つまり、結界の外に出ると『ここでのお姉さんに関する記憶が消えてしまう』ということらしい。
「元々は彼女も、この土地に入ることが出来なかったはずだ」
と叔父さん。続けて、
「〈妖精界〉にとっての異分子である白菊が、この土地に来たことで……」
呪いに
そして、立ち上がると、
「車を日陰に移動させてくる」
お前達は昼でも食べていろ――そう言って、雑木林の方へと向かった。
まあ、呪いがあるとするのなら、そこしかないよね。
叔父さんが使役しているのは『
心配する必要ないだろう。
そういえば『
「火事になるからやめとくですぅ~」
とルリ。確かに、雪風さんとは相性が悪そうだ。
「じゃ、お昼にするか?」
優夜が言ったので、私たちは
遊ぶことよりも、今の会話で疲れてしまった。
雪風さんが
私は飲み物を出そうとして、皆に
「渚さんは……」
と言い掛けて、口が利けないのを思い出した。
飲みたい物を指で差してもらう。どうやら、お茶でいいようだ。
昼食のお弁当を食べながら、午後の作戦を立てることにした。
雪風さんは私たちの様子をニコニコとした表情で見ている。
「身に付けているモノで、分かれば良かったんだけどな」
とは優夜。
警察に届けて、騒ぎを大きくするのは得策ではなさそうだ。
「
優夜にしては、珍しく積極的な気がする。
いつもなら、私たちを
「きっと、白菊が居なくなると聞いて、動揺しているのですよぉ~」
とルリ。
食後の運動と気分転換も兼ねて、私は浜辺の捜査を提案する。
「確かに、渚さんを探している人が居るかもしれないわね」
和奏はそう言って、私の言葉に賛同した。
ちょんちょんと寧々子が私の肩を
「貝殻……」
と一言。確か、和奏の夏休みの工作に必要だった気がする。
「そうだね、ついでに貝殻集めもしないとね」
と私。正直、今の今まで忘れていた。
「そこは、ついでじゃないでしょ!」
と和奏に怒られてしまう。
自分だって忘れていた癖に、
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