第13話 寝る前のイチャイチャ

「何してんの?」

「えっ!? いや、別に何もっ?」


 ベッドサイドの前で無駄に屈伸とかしてた俺、急に呼びかけられて声が裏返ってしまう。


「シンくんまだ寝ない~?」

「あっ、あぁ~。どしよっかな、ミコトは?」

「おれ、もう寝る。疲れた」


 ふあぁ~っと欠伸をしながら、ミコトが上がり框の前でサンダルを脱いだ。


 確かに、ベッドサイドまで靴で行く必要はないもんな。せっかく一段高くなってんだし。


 とか、そんなことどうでもいい!


「さっきパタパタしたから、あんまり埃っぽくないな。よかった……」


 そう言いながら、ミコトがゆっくりとベッドの上に横たわる。


「…………」


 どうしよ。


 結局、10分くらい無駄にストレッチとかしてベッドサイドに向かう。ミコトが左側に寝てるから必然的に右側に横になる。


 天井を見ながら頭の後ろで腕を組む。……静かだ。ちらっと横を見る。


 ミコトはこちらに背を向けて寝ていた。


「ミ、ミコト。もう寝た?」

「…………」


 小さな寝息しか聞こえない。もう一度腕組みして天井を見た。


「は~、明日からどうすっかなぁ。まだまだ買わないといけないものもあるし。明日の朝、必要なもんメモするか。て、筆記用具もねぇんだ。色々必要なものが出てくるなぁ……。やっぱり金がある程度貯まるまではクエストをこなしていくか」

「っぷ! 」

「え?」


 ミコトの背中が揺れ始める。


「くくくくくっ……!」

「いや、起きとったんかい!」


 俺は思わずツッコんだ。ミコトがくるんとこっちを向く。


「めっちゃ喋るね。家でもそんなに独り言多いの?」


 今度はミコトが俺にそう訊いた。


「いや、めっちゃ泳がせて聞いとったんかい!」

「明日はおれもポーション作り頑張るからさ、あんま無理はしないでね?」

「う、うん。分かってる」

「おやすみ」

「うん、おやすみ」


 また寝返りを打とうとして、ミコトは動きを止めた。真顔のまま、もにょっと口を動かす。


「……なに」

「あ、いや……。うん」

「ん?」

「いや、何でもない」


 背中を向ける。で、ちょっとしてまた、こっちを向く。


「やっぱ、あのさ」

「うん」

「……信用してないとか、そう言うんじゃないんだけどさ」

「う、うん……?」


 え、なに?


「あ~。う~ん……」

「??」

「ゴメン! やっぱいいわ、感じ悪しな」


 そう言って、またくるんと背中を向ける。


「いやいやいや、言おうよ! もうそこまで言ったら言ってくれ!!」


 俺は思わずミコトの肩を掴んで揺らした。


「めちゃくちゃ気になるから! 寝られねぇから!」

「ええ~っ!? じゃあ、絶対に怒んない?」


 またまたくるんとこちらを向いてミコトが訊いてくる。


「うん。怒んない、怒んない」


 そこまで言っても、ミコトは物凄く躊躇っていた。


 ええ~っ!? ちょ、なんか怖くなってきたんだけど。マジで何??


 困ったように眉を寄せて、ミコトが俺を見つめる。


「本当に怒らないで聞いてよ?」

「うん! マジ、絶対怒んない」

「……失礼な言い方かもしれないし、シンくんのこと信頼してないとか、そう言うことじゃないからね?」

「う、うん」

「あの……、その。寝てる時にどこか触ったりとか、その。変なことするのとか、ナシね……?」


 顔を赤らめて、不安そうな顔でそう言われた。


「……あっ!? な、あ! ……はいっ! うん、しないっ!」


 俺はなぜか正座して真面目に頷いた。


「確かに、そっか。うん、そうだね」

「いや、おれもゴメン。信頼してないとかじゃないけど。その一応、ね」

「うん! 分かってる!」


 ミコトはくるんと背を向けて静かになった。

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