暁の薄紫色に映る

汐里は32歳。4年付き合った彼と、別れたばかり。その上不治の病に侵されていた。高校の頃からの思い出を心の中でなぞっていく。
自分で壊してしまった宝物のような居場所へ、今帰りたいと強く願う。

仕事を辞めて、それまでしたかった事をめいっぱいやる、そう決めた汐里は、緩和する為の痛み止めを飲みながら生活していた。高校時代の友人、海斗に会いたいが、連絡を躊躇う。淡く、そして痛い思いが蘇る。

高校の頃恋した教師、梶田陸。
自分を引き取って育ててくれた祖父母。
親友の優奈とアサ。
バイト仲間の潮田海斗。
海斗の保護者、美帆と依子。

恋愛も友情もすれ違いとも、10年前に全てと別れて生きてきた汐里は、海斗を通じて夢を取り戻していく。

海斗との思い出の家で、懐かしい記憶を語り明かす夜明け前、海斗は汐里を…続きを読む