第16話 【魔弾】強化
グリンデル王国の南西端に位置するランディウォル半島──そこの丘陵に広がるランディウォル
その名の通り、岩がごつごつと突き出した丘陵地帯だった。
ダンジョンと言っても、別に洞窟だけってわけじゃないもんな。知ってたけど。
こういった岩場はそもそも小型モンスターの巣になっているらしい。中心部に行くほど敵は強く凶暴になり、そこはまだ俺では危険らしい。(リタさん談)
ダンジョンの外周にはよくスライムが巣を作っているので、そこでスライム狩りをすることを勧められた。
素直に、それに従う。ミコトにも無理しないでって言われたしな。
「おっと、さっそく現れた」
岩根の穴からグニグニと
やっぱ、グロいな……。
俺はペンワンドを取り出して構えた。まずは昨日の復習からだ。
杖の先端に魔粒子の球体を作る。今度はその球体を圧縮した。何回か撃ち放って一匹を仕留める。
「準備運動はこんなもんでいいだろ」
今度はちょっと応用をしてみよう……。
俺は同じように杖の先端に球体を作る。
「球体を圧縮しつつ、銃弾をイメージ……。銃弾をイメージ……」
俺は本物の銃弾をイメージして、球体になった魔粒子を変形させる。
「出来た!」
球体は先端が鋭利に尖った銃弾の形に変形した。
岩に貼り付いているスライムに向かって撃ち放つ。
シュド──ッ!!
パンッ!!
スライムと共に岩の表面が爆ぜた。
「おお! やっぱりこっちの方が威力が高いな!」
確かな手応えを感じて、俺は楽しくなった。
「それじゃあ今度は、動かしてみるか」
同じように銃弾型の【魔弾】を作る。今度はその【魔弾】がその場で回転するのをイメージしてみた。
「動いた……!」
銃から弾が発射される瞬間のスーパースロー映像を見たことがあるが、銃弾は回転しながら発射されていた。
あれってやっぱり、高速回転させることで威力を上げてるんだよな。なら、【魔弾】でも同じことが言えるはずだ。
「けど回転させるって言うか、動きを付与するのって難しいな」
思ったように回転数が上がらない。
「取りあえず、こんなもんで撃ってみるか」
近寄って来ていた一匹に狙いを定めて撃ち放つ。
シュド──ッ!!
ズボッッ!!
外れて、【魔弾】は地面にめり込んだ。
「くっ! 腕への反動もあって結構ブレたな。狙いを定める訓練もいるかもしれん」
あと、期待したほど威力も上がってないっぽい。回転数がもっと上がれば威力は増すはずだけど、ブレて命中率は下がるし、一発撃ち放つのに時間もかかる。現状は使えないかな。練習すれば武器になる手応えはあるけど。
けどやっぱ、魔粒子の操作っておもしれぇ! まだまだ色んな工夫が出来そうだ。
「おーい」
「えっ?」
急に背後から声をかけられて驚いて振り返る。
ダークブラウンの髪と瞳の、髭を生やした男の人が立っていた。その人は剣にスライムを何匹も串刺しにしていて、それを見て、俺はまたびっくりした。
「後ろ、回り込まれてたぜ。気ぃ付けねぇとな」
「えっ!? あ、ありがとう」
「いいって。それよりコレ、貰っていいか?」
男性がそう言って、まるで焼き鳥の串みたいにスライムが刺さった剣を振った。俺よりずいぶん年上の厳ついオッサンだ。
「もちろん。どうぞ」
「新人か? 魔法の練習をしてたみたいだけど?」
「はい」
「そっか。ソロでダンジョンに入るんなら、後ろは常に気を付けろよ? あと、ここで頭上はあんまり心配する必要はないが、木があると木から降って来ることもあるからな」
「ひえ~っ! マジですか!?」
スライムが上から降って来るとか恐怖でしかない。
俺が鳥肌を立てるのを見て、オッサンは愉快そうに笑った。
「ハハハ! じゃあな!」
ポンと俺の肩を叩くと、奥へと進んでいった。
どうやらソロのハンターのようだ。見た目はちょっと怖そうだけど、良い人だったな。
いつの間にかダンジョンの中に入りすぎていた俺は、背後に岩場がない場所まで戻った。
【魔弾】を銃弾型にして狙いをつけて撃つ。まずはこの一連の速度を上げるところから始めることにしよう。
そして背後の敵にも注意が必要だ。隙は命取りだからな。
スライムを狩り、一定数を倒したら狩猟ナイフで解体する。
やっぱり、解体はまだ慣れない。時々「ヴエッ!」ってなりながら裂いていく。
こんな感じで、スライムを狩って魔石を5個手に入れた。
昨日は魔石一個が100Gt銀貨二枚に換金できた。その計算で行くと、100Gt銀貨十枚は手に入れられるはずだ。
この戦利品を手に、俺はギルドへと戻った。
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