追放貴族は不労希望

　シオン・ラムダは父親で現当主のラムダ伯爵に家から叩き出され、お説教に罵詈雑言を交えて怒鳴りつけられている最中に前世の記憶に目覚めた。父親の怒鳴っている内容は基本的に仰る通りとしか思えないものであるため、彼は大人しく怒られながら主人格の入れ替わりのタイミングを嘆きつつこれまでの状況を整理する。
　本来の彼は伯爵家の長男であり、伯爵家の次期当主か伯爵と正妻の間に生まれた弟であるルイス・ラムダの相談役としての未来を嘱望されて大切に育てられていた。だが、彼は周囲が自分を大切にしてくれているという期待の裏返しに耐えられずに惰弱で臆病な心根を隠すべく上から傲慢の色を塗りたくり、本来の自分が見えなくなってしまって大切にされていることに慢心してしまう。
　慢心後の彼は記憶を取り戻すまでの毎日を堕落の一途を…続きを読む