第6話 頑張ったのですぅ~♪ 偉い偉いなのですぅ~♪
食べ終わった食器は、そのままでいいですよ――と
もう
形を持たない存在が姿を得て、活動し始める時間帯だ。
私が引き
けれど、
彼は『
「その過大な評価はやめてくれ」
と優夜。おや、私の考えていることが伝わったらしい。
「
お腹が
やはり、食べ物に弱いようだ。捕まらないか心配になる。
ほら、行くよ――と私が声を掛けると、
「待つのですよ」
そう言って、フヨフヨと飛び、私の頭の上に乗った。
自分で飛んで帰るという選択肢はないようだ。
外へ出ると
「おお、白菊ちゃん、今日はありがとう。助かったよ」
とお礼を言われる。私としては、大したことはしていないつもりだ。
なので、感謝されるのも反応に困ってしまう。
「お役に立てたのなら良かったです。また
私は叔父さんの対応を思い出し、
「
とはルリ。
「ところで
と優夜が聞いてくれる。
「ああ、あの
そう言って、
見ると、
私にだけ見える霊気の流れだ。
どうやら、妖精が関わっている可能性が高い。
気になるのは、
子供の一人が池に落ちてしまい、
多少はパニックになったようだけれど、そこまで深い池ではない。
子供は無事に助かったそうだ。
問題はその子が――女の人を見た――と言っていたことだった。
この
女性の霊が子供を連れて行こうとしたのではないかと
この
こちらの世界では、幽霊や妖精が普通に信じられている。
普通に考えれば変だと思うようなことでも、
昔から寺は地域の住民たちが集まる場所でもある。
池の周りで遊んでいて、子供が落ちてはいけないと作った話だろう。
それが――いつしか力を持って具現化した――ということだろうか?
ならば話は簡単である。
噂は噂で打ち消せばいい。
「大丈夫ですよ」
と私は言った。
ギョロリと動いた目が
「あれは悪いモノではありません。子供を助けようとしたのではないですか?」
そんな私の問いに、
「なるほど」
と
悪いモノが
妖精の見える私だから、この言葉には力があった。
本来は気味悪がられる
「では、そのように皆には伝えておくとしよう」
小さな
また聞き
「
とは優夜。女王など、そんな大それた存在になった覚えはない。
「少なくとも俺が目指している『
多くの妖精たちに必要とされている存在だ――と続ける。
優夜は私のことを
「違うよっ!」
と思わず彼の手を両手で
私は目を泳がせ、言葉に詰まる。
それでも、意を決して口にしなければいけない。
トクンと心臓の音が聞こえた気がする。
「そ、そのね――今日ここに来れたのは優夜のお陰だし……」
私一人じゃ、全然ダメなの!――そう言って、彼を見詰めた。
「いつも朝、迎えに来てくれるし、優しくて頼りになるし……」
ちょっと、意地悪な時もあるけれど――私は一気に
そして、最後に一呼吸おいて、
「だからね、優夜だって
と告げる。
どうしていいのか分からず、私はモジモジしてしまう。
「頑張ったのですぅ~♪ 偉い偉いなのですぅ~♪」
とはルリ。私の頭に乗ったまま――いい子いい子――と頭を
不思議だ。こんなことを言う性格ではなかったのに、自然と言葉が
いったい、どうしてしまったのだろう?
一方、優夜は
「ありがとう」
と返した。あははは、と私は照れ笑いを浮かべる。
「ほほぉう、青春だな」
と
「これからも、二人で力を合わせて、頑張って欲しいモノだ」
そう言って、一人で納得する。また、私の頭の上では、
「
とルリが
今日は特に
ふと優しい風が吹き、桜の
風の吹いた方を向くと、そこには
女性が立っていて、頭を下げた。
地面を
「気を付けて帰るのだぞ」
と
「また、遠回りなのですぅ?」
長い階段を下る私に対して、ルリが不思議そうに問い掛ける。
「いいのっ!」
と私は答えた。それよりも、優夜が無口な気がする。
いつもより、顔が赤いようだ。照れているのだろうか?
私の足取りは少しだけ軽くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます