第21話 初めてのレベルアップ

 ギルドに戻り、さっそく5個の魔石を換金所へと持って行く。


 待つことしばらく、受付のおっちゃんに呼ばれた。


「お待たせ。スライム魔石の報酬だよ」

「うお~! 金貨だ……! すげぇ、初めて見る」


 受け皿に乗った二枚の小さな金貨を目にして、俺は魅了された。


 金貨って本当に金ピカなんだな。悪魔の輝きだ……。


 俺の様子がおかしかったのか、受付のおっちゃんが笑った。


「ハハハ。お前さん、金貨見るの初めてなのかい?」

「はい、まあ」

「それは1Gtガト金貨ってんだ。金貨の中じゃ一番小さい硬貨だな。100Gt銀貨五枚分の価値がある」

「へぇ」


 てことは、この金貨二枚で、ちょうど100Gt銀貨十枚分ってことか……。ミコトの報酬と合わせたら、今日は色んな生活物資を買いそろえられそうだな。


 聞けば、金貨はこの上に10Gt金貨と100Gt金貨ってのもあるらしい。


「ただ、提出された魔石は5個だったけど、一個、傷の入ったものがあって、その分は差し引かせてもらってるよ」

「そうだったんですね」

「ああ。質のいい大きめの魔石もあったから、換金額としてはトントンってとこかな」

「了解っす!」


 傷入りの魔石は、多分【魔弾】で傷がついたものだろうな。魔石を目当てにスライム狩るなら、一発で仕留められるようにならねぇとな。


 金貨二枚を手に受付に戻ると、俺は石板の前に立った。


 体感、MPはほとんど使い切ってしまってる気がするけど、どんなかな……。


 水晶に手を触れる。


「おぉ!! レベルアップしてんじゃん!」


 石板を見て、俺は思わず嬉しい悲鳴を上げた。


***


名 前:シン・スサノ

年 齢:16


レベル:2(+1)

H P:165/165(+15)

M P:4/69(+9)

体 力:280/310(+10)

攻撃力:194(+14)

防御力:108(+8)

状態異常耐性:49(+4)


生命力:36(+1)

持久力:57(+2)

筋 力:62(+2)

精神力:41(+1)

魔 力:43(+3)


■スキル

【パワースタブ】剣技スキル。力溜めによる強烈な突き攻撃。威力によって相手を仰け反らせたり後衛に押し出すことができる。


■魔法

【魔弾(無)】魔法スキル。初級攻撃魔法。魔法の粒子である魔粒子を属性変換せずにそのまま撃ち放つ無属性の攻撃魔法。


***


 初めてのレベルアップだ。めっちゃテンション上がったわ!


「この(+15)とかが、上がった数値ってことだよな」


 部活なんかで筋トレやランニングをやっていれば、毎日少しずつ、筋肉量や持久力って成長していくんだろうけれど、なかなかそれを数値として見れることって少ない。


 こうやって日々の成長が見られるって実感が持てるし、励みになっていいな。


 どのステータスも少しずつ成長してるけど、下段の中では魔力の数値が一番伸びてる。これってやっぱ、魔法で魔物を狩ってるから、だろう。


 ミコトのステータスと比べて、異常状態耐性や生命力、精神力が俺はかなり低めだ。ステータスの伸びも低いけど、これってどうやったら上がるんだろうか……?


「にしても、このMPじゃあ、今日はもう無理だな」


 丸一日【魔弾】でスライム狩るなら、やっぱMP回復アイテムが欲しいところだけど、めちゃくちゃ高かったんだよなぁ……。


「ミコトとの待ち合わせまで、まだずいぶん時間あるけど、どうしよ……」


 顔を巡らせると通路の奥に、陽に照らされた中庭が見えた。


 奥の建物は訓練施設になってるって言ってたっけ。ちょっと覗いてみるか……。




「へぇ、すごいな……」


 建物の中は、簡単に言うと体育館みたいになっていた。石畳になっていて土足のまま入れる。そして天井がすごく高い。

 地面から生えた丸太にマットみたいなものを巻いたものが並んでいる。サンドバッグ的なもののようだ。何人かが、そのサンドバッグ相手に練習用の木製の剣や槍、盾で訓練をしていた。


 別のエリアでは、遠くの的に魔法をぶつける練習をしている。火とか風とか、色々な属性の魔法が杖から的に向かって飛び出るけど、どれも的から外れる。


 やっぱエイムって難しいんだな……。


 ダダッ! ガキンッ!!


「?」


 一番奥の方からものすごい音が聞こえてきた。


 ドスン!! ゴガッ!! 


 ズザザーッ!!


「なんだあれ……!?」


 剣と盾を手にした男性と斧を手にした男性の二人組が戦っていた。戦っている相手は、四つ足の獣型のと棍棒を手に持った巨大なゴーレムっぽい人型だ。

 ただ、その二体ともブリキ製? の大きな人形だった。


 人形の後ろに立っていたのはオリヴィアさんだった。見た感じ、オリヴィアさんが魔法で操っているっぽい。と言うことは、あの人形も魔法道具の一種なのだろう。


 横にクリスさんもいて、腕組みしたまま引き締まった表情で戦う二人を見ている。


「どうしたの、二人とも! 防戦一方になってるよ?」


 オリヴィアさんがそう言う。


「個別に戦っていたら、パーティーを組んでいる意味がないぞ!」


 クリスさんも叫ぶ。


 グワ……ッ!


 ゴーレム型の人形が棍棒を振り上げてジャンプする。斧を手にする男性に迫った。


 ドゴッ!!


「くっ!」


 叩きつけを、どうにか躱した。けれどバランスを崩して膝をつく。


「隙を見せるな!」

「!?」


 クリスさんの言葉で顔を上げる。ゴーレムの影から獣型が飛び出してきた。


「!!」


 避けきれない!


 そう思って、冷やりとしたが、もう一人の仲間が盾を構えて、獣型に体当たりを喰らわせた。


「おらっ!」


 ガッ!!


 剣で獣型の頭部を打ちつけると、獣型は横倒しになって石畳をすべっていった。


「いいわ! その調子よ!」

「そうだ! それぞれの短所を補い、長所を活かして攻めるんだ! ピンチはチャンスとなり、その逆も然り。それを忘れるな!」


 オリヴィアさんとクリスさん、二人が檄を飛ばす。


「……」


 想像以上に実戦的な訓練もやってるんだな。思わず見入ってしまった。

 MPが尽きたら、ギルドに戻って訓練を受けるのもいいかもしれない。せっかく剣道をやっていたし、剣技スキルもあるのだから、並行して剣の腕も磨いておいたほうがいいだろう。


 けど、剣って高そうなんだよな……。


 二人に挨拶したい気持ちもあったけど、ちょっと声かけづらい雰囲気だ。必死に戦ってる二人にも悪いしな。


 俺は心の中で挨拶すると、会釈だけしてその場を後にした。一階には、訓練施設のほかに怪我人を治療する施設があるだけだった。

 そのまま建物の二階へと上がっていく。


 どうやら二階にもトレーニングが出来る施設があるらしい。

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